愛孫と婚約破棄して性奴隷にするだと?!

克全

文字の大きさ
30 / 48
第一章

第29話:閑話・刺客

しおりを挟む
神暦3103年王国暦255年6月27日9時:某刺客視点

 恐ろしい、あまりにも恐ろしくて逃げ出す事もできなかった。
 エマ王女に気付かれた時点で逃げようとしたのだ。
 だが逃げようとした途端、腰が抜けて動けなくなってしまった!
 
 恐怖のあまり全身がガタガタと震えてしまって全く動けない。
 脚に力が入らずその場に崩れ落ちてしまった。
 最初は何が起こったのか全く分からなかった。
 
 だが永遠にも思える恐怖の時間が過ぎて、ようやく動けるようになって逃げた。
 自分で何時逃げだしたか思い出せないけれど、丸一日経って逃げているのに気がつき色々と思い出した。

 俺達刺客隊十一人は、本当に這いずってその場を逃げ出したのだ。
 恐怖のあまり意味のない言葉を叫びながら逃げ出してしまっていたのだ。
 公王がちらりと此方を見たとたん、恐怖のあまり身体が反応してしまったのだ。

 公王が抑えていた気配をほんの少し俺達に向けただけでパニックになっていた。
 そんな風にまともにモノを考えられるようになったのは、公国領の外に確保していたアジトが見えてからだった。

「おい、どうする、戻って見張りを続けるか?」

「バカヤロウ、思ってもいない事を口にするな!
 俺達が逃げだせたのは見逃してもらえたからだ。 
 いや、歯牙にもかけられずに相手してもらえなかったからだ。
 もう一度近づいたら、今度こそ殺されるぞ!」

「でもよう、このまま逃げ帰ったらただでは済まないぞ」

「はん、自分で公王や王女を殺しに行けない根性なしに何ができる」

「よく言うぜ、その根性なしが怖くて命令通りにここに来たのはお前だろう」

「ああ、確かにあの時は子爵ほど恐ろしい奴はいないと思っていた。
 だが今は考えが全く変わった。
 子爵など公王に比べたら虫けら同然だった。
 お前だってそう思っているんじゃないのか?!」

「子爵よりも公王の方が遥かに恐ろしいと分かったのはお前と同じだ。
 だが、俺達から見れば子爵も公王も同じように怖い相手だ。
 二人に圧倒的な力量差があっても、俺達を簡単に殺せる事に違いはない」

「じゃあ確認するが、お前はもう一度公王に近づけるのか?
 子爵の所に逃げ帰る気にはなっているようだが、もう一度公王の見張りに行く気になれるのか?!」

「……無理だ、とてもではないが、公王に近づく気にはなれない。
 だが、子爵の所に戻って弁明する気になれている……」

「だろう、公王が恐ろし過ぎて、もう一度見張りに行け、隙があったら殺せと命じられても従うのは無理だ。
 だが従わなければ殺されるのは目に見えている。
 だから子爵の所に戻るのではなく、このまま何処かに逃げようぜ!」

「領地には家族もいれば領民もいる。
 領主として民は捨てられないし、当主として家族も捨てられない。
 いや、領民は捨てて逃げられるが、家族だけは捨てられない」

「だったら家族を護って逃げればいいだろう」

「追手が送られてくるだろう!
 子爵の追手を全て返り討ちにして逃げきれるわけがないだろう!」

「では王家に泣きついたらどうだ?
 俺達アルファは天上天下唯我独尊な所があるが、それでも一応王家に仕えているのだから、王家に泣きついて助けてもらえばいい」

「いや、王家に泣きつくくらいなら、公王に泣きつく。
 仕えるなら女王よりも公王の方がいい」

「そりゃ俺だって仕えられるなら王家よりも大公家の方が良い。
 子爵なんて糞野郎に使われるのは嫌だ。
 だが現実的な話し、王家はもう下がり目だ。
 ……公王に仕えるのは恐ろしい……
 正直もう公王の一度前に立てる気がしない」

「それは俺も同じだが、家族を護るためならしかたがないのではないか?」

「……そうだな、家族を護りたいのなら恐ろしくても仕えるべきだ。
 公王を頼らなければ殺されるのだから、死んだ気になってもう一度だけ前に出る。
 この中に裏切る者がいたら、公王に会う前に子爵たちに襲われるだろうが……」

「それはないだろう。
 そんな事が公王にばれたら、間違いなく殺されるぞ。
 外国との戦い時に謀叛を起こした連中の末路は聞いているだろう?
 いや、愚かな奴が混じっていたら、自分だけは助かると思って報告するか?
 まあ、そんな事に成ったら子爵も一味も皆殺しにされるから、間違いなく仇はとってもらえるが……」

「いや、少なくとも今回一緒にいた連中は誰一人裏切らない!
 公王の恐ろしさはあの場にいた者達の骨身に沁み込んでいる。
 だが、このまま直ぐに戻るわけにはいかない。
 公王の所に行くにしても家族を助け行くにしても、先に風呂に入って着替えよう。
 大小便をおもらしした状態で誰かに会う訳にはいかない」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

処理中です...