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第一章

第33話:外患誘致

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神暦3103年王国暦255年7月13日19時:ジャクスティン視点

 俺様の目の前には、きれいに正座するアルファ達がいる。
 俺様の左右には呆れ返った表情のセイント、オリビア、ジェネシス。
 怒りを露にしたミアも一番右側、ジェネシスの外側にいる。

「それで、王家を打倒して新王朝を打ち立てるために外国と手を結んだ?
 事もあろうに王国と領地を接している全ての外国に同盟を打診した?
 子爵が俺様に臣従したと聞いて、侵攻すれば勝てると使者を送っただと?」

 俺様がほんの少しだけ殺気を放って聞くと、外患誘致を企てただけでなく、実際に引き込む使者を送った男爵が大小便を垂れ流しながら答えやがった。

 後で掃除が大変だが、嘘偽りを口にされては困るので、絶対に逆らえないように威嚇しなければいけない。

「……はい、申し訳ございません」

 ガタガタと震えながら謝っても、今更どうしようもない。
 人には許せる事と許せない事がある。
 残虐非道な外国を引き入れて、王国が混乱するのに乗じて新王朝を打ち立てる。

 成功したとしても、アルファ、ベータ、オメガに関係なく多くの国民が死ぬ。
 失敗したら俺様達人間の国が滅んでしまい、生き残った人間も外国人の奴隷にされて子々孫々生き地獄を味わう事になる。

「謝って欲しいわけではない、どういう贖罪をするのかと言いているのだ?」

「それは……」

「やりたいわけではないが、こうなったら仕方がない。
 外国から取り入れた洗脳魔術と奴隷魔術を使う。
 誇り高いはずのアルファに、この魔術を使う事になるとは思ってもいなかった。
 自分達だけでは後始末もできない外患誘致。
 外国を母なる国に引き入れるとは、恥を知れ恥を!」

「「「「「申し訳ございません!」」」」」

「謝ってもらう必要もないし、謝罪を受け入れる気もない。
 お前達はもちろん、お前達の家族にも外患誘致の罪は償ってもらう。
 先ずお前達には洗脳魔術と奴隷魔術を使って絶対に逆らえないようにする。
 その後でこれまで交渉していた国に行って王族を皆殺しにしてもらう。
 成功しようと失敗しようと関係ない。
 お前達が死ぬまで外国の王侯貴族を殺し続けてもらう」

「「「「「……」」」」」

 俺様が殺気を放っているので、誰一人逆らう事ができない。
 まあ、逆らう気になっても叩きのめしてやるだけだ。
 だが絶対に殺しはしない!

 こんな腐った連中を叩き殺しても、俺様の憂さがほんの少し晴れるだけで、何の解決にもならなければ役にも立たない。

「大規模儀式魔術でお前達の心を破壊する」

 これ以上四の五の言うのは俺様の趣味ではない。
 こいつらにはアルファの能力を最大限に使って外国を叩いてもらう。
 外国には、こいつらの言葉に乗って俺様達を殺そうとした罪を償ってもらう。

 ほんの少しだけ可哀想だと思うのは、こいつらの家族だ。
 その中でも何も聞かされていなかった連中だ。
 外患誘致の連座だと、死刑か重犯罪奴隷にされてしまう。

 明らかな見せしめだが、今回ばかりは仕方がない。
 外患誘致だけは、もう二度とやらせるわけにはいかない。

 前回前々回の内乱で思い知った。
 外患誘致を何度も許したら人間が滅びてしまう。
 この不安定な時期に甘い処罰は許されない。

 死刑にするだけだと、見せしめにはなるが国の役には立たない。
 国に与えた莫大な損害とは比べ物にならないが、僅かでも賠償させたい。
 それに死んだ者よりも悲惨な境遇で生き続ける者の方が見せしめになる。

 そういう意味では、ミアが言った兵士として戦線に行かせる案は却下だ。
 簡単に戦死されては見せしめとして弱すぎる。

 万が一にも脱走されたら外患誘致罪から逃げ出した前例が生まれてしまう。
 戦死したら楽になれるのも気に食わない。
 死はある意味救いとなり、悲惨な境遇から逃げる事ができるのだ。

 なにより嫌なのが、俺様が何度も洗脳魔術と奴隷魔術を使わなければいけない事。
 アルファの誇りに反する魔術など、できれば使いたくないのだ!
 誇りを汚すような事はしたくないので、見せしめであろうと連座させる!

「ではさっさと行ってもらおう。
 アルファの能力を全て使ってゲリラ戦に徹してもらう。
 最初の一撃は奇襲で国王かそれに匹敵する者を殺せ。
 次は軍の侵攻を遅らせるために安全かつ確実に敵国に被害を与えろ。
 決して安楽に死のうとするな、いいな!」

「「「「「はい」」」」」

 俺様のアルファ勝者としての支配力。
 洗脳魔術と奴隷魔術を使っての支配力。
 使える限りの能力と技を使って外患誘致を企てたアルファに罪を償わせる。

「セイント、オリビア、こいつらの領地に行って公王直轄領となった事を知らせろ。
 ミアは女王にこれまでの経過を伝えろ。
 時間稼ぎが成功すればいいが、失敗したら明日にでも外国軍が攻め込んで来る。
 王国と公国が一丸となって防がないと、民にとんでもない被害が出る」

「「はい、お任せください」」
「分かった、母上に伝える。
 伝え終わったら戻ればいいのか?
 それとも王国軍を率いて国境に向かえばいいのか?」
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