仇討浪人と座頭梅一

克全

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第三章

第六十五話:剣客盗賊

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 梶清三郎は腹をくくっていた。
 敵が薩摩示現流の使い手だという事は、助太刀してくれた辻番所の番人が、一刀のもとに斬り殺されるのを見て分かっていた。
 逃げてきた方角からの怒声と絶叫で、他にも助太刀が来てくれたことも分かった。
 だが自分が正面で対峙している敵の状況は変わらない。
 命懸けの助太刀も大勢に影響はなかった。

「俺の戦い方を見ておけ」

 最後まで池原雲伯を守って逃げた用心棒は七人だった。
 盗賊団の中でも剣術に優れた者たち。
 万が一町奉行所や火付け盗賊改方の襲撃を受けた時に迎え討つ役割の者たち。
 盗み先で殺傷や強姦も厭わない外道働きの盗賊団とかち合った時に、畜生共を殺す役割の者たちだった。
 彼らを束ねる梶清三郎が、一人薩摩忍軍に向かって行った。

「ちぇすとぉおおおおおお」

 薩摩忍軍の先方が梶清三郎に必殺の一撃を振り下ろす。
 だが梶清三郎は薩摩忍者の刀を受けようとはしない。
 全神経を集中して、薩摩忍者の初太刀を外して抜き打ちに腹を斬り裂く。
 これが示現流に対する最善の受けだった。
 刀で受けても絶対に受けきれない示現流の初太刀は避けるに限るのだ。
 初太刀に全力を傾ける示現流は、初太刀を避けられれば勝てるのだ。

「我らも続け」

 残る六人のうち、最後まで池原雲伯を守る役目以外の者が斬り込んでいった。
 薩摩忍軍の中でも凄腕だった先鋒を斬られた事に、薩摩忍軍が驚き一瞬の隙が生まれていた時に、盗賊団の五人が斬り込んできたのだ。
 上段に構える時間のなかった薩摩忍者は慌てて刀を合わせて乱戦となった。
 何とか上段に構えて初太刀を振り下ろした忍者も、全員初太刀をを避けられ抜き打ちに腹を斬られたり手首を斬り落とされたりした。

 一瞬優勢になった盗賊団の剣客たちだが、多勢に無勢を覆すことはできなかった。
 二人目三人目の薩摩忍者と戦ううちに、徐々に傷を受けるようになっていた。
 豊臣秀吉の九州征伐で領地を大きく削られた薩摩藩だが、家臣をほとんど召し放たなかったので、全領民に占める武家の割合が異常に高い。
 何と六万も家臣の家があり、その分だけ山伏兼務の忍者が多い。
 その分兵農分離が進んでおらず、半農半武の郷士と変わらない藩士が大半だ。

 そんな数を誇る薩摩忍軍だからこそ、江戸近郊にいた者たちだけでも三百はいた。
 薩摩領内が貧しく、山伏に姿を変えて諸国を廻り、少しでも家族に負担をかけたくないという事情もあったのだ。
 そんな薩摩忍者が、数を頼んで剣客盗賊をなます斬りにしようとした。
 十重二十重と取り囲まれ、四方から示現流の初太刀で斬りかかられたら、完全に避けることなど不可能だった。

 一人二人と剣客盗賊が斬り殺された。
 生き残っている剣客盗賊もほぼ全員手傷を負っている。
 その内の二人は明らかに致命傷とわかる傷を負っている。
 最後まで池原雲伯を守っている剣客盗賊も覚悟を決めた。
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