妹に婚約者を寝取られた悪役令嬢の言い分

克全

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30話

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「女王陛下の麗しき御尊顔を拝し奉り、わたくしめ恐悦至極に存じ奉りまする」

 全く感情がこもっていません。
 私を敬う気が全くない事が、誰にでもわかる口調です。
 ここまで来ればもう自分のモノだと思っているようです。
 傍若無人、悪逆非道と言われるのもうなずける態度です。

 黒髪と紫黒瞳に濁った白い肌。
 モンザ王家の特徴だと聞いています。
 二メートルの身長も、長身な者が多いという噂通りです。
 ですが、筋肉で盛り上がった姿は異様です。
 どちらかといえば、陰謀を企むのが得意な一族だったはずです。

「遠慮しなくていいですよ。
 顔をあげなさい。
 ですが迂闊な行動はとらないように。
 あなたの魂胆は分かっています。
 そのような行動をとれば、モンザ王国との戦いになります。
 モンザ王国が私を害そうと企んだと判断しますからね」

「くっくっくっくっ!
 モンザ王国など関係ないわ!
 俺はお前をモノにして、この国の実権を手に入れる。
 そしてモンザ王国を攻め取り、大王となるのだ。
 お前はそのための踏み台になるのよ!」

 並外れた剛力、戦闘力が自慢なのでしょう。
 調べた話では、身体強化に特化した魔術を使うようです。
 モンザ王国では無敵だったそうです。
 その力を恐れて、国王も王太子も、最強の魔道具と騎士団の護りから出なかったと、報告を受けています。

 ですがそれは、あくまでモンザ王国内での話です。
 我が国で同じことが通じると思ってもらっては困ります。
 私の横には、剛勇無双、忠勇無比のエヴァがいてくれます。
 何の心配もありません。
 ですが、エヴァに無用な危険を冒させる気などありません。

「無礼者!
 その行い、モンザ王国の宣戦布告と受け取った!」

 素手で私に掴みかかろうとしたアルドスに、フェルドナンドが立ちはだかります。
 魔術で姿形を変え、ファンケン公爵家時代から仕える近衛騎士の一人に変装し、正体がバレないようにしています。
 近衛騎士すべてが、突出した実力だと知らしめるための計画的な行動です。

 幻覚魔術で身長一七〇センチ程度の細身に偽装しているフェルドナンドが、大兵のアルドスとガッチリと指を絡ませ、力勝負をしています。
 だれもがフェルドナンドが簡単に潰されると思う所を、逆にフェルドナンドがアルドスを圧迫し、両膝をつかせたのです。

 まあ、手品の種は簡単な話です。
 普通の王族程度の魔力しかないアルドスに、並の皇族を超える、皇帝、いえ、神の使徒に匹敵する魔力を持つフェルドナンドに勝てるはずがないのです。
 ですがフェルドナンドが目立っては困ります。

「王子ともあろう者が、一近衛騎士に取り押さえられるのは恥でしょう。
 エヴァ。
 変わってやりなさい」

「はい、マイロードケーニギン」

 表向きは、エヴァに活躍してもらわないといけません。
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