聖賢者は悪女に誑かされた婚約者の王太子に婚約を破棄され追放されました。

第一章

第1話：建国物語

　この国は神と初代王にの契りによって建国された国だった。
　男神と初代王が相思相愛になられ、どうしても二人の間に子供が欲しくなり、大規模な儀式魔法の神殿を創り上げ、愛する男同士がその神殿で愛し合えば、授乳の必要ない大きさにまで育った子供が授かる。
　そんなこの世界でただ一つの神殿を基礎に建国された国、アルフレオ王国だ。

　だが神の中には、男同士の愛を自然の摂理に反すると嫌う者も多く、自分が守護する国や信者には同性愛を禁じていた。
　当然だが、神が禁じれば人は同性愛者を迫害する。
　迫害を受けた同性愛者の中で、男同士のカップルはアルフレオ王国に逃げてくる。
　特に子供を求める男同士のカップルが神殿の奇跡を求めて集まった。
　神と初代王の間に生まれた子供達は、半神の力を持っていたので、迫害される男同士のカップルを守り戦った。

　神に愛された初代王が存命中は、アルフレオ王国は神の守護が受けられていた。
　半身の子孫が近親婚を繰り返し、神の力を色濃く引き継いでいる間もよかった。
　だが、長い歳月と共に、神の力と教えを失っていった。
　男同士の間から生まれた子供の中には、どうしても女を求める者がいた。
　それは異性婚を禁じられている初代王の子孫、王家も同じだった。

　異性愛を求める王族が素直に王家を去り国を出て行っている間はよかった。
　だが王族の中に、王の権力と女の両方を手に入れたいと望む者が現れた。
　その王は男の王配ではなく、他国のように女を妻として王妃の地位を与えた。
　その瞬間から、建国神殿は力を失い、男同士の夫婦に子供が授からなくなった。
　国民は激怒し、王家打倒の謀叛が勃発した。

　その時は男を愛する国民が勝って、国王と王妃は惨殺された。
　だが、国王と王妃を殺しても、建国神殿の奇跡は蘇らなかった。
　戦いの間に多くの王族が亡くなったが、国民は隠れ潜む王族を必死で探し出し、脅迫と哀訴の両方を使って、建国神殿に連れてきた。
　試行錯誤を繰り返す事八年、ようやく神の奇跡が復活した。

　神と初代王の血を継ぐ王族が、本当に愛する男と神殿で愛を交わせば、神の奇跡が復活する事を見つけた。
　だが、それが永遠に続くものなのか、それとも国王が代替わりするたびに行わなければいけないものなのか、誰にも分からなかった。
　男同士の夫婦には、それを確かめるためにもう一度王を殺す度胸はなかった。
　失った奇跡が、今度もう一度取り返せる確証などなかった。
　だが何もしない事も不安だったから、最強の民代表を建国神殿に置いて、国王を見張らせることにしたのだが、それが聖賢者と呼ばれる剣と魔術の使い手だった。