スライム従魔司というスキルが神与されたので、王太女との婚約は破棄され、実家からは追放され、刺客を放たれた。

克全

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第5章

第104話:不承不承・クラリス王太女視点

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 リドワーン様は物凄く不服そうな表情をされています。
 そのような表情を私に見せられたのは初めてです。
 とても新鮮な気分になることができました。

 正直してやったりという気分です。
 全てはサクラとフェリシティの献策のお陰です。

 私はずっと幸せと不服をもって生きてきました。
 王女に生まれた事は幸せではありましたが不服でもありました。

 政略結婚しなければいけない事は不服でしたが、相手がリドワーン様なのは幸せな事でした。
 私が主君でリドワーン様が家臣なのは不服でした。

 でも私が主君であったからこそ、リドワーン様と婚約できたのは分かっています。
 そうでなければリドワーン様はもっと素敵な女性と結婚していたはずです。

 だから仕方ない事だと分かっています。
 それでも、いえ、だからこそリドワーン様が敬語を使われるのは不服でした。

 お願いしてやっと普通の夫婦のように対等に話してくれるようになりました。
 でもそれだけではまだ満足できなかったのです
 どうしても男性に命令されることに憧れてしまうのです。

 なのに、リドワーン様は常に私を立てようとされたのです。
 だから今が好機ではないのかとサクラとフェリシティに相談したのです。

「サクラ、フェリシティ、お前達が余計な事を言ったのか」

いけません、サクラとフェリシティが怒られてしまいます。

「あえて諫言させていただきます、リドワーン様」

 驚きました、サクラがリドワーン様に諫言しようとしています。
 あの何事もリドワーン様中心のサクラが諫言するとは思いませんでした。

 ですが、よく考えれば、私の相談に乗ってくれたのもおかしな話でした。
 あのサクラがリドワーン様が望まないような策を教えてくれたのです。
 これは何か重大な事が隠されているのかもしれません。

「なにかとても大切な話のようだな、何事だサクラ」

 リドワーン様も直ぐに悟られたようですね。

「はい、とても重大な事です、リドワーン様。
 私がとても不安に思ったことがあるのです。
 それはリドワーン様が心配されておられた教団の隠し玉です。
 教団が持っている秘密の武器の中に、怨念を増幅させた物があった場合の事です。
 教団が直接リドワーン様を狙えば、彼らが落胆するだけで済みます。
 ですが教団がカチュア王太女殿下を狙った場合、助けられない可能性があります。
 カチュア王太女殿下とお腹の中のお子様に何かあった場合、リドワーン様の落胆がいかほどばかりかと考えれば、こうするしかありませんでした。
 一時的にリドワーン様の意に従わぬことになろうとも、リドワーン様の心を壊してしまうようなことになるよりはいいと考えました」

「……ふぅうううう、そう言われてしまうと、もう何も言えないな。
 確かに怨念を元にした法具があったりしたら大変だ。
 分かった、俺が王を名乗ることにするよ」

 よかった、サクラもフェリシティも怒られないで済みました。
 でもやっぱりサクラはリドワーン様が一番大切なのですね。
 私はサクラに利用されただけなのかもしれませんね。

 でもそれでもいいです。
 リドワーン様が不承不承で戴冠されるのではなく、納得して戴冠されるのです。
 それにこれでリドワーン様が私の王配になるのではなく、私がリドワーン様に嫁ぐことができるのですから。
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