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第4章

第80話:勇躍・カチュア王太女視点

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 私はリドワーン様と別れて急ぎ国境線に戻りました。
 先に国境線でこの国の国王と会談してまだわずか3日です。

 サクラが全速で戻ってくれれば、仰々しく移動する国王一行が相手なら、直ぐに追いつけると分かっていました。

 サクラが分離してくれたレベル2ロードスライムですが、サクラと全く同じ存在で、キングスライムの時と同じようにサクラと呼んでほしいと言われました。

 レベル2ロードスライムですから、キングスライムよりは小さいですが、とても大きな存在です。

 しかも私達の先鋒には、キングゴブリンを筆頭としたゴブリン軍団が布陣していて、とても人間の戦える相手ではないのです。

 少なくとも私が知っているこの国の戦力では、ロードゴブリン1頭にも勝てないでしょう。

「何をする、先の王国同士の盟約を踏み躙るというのか」

 この国にも勇敢な騎士がいるようで、ゴブリン軍団に立ち向かってきます。
 その勇気に免じて、誇りを傷つけるような事は止めてあげます。

「いえ、そんな事はしませんよ、勇敢なる騎士殿。
 先の盟約では決めていなかった事で、とても大切な事があると分かったので、その件を話し合うために急ぎ戻ったのです」

「おのれ、このような威圧した状況で、公平な交渉などできるモノか」

 勇敢な騎士の言葉は真実を表しています。
 私がリドワーン様とは別にロードスライムを操っている事。

 しかもゴブリン軍団まで意のままに操っている事は、この国の王と重臣達の心を打ち砕きました。

 本来なら絶対に認める事のできない、領地の割譲ともいえる街道の所有権譲渡を、あっさりと認めました。

 最初は街道に宿と休憩所を設置運営する権利と守備兵力の駐屯権、それに非常時に軍用路として利用する権利を認めさせるだけの心算だったのです。

 それが、向こうから街道の割譲を申し出てきたのです。
 これでは、この国は我が国の属国も同然です。
 何故ならこの国はカチュア・リドワーン街道で分離されたも同然だからです。

「カチュア、あまりこの国を追い詰めてはいけないよ。
 街道譲渡に見合うだけの金銀財宝を与えて、王家王国も誇りに配慮するんだ。
 そっちのサクラには、この国の街道づくりの時に手に入れた金銀財宝と、魔獣の素材や治療薬をもたせている。
 それを街道譲渡の代価として王家王国に渡してあげて欲しい。
 それを王家から領地を奪われる貴族士族に分け与えさせるようにするんだ。
 そうすれば王家王国の国内貴族に対する統制力が揺るぐことはないだろう」

 次の国に街道づくりを要求する時に、無駄な争いが起こらないように、リドワーン様はこの国に配慮されるのですね。

 王家王国は私達を恐れて何もしなくても、末端の貴族や士族、愛国者が我が国を襲ってきたら、余計な戦争が始まってしまいます。

 それに、リドワーン様が以前のように名前を呼んでくださいます。
 話し方も砕けた調子に戻りました。
 この状態を維持するためにも、あまり独断で事を起こしてはいけません
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