4 / 11
3話
しおりを挟む
「顔を隠すためのマスクか包帯を用意して」
「……はい」
なんとか平常心を取り戻したイザベラが、急いで探してくれます。
「聖女様。
包帯はありますがマスクはありません」
「では包帯で顔を包んでください。
奇跡の力で治そうとしましたが、失敗したという事にしてください。
それと、そうですね。
大司祭には聖なる力を失ったから教会を去ると伝えてちょうだい」
「聖女様!」
イザベラは驚いていますが、いい機会です。
ずっと協会から出ていきたいと思っていたのです。
聖なる力を失ったと言えば、逃げ出せるかもしれません。
いえ、それは期待薄ですね。
さっきの馬鹿司祭の言動に怒って、嘘をついてで出て行ったと考えるでしょう。
教会からの追っ手は来るでしょうね。
でも、この子を助けたいのなら、教会に残るわけにはいきません。
この子が教会に捨てられたという事実は、いずれこの子の実家に知られてしまう事でしょう。
そうなれば必ずこの子を殺そうと刺客を放ってきます。
私はこの子を護る決意でいますが、教会の中から裏切者が現れ、私の邪魔をしようとするでしょう。
この子の実家から命じられた者と、私が教会のコントロールから外れるのを嫌う者が、私の行動を邪魔するでしょう。
この子の顔を潰そうとするほど名誉にこだわる家ですから、ある程度の地位と権力を持っていると考えておくべきです。
「イザベラ、何をグズグズしているのですか!
ダブリン公爵家のジェイコブ殿が来るまでに出ていきますよ。
今ジェイコブ殿の顔を見たら、手加減できずに殺してしまうかもしれません。
それでもいいのですか?!」
「はい!
直ぐに大司祭に報告してまいります」
「頼みましたよ。
私はこのまま出ていきますからね!」
「あの、聖女様。
少し時間をおいて報告した方がよいのではないでしょうか?」
「その辺のさじ加減はイザベラに任せます」
イザベラも勘違いしてくれたようですね。
私がジェイコブに会うのが嫌で教会を出ていくのだと思ってくれました。
大司祭も今の言葉で同じように勘違いしてくれるかもしれません。
これで少し時間が稼げる可能性があります。
私が本気で怒りださないように、しばらくは自由にさせてくれるでしょう。
それにしても、大司祭は何を考えているのでしょう?
私は王太子の婚約者に選ばれています。
それをジェイコブに売るような真似をすれば、大司祭といえども処刑されるのは眼に見えています。
私が黙っていると思っているのでしょうか?
ジェイコブと、いえ、ダブリン公爵と手を組んで、王家転覆でも画策しているのでしょうか?
私にジェイコブの種を孕ませて、密かに王位を盗もうとしているのでしょうか?
まさか、王太子が私を嫌っていて、貫通罪で処刑しようとしているのでしょうか?
「……はい」
なんとか平常心を取り戻したイザベラが、急いで探してくれます。
「聖女様。
包帯はありますがマスクはありません」
「では包帯で顔を包んでください。
奇跡の力で治そうとしましたが、失敗したという事にしてください。
それと、そうですね。
大司祭には聖なる力を失ったから教会を去ると伝えてちょうだい」
「聖女様!」
イザベラは驚いていますが、いい機会です。
ずっと協会から出ていきたいと思っていたのです。
聖なる力を失ったと言えば、逃げ出せるかもしれません。
いえ、それは期待薄ですね。
さっきの馬鹿司祭の言動に怒って、嘘をついてで出て行ったと考えるでしょう。
教会からの追っ手は来るでしょうね。
でも、この子を助けたいのなら、教会に残るわけにはいきません。
この子が教会に捨てられたという事実は、いずれこの子の実家に知られてしまう事でしょう。
そうなれば必ずこの子を殺そうと刺客を放ってきます。
私はこの子を護る決意でいますが、教会の中から裏切者が現れ、私の邪魔をしようとするでしょう。
この子の実家から命じられた者と、私が教会のコントロールから外れるのを嫌う者が、私の行動を邪魔するでしょう。
この子の顔を潰そうとするほど名誉にこだわる家ですから、ある程度の地位と権力を持っていると考えておくべきです。
「イザベラ、何をグズグズしているのですか!
ダブリン公爵家のジェイコブ殿が来るまでに出ていきますよ。
今ジェイコブ殿の顔を見たら、手加減できずに殺してしまうかもしれません。
それでもいいのですか?!」
「はい!
直ぐに大司祭に報告してまいります」
「頼みましたよ。
私はこのまま出ていきますからね!」
「あの、聖女様。
少し時間をおいて報告した方がよいのではないでしょうか?」
「その辺のさじ加減はイザベラに任せます」
イザベラも勘違いしてくれたようですね。
私がジェイコブに会うのが嫌で教会を出ていくのだと思ってくれました。
大司祭も今の言葉で同じように勘違いしてくれるかもしれません。
これで少し時間が稼げる可能性があります。
私が本気で怒りださないように、しばらくは自由にさせてくれるでしょう。
それにしても、大司祭は何を考えているのでしょう?
私は王太子の婚約者に選ばれています。
それをジェイコブに売るような真似をすれば、大司祭といえども処刑されるのは眼に見えています。
私が黙っていると思っているのでしょうか?
ジェイコブと、いえ、ダブリン公爵と手を組んで、王家転覆でも画策しているのでしょうか?
私にジェイコブの種を孕ませて、密かに王位を盗もうとしているのでしょうか?
まさか、王太子が私を嫌っていて、貫通罪で処刑しようとしているのでしょうか?
0
あなたにおすすめの小説
辺境伯の溺愛が重すぎます~追放された薬師見習いは、領主様に囲われています~
深山きらら
恋愛
王都の薬師ギルドで見習いとして働いていたアディは、先輩の陰謀により濡れ衣を着せられ追放される。絶望の中、辺境の森で魔獣に襲われた彼女を救ったのは、「氷の辺境伯」と呼ばれるルーファスだった。彼女の才能を見抜いたルーファスは、アディを専属薬師として雇用する。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
お前を愛することはないと言われたので、姑をハニトラに引っ掛けて婚家を内側から崩壊させます
碧井 汐桜香
ファンタジー
「お前を愛することはない」
そんな夫と
「そうよ! あなたなんか息子にふさわしくない!」
そんな義母のいる伯爵家に嫁いだケリナ。
嫁を大切にしない?ならば、内部から崩壊させて見せましょう
メイド令嬢は毎日磨いていた石像(救国の英雄)に求婚されていますが、粗大ゴミの回収は明日です
有沢楓花
恋愛
エセル・エヴァット男爵令嬢は、二つの意味で名が知られている。
ひとつめは、金遣いの荒い実家から追い出された可哀想な令嬢として。ふたつめは、何でも綺麗にしてしまう凄腕メイドとして。
高給を求めるエセルの次の職場は、郊外にある老伯爵の汚屋敷。
モノに溢れる家の終活を手伝って欲しいとの依頼だが――彼の偉大な魔法使いのご先祖様が残した、屋敷のガラクタは一筋縄ではいかないものばかり。
高価な絵画は勝手に話し出し、鎧はくすぐったがって身よじるし……ご先祖様の石像は、エセルに求婚までしてくるのだ。
「毎日磨いてくれてありがとう。結婚してほしい」
「石像と結婚できません。それに伯爵は、あなたを魔法資源局の粗大ゴミに申し込み済みです」
そんな時、エセルを後妻に貰いにきた、という男たちが現れて連れ去ろうとし……。
――かつての救国の英雄は、埃まみれでひとりぼっちなのでした。
この作品は他サイトにも掲載しています。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる