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「おい!
あそこの客が食べているモノと同じモノをくれ」
「あ、揚げ鯉の餡かけですね。
量が多い気もしますが、お客さんは恰幅がいいから食べきれますよね。
ただ、あれはチョッとお時間がかかるんですよ。
お客さんは随分とお腹が減っておられるようなので、
前菜の盛り合わせとワインで時間を潰されますか?」
巨体男には娘が何を言っているかよくわからなかった。
材料が鯉なのは分かったが、料理法が全く分からない。
あのようなネバネバした、潰したスライムに野菜を入れたようなソースなど見たことがなかったが、宮廷料理でも食べたことがなかったので魅かれてもいたのだ。
だから直ぐに食べてみたかった。
だが、娘の提案が妥当なモノだというのも分かった。
大食漢といわれたのには、チョッとカチンときたが、悪意は感じられなかった。
悪口や差別ではなく、身体が大きいから沢山食べれるよねと言われたのだ。
それに娘が作る前菜にも興味があった。
食欲が旺盛な巨体男は、美味しいモノのためならお金を惜しまない男だった。
「分かった。
俺は沢山食べるからな。
前菜も沢山食わしてくれ。
これを渡しておくから、後で精算してくれ」
「はい、分かりました。
では冷めても美味しい前菜をだしますね。
追加で食べたい前菜があれば言ってください」
巨体男は躊躇せずに小金貨を投げてよこした。
下町では考えられない大金だった。
日々の細々とした買い物は小銅貨、チョッとしたモノでも大銅貨ですむ。
小銀貨を使う事すら滅多にないのが下町の買い物だ。
それが大銀貨どころか小金貨を先払いするのだから、庶民なら腰を抜かしてもおかしくないところを、娘は平気で受け取り笑顔を返してくるのだ。
「はい。
こちらは春菊のお浸しを胡麻油で和えたモノです。
お好みで香草塩をかけてください。
こちらは河蟹の外子の塩漬けになります。
こちらは鴨の燻製になります。
こちらは河海老のお造りになります。
こちらは若鮎の燻製になります。
こちらは出汁巻き卵でございます。
こちらは四種のチーズになります。
最後に鴨のつみれスープになります」
巨体男は前菜の多さに圧倒されていた。
どう考えても下町の料理屋でだされる種類と量ではない。
しかも見た目の色彩が鮮やかで、食べる前から美味いのが分かる。
さっと出されたワインも下町にしては上等なモノだ。
いくら小金貨を前払いしたからといっても、急に出せる料理ではなかった。
巨体男は恐る恐る食べなれたチーズから試そうとした。
だが、それを許さない、強烈に上手そうな香りが鼻腔から脳を直撃した。
唯一のスープ、鴨のつみれスープが湯気をあげて食べられるのを待っていた。
無意識にスープに入った碗を手に取っていた。
あそこの客が食べているモノと同じモノをくれ」
「あ、揚げ鯉の餡かけですね。
量が多い気もしますが、お客さんは恰幅がいいから食べきれますよね。
ただ、あれはチョッとお時間がかかるんですよ。
お客さんは随分とお腹が減っておられるようなので、
前菜の盛り合わせとワインで時間を潰されますか?」
巨体男には娘が何を言っているかよくわからなかった。
材料が鯉なのは分かったが、料理法が全く分からない。
あのようなネバネバした、潰したスライムに野菜を入れたようなソースなど見たことがなかったが、宮廷料理でも食べたことがなかったので魅かれてもいたのだ。
だから直ぐに食べてみたかった。
だが、娘の提案が妥当なモノだというのも分かった。
大食漢といわれたのには、チョッとカチンときたが、悪意は感じられなかった。
悪口や差別ではなく、身体が大きいから沢山食べれるよねと言われたのだ。
それに娘が作る前菜にも興味があった。
食欲が旺盛な巨体男は、美味しいモノのためならお金を惜しまない男だった。
「分かった。
俺は沢山食べるからな。
前菜も沢山食わしてくれ。
これを渡しておくから、後で精算してくれ」
「はい、分かりました。
では冷めても美味しい前菜をだしますね。
追加で食べたい前菜があれば言ってください」
巨体男は躊躇せずに小金貨を投げてよこした。
下町では考えられない大金だった。
日々の細々とした買い物は小銅貨、チョッとしたモノでも大銅貨ですむ。
小銀貨を使う事すら滅多にないのが下町の買い物だ。
それが大銀貨どころか小金貨を先払いするのだから、庶民なら腰を抜かしてもおかしくないところを、娘は平気で受け取り笑顔を返してくるのだ。
「はい。
こちらは春菊のお浸しを胡麻油で和えたモノです。
お好みで香草塩をかけてください。
こちらは河蟹の外子の塩漬けになります。
こちらは鴨の燻製になります。
こちらは河海老のお造りになります。
こちらは若鮎の燻製になります。
こちらは出汁巻き卵でございます。
こちらは四種のチーズになります。
最後に鴨のつみれスープになります」
巨体男は前菜の多さに圧倒されていた。
どう考えても下町の料理屋でだされる種類と量ではない。
しかも見た目の色彩が鮮やかで、食べる前から美味いのが分かる。
さっと出されたワインも下町にしては上等なモノだ。
いくら小金貨を前払いしたからといっても、急に出せる料理ではなかった。
巨体男は恐る恐る食べなれたチーズから試そうとした。
だが、それを許さない、強烈に上手そうな香りが鼻腔から脳を直撃した。
唯一のスープ、鴨のつみれスープが湯気をあげて食べられるのを待っていた。
無意識にスープに入った碗を手に取っていた。
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