王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?

克全

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23話

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「閣下。
 薬草の素材を集めてまいりました。
 確認してください」

「ありがとう、なかなかいい状態よ。
 次からも頼むわね」

 私が薬の調合を行っている間に、オリビア母さんが家族を引き連れて、薬の素材になる薬草などを集めてくれました。
 オリビア母さんは、ずっと私の薬作りを手伝ってくれていたので、素材の扱い方がとても丁寧です。
 
 薬の素材となる薬草などは、採集する時間が違うだけで、薬になった時の薬効が全く違ってくるのです。
 そもそも季節によっても違いますし、大きさによっても違います。
 旬という言葉がありますが、薬にするのに最もいい時があるのです。
 色や大きさや香りといった、旬を見分ける力が、薬作りには必要なのです。

 根をつけたまま採集した方がいいのか悪いのか。
 旬を過ぎた花弁や萼を一緒に採集した方がいいのか悪いのか。
 全く別の薬の素材として使えるのか使えないのか。
 そのような知識がなければ、薬の採集を任せることなどできません。
 まして翌年の採集を考えて今年の採集量を決めるなんて、素人には不可能です。

 ですがオリビア母さんには全て任せることができます。
 生れてからずっと側にいてくれたのです。
 聖なる力に目覚めた時も、その力に頼ることなく薬学で人々を救いたいと考え、毎日勉強していた時も、側で励ますだけでなく、積極的に手伝ってくれたのです。

 薬草を集めた後の実際の薬作りも、オリビア母さんが手伝ってくれます。
 水で洗った方がいいのか、ぜったに水を使わず、丁寧に払うように砂や泥を落とした方がいいのか。
 水で煮出すのか酒で煮出すのか。
 酒を使うにしても、赤ワインがいいのか白ワインがいいのか。
 煮出すのではなく火酒で漬けて染み出させるようにするのか。

 煮出すにしても、薬草を単独で煮出して、煮出した薬水を混ぜ合わせるのか。
 それとも、煮出す時に同時に薬草を入れた方がいいのか。
 同じ水や酒で煮出すにしても、薬草の順番をどうするのか。
 煮出す火力は強火中火弱火のどれがいいのか。
 煮出す時間はどれくらいの長さにするのか。
 煮出した時に出る灰汁は取った方がいいのか悪いのか。
 そんな細かい配慮を一つ一つ重ねて、私は薬を作るのです。

 結果私が作る薬は、並の薬の五倍の効果を持つことになりました。
 手間も時間も多大ですが、それに見合う効果を得ることができます。
 家を出てから試行錯誤して得られた、この大陸の誰にも負けない技術です。
 本当は広く公開すべき技術なのですが、迂闊に伝えると戦争に繋がってしまいますから、伝える相手は厳選しなければいけません。
 今知っているのはオリビア母さんとオウエンだけです。
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