王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?

克全

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28話

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「ヒッヒヒヒヒーン」
「メッエエエエエ」

 屋敷の敷地に多くの動物が集まっています。
 私とオウエンが同行して、直接確認した動物達です。
 毛を刈るにしても、乳を搾るにしても、肉にするにしても、購入代金分の価値があると思った動物達です。
 今は屋敷の者達が担当を決めて世話をしています。

 年老いた牝馬に関しては、オウエンが世話をしています。
 動物好きのオウエンが、自分を戦士、いえ、家令として選んでくれた牝馬です。
 もう子供を生むのは難しいと判断され、肉にされるようとしていました。
 ですがオウエンは妊娠出産死を前提に、自分の愛馬と種付けさせるようです。
 死んでしまったら、その時に肉と皮をとれば、購入金額の元は取れるという、冷酷非情な判断です。

 普段の優しいオウエンとは違う、戦争中の騎士や戦士の、家を維持しなければいけない家令の判断です。
 他の山羊や羊も同じ判断基準で購入しました。
 死を覚悟で妊娠させて、少しでも購入資金の回収を図ります。
 そうしなければいけないほど、我が家の資金繰りは厳しいのです。
 まあ、またこの国を逃げる事も考えているからですが。

 ただ、それなりの数の動物が、屋敷の庭に放し飼い状態ですのですので、庭園の美観を維持するのが難しいです。
 庭の草花を食べてしまいます。
 それを防ぐためには、動物達が美味しいと思える餌を、大量に集めてこなければいけません。

 自前の領地がないので、王家が王都の民に開放している森、特に民が入るのを躊躇う魔の住む森で集めなければいけません。
 そうでなければ、王都の民から我が家が非難されることになります。
 民が入れない危険な森なら、入って大量に餌を集めても、非難されることは少なくなくなります。

 ただ全くなくなりはしません。
 とにかく何でも非難したい人はいます。
 特に何も考えず、全ての出来事に不平不満を言うのです。
 不平不満を言う事で、自分達が被害を受けることになっても、その事はその時にまた非難するのです。
 その時に被害を受けた人を扇動して、自分達がその被害を生みだしたことは隠蔽して、新たな被害者を生みだし、利益を得ようとするのです。

「閣下、今日の入札メンバーが集まりました。
 昨日より人数が増えております」

「それでも今日もアーレンが落札するのかしら?」

「分かりません。
 冒険者の間でかなり評判が高まっているようです。
 それと、アーレン独自の販売網があるのでしょう。
 市場に残る薬が減れば減るほど、市場価格は高くなります」

「本当に上手く値を釣り上げましたね。
 これでは庶民が手に入れることができなくなります」

「ですが閣下。
 これまで高値だった並の薬が値崩れしております。
 その分庶民が薬を手に入れやすくなっています」

 オウエンの言いたいことは、頭では分かっているのですが、心がモヤモヤしてしまいます。
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