王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?

克全

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52話

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「ノドン男爵閣下、ミルド男爵閣下。
 どうか今までの非礼をお許しください!
 今まで蓄えた財貨は全て献上させていただきます。
 秘密にしていた鉱山の場所を報告させていただきます。
 その代わりと申してはなんですが、今まで通り荒地に置いてください!
 自由戦士ギルドにおとりなしください!」

 困りました。
 兄上がアーレンを厳しく脅かした翌日に、地下用水路技術者の一族と鉱山技術者の一族が、そろって謝りに来ました。
 兄上に使者を送ったら、私達だけで対処しろとの返事でした。
 私達にちゃんとした対処ができるかどうか……

「俺達に、散々身勝手な要求を、いや、脅迫してきたお前達を許せと言うのか?
 今お前達が言っている事を信じろと言うのか?
 無理だな!
 下種で卑怯で恩知らずなお前達を、殺さずに追放にするだけでも温情なのだ。
 これ以上要求をするのなら、自由戦士達に皆殺しを依頼する。
 とっとと帰れ!」

 今回の交渉はオウエンに任せることになりました。
 私は悪阻がありますし、胎教も考えなければいけません。
 
「ミルド男爵閣下!
 お見せしたいものがございます。
 我らの覚悟でございます。
 ただ、ノドン男爵閣下にお見せできるようなモノではありませんので、どうかミルド男爵閣下と護衛の方々だけであらためてください」

「分かりました。
 何かよほどのことを行ったのですね。
 私は席を外しますから、それはミルド男爵に見せていただきましょう。
 それ以外の条件は、私も確認します。
 いいですね?」

「はい、ミルド男爵閣下。
 まずは今まで蓄えた金銀財宝でございます。
 お改めください」

 やはり多くの採掘物を隠蔽していましたか。
 そうだとは思っていたのです。
 品位が低い物や小粒の物だけ我が家に納め、品位の高い物や大粒な物は、自分達とアーレンで分けていたのですね。
 
「分かった。
 この数と金額を見れば、今まで払うべき税金の五分しか納めていなかったのだな?
 この事は大陸中に知らせるからな。
 覚悟しておくことだ」

「いえ、そうではありません。
 これには、今まで我らが血と涙と汗を流して蓄えた金銀財宝も含まれております。
 誤魔化していた税金は六割でございます。
 それもアーレンに言われてしかたなくしていた事でございます」

「黙れ!
 自由戦士ギルドからは会計官も派遣されるのだ。
 居残りたいのなら、それを理解して口にしているのだろうな?
 これ以上の嘘は、俺がこの手でお前を殺すぞ!」

「申し訳ありません。
 今まで一割の税金しか納めていませんでした。
 ですが、アーレンに命じられたのは本当でございます。
 これは事実でございます。
 どうか、どうか、どうかそれだけはご理解ください」

「まだ嘘を言っていたのですね。
 私ここで席を外します。
 後は好きにしなさい」
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