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12話

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「なんて事なの!
 こんな所に魔族がいるなんて信じられないわ。
 でも現実を認めなければいけないわ。
 なんとしてもたどり着いて、魔族を開放しなければいけないわ」

 私は、希望を胸に抱いて魔族を探し回りました。
 広大な未開地の隅々まで探すつもりでした。
 魔族のアスキス家と出会えたことで、私の胸に勇気と希望が灯ったのです。
 アスキス家が洞窟前を開拓開墾するのに必要な魔力以外、放っておいても雲散霧消してしまう魔力を、魔族捜索のための探査魔術に費やしました。

 百日かかりました。
 魔力が限られているのもありますし、見落としがないように、詳細丁寧に探査したという理由もありましたが、魔族を見つけるのに百日かかりました。
 でも見つけることができました。
 心の奥底に、アスキス家が最後の生き残りかもしれないという想いもあったのですが、それは杞憂に終わりました。

 ですが問題もありました。
 見つけた魔族は、未開地で代を重ねた魔族ではなかったのです。
 遥か昔。
 今ではどれくらい前だか分からない古代魔力時代に、魔力冬眠した魔族です。
 とてもではありませんが、普通に会いに行ける相手ではありません。

 温厚で心優しい魔族が襲ってくることはないでしょうが、人族は違います。
 己の欲望を満たすためなら、どのような卑怯な手でも使うのが人族です。
 その人族の襲撃を撃退する仕掛けを用意している事でしょう。
 それは多分魔力を使ったものではありません。
 魔力を失ってから、機械仕掛けの罠を開発したはずです。
 その機械仕掛けの罠を突破するのは大変な事です。

「リリー、ついてきてくれますか?」

「はい、どこにでもついていかせていただきます」

 私は新たに発見した魔族を目覚めさせるために、リリーに同行してもらいました。
 相手は何千何万年眠り続けたか分からない魔族です。
 自分の目覚める条件は厳格に規定している事でしょう。
 相手が私のような人間では、絶対に目覚めてくれないはずです。
 でも同じ魔族のリリーなら、目覚めの規定を満たすかもしれません。

 それしても、凄まじい魔力量です。
 何千何万年もの間、身体をおとろえさせることなく、生命を維持する魔道具を、稼働させ続ける魔力量です。
 魔族の王族に匹敵する魔力量でしょう。
 もしかしたら、古代竜や古竜の魔晶石を複数使っているのかもしれません。
 欲しいですね、古代竜や古竜の魔晶石。
 今の魔力を失った世界では、莫大な魔力を蓄えられる魔晶石の有用性は、魔力の溢れていた時代とは比較にならないほど重大です。

「さあ、行きますよ。
 覚悟はいいですか、リリー」

「はい、大丈夫です!」
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