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第一章
第1話:記憶快復
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「フェ、フェ、フェ、フェックション、ガッターン」
情けない事ながら、椅子に座ってウツラウツラしている時にとんでもなく大きなくしゃみをしてしまい、椅子から落ちて頭を強打してしまった。
俺の覚えている乙女ゲームでは、この時に俺が死んでしまった事で、可愛い娘のグレイスは後ろ盾を失う設定だった。
女公爵となった妻のマリラが愛人の言いなりとなってしまい、グレイスは孤立無援となり、婚約者の皇太子ドズルの裏切りを契機に暴走してしまった。
「閣下、大丈夫でございますか」
「ああ、大丈夫だ、それよりも、マリラの所に愛人が来ているのか」
「はい、今宵も来ています。
閣下も愛人をお呼びになられますか」
「いや、構わん、ただ手を打っておいて欲しい」
「何なりとご命じくださいませ」
これが夢なら楽しまないのは損だし、本当に憑依や転生をしているのなら、空想だけで楽しんでいた事を実行する好機だ。
前世で推しキャラだったグレイスを護る。
どんな悪逆非道な手段をとろうとも愛しいグレイスを護る。
さて、細かい設定はなかったが、中世の公爵家ならかなりの領主軍もいれば忍者のような組織もあるはずだ。
「エリック、ブロッケル男爵家を徹底的に調べてくれ」
「承りました、必要ならば禍根を断つことも可能でございますが」
エリックの眼つきがこわいな。
この世界に生まれてからの記憶から分かるのは、エリックが家司と呼ばれる筆頭家臣で心から信頼できる男だという事だ。
俺、キンブルがノルマン公爵家を無難に治めて栄耀栄華を極めていられるのも、全てエリックの才覚と忠誠心のお陰だ。
ならば、本心を打ち明ければいい。
「今こそ我が本心を打ち明ける。
私が一番大切にしているのは娘のグレイスだ、それを絶対に忘れるな。
私の命は二番目でいい、分かったか」
「承りました」
「そのためならば、ノルマン公爵家の身内が血を流すことになろうとも、家名に傷がつくことになろうと構わん」
「それは、奥方様が愛人と心中するという不名誉でもでしょうか」
エリックは腹が座っているな。
それとも、そこまでしなければいけないほど、ブロッケル男爵は妻のマリラを掌中に収めているということだろうか。
まあ、例えそうだとしても、エリックが現状を把握してくれていて殺す準備も整えてくれているのなら、何の問題もないな。
「必要ならば断じて行ってくれ、構わん。
エリックならば失敗はないだろうが、王家には絶対に知られないようにしてくれ」
「承知しております。
ただ、一つだけどうしてもお伺いしたい事がございます、宜しいでしょうか」
なんだ、ちょっと怖いな。
「構わん、何が聞きたい」
「閣下は人が変わられたようでございますが、何かございましたか」
うっわ、あぶね、魂が入れ替わったと知られたら、殺されるかな。
「それはな、このままではグレイスと私がブロッケル男爵とマリラに陥れられ、皇太子によって殺されるという御告げがあったからだ。
私の事を笑うか、エリック」
「いえ、閣下に神の御加護が下されましたのなら、何よりの事でございます。
それに、死を前にして人変わりされたのなら理解できます。
謹んで主命をお受けさせていただきます」
「では、もう一つ、絶対に果たしてもらわなければならない命を下す」
情けない事ながら、椅子に座ってウツラウツラしている時にとんでもなく大きなくしゃみをしてしまい、椅子から落ちて頭を強打してしまった。
俺の覚えている乙女ゲームでは、この時に俺が死んでしまった事で、可愛い娘のグレイスは後ろ盾を失う設定だった。
女公爵となった妻のマリラが愛人の言いなりとなってしまい、グレイスは孤立無援となり、婚約者の皇太子ドズルの裏切りを契機に暴走してしまった。
「閣下、大丈夫でございますか」
「ああ、大丈夫だ、それよりも、マリラの所に愛人が来ているのか」
「はい、今宵も来ています。
閣下も愛人をお呼びになられますか」
「いや、構わん、ただ手を打っておいて欲しい」
「何なりとご命じくださいませ」
これが夢なら楽しまないのは損だし、本当に憑依や転生をしているのなら、空想だけで楽しんでいた事を実行する好機だ。
前世で推しキャラだったグレイスを護る。
どんな悪逆非道な手段をとろうとも愛しいグレイスを護る。
さて、細かい設定はなかったが、中世の公爵家ならかなりの領主軍もいれば忍者のような組織もあるはずだ。
「エリック、ブロッケル男爵家を徹底的に調べてくれ」
「承りました、必要ならば禍根を断つことも可能でございますが」
エリックの眼つきがこわいな。
この世界に生まれてからの記憶から分かるのは、エリックが家司と呼ばれる筆頭家臣で心から信頼できる男だという事だ。
俺、キンブルがノルマン公爵家を無難に治めて栄耀栄華を極めていられるのも、全てエリックの才覚と忠誠心のお陰だ。
ならば、本心を打ち明ければいい。
「今こそ我が本心を打ち明ける。
私が一番大切にしているのは娘のグレイスだ、それを絶対に忘れるな。
私の命は二番目でいい、分かったか」
「承りました」
「そのためならば、ノルマン公爵家の身内が血を流すことになろうとも、家名に傷がつくことになろうと構わん」
「それは、奥方様が愛人と心中するという不名誉でもでしょうか」
エリックは腹が座っているな。
それとも、そこまでしなければいけないほど、ブロッケル男爵は妻のマリラを掌中に収めているということだろうか。
まあ、例えそうだとしても、エリックが現状を把握してくれていて殺す準備も整えてくれているのなら、何の問題もないな。
「必要ならば断じて行ってくれ、構わん。
エリックならば失敗はないだろうが、王家には絶対に知られないようにしてくれ」
「承知しております。
ただ、一つだけどうしてもお伺いしたい事がございます、宜しいでしょうか」
なんだ、ちょっと怖いな。
「構わん、何が聞きたい」
「閣下は人が変わられたようでございますが、何かございましたか」
うっわ、あぶね、魂が入れ替わったと知られたら、殺されるかな。
「それはな、このままではグレイスと私がブロッケル男爵とマリラに陥れられ、皇太子によって殺されるという御告げがあったからだ。
私の事を笑うか、エリック」
「いえ、閣下に神の御加護が下されましたのなら、何よりの事でございます。
それに、死を前にして人変わりされたのなら理解できます。
謹んで主命をお受けさせていただきます」
「では、もう一つ、絶対に果たしてもらわなければならない命を下す」
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