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6話

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 南方の開拓は私が想定していた以上に順調でした。
 全て父上の御陰です。
 父上が家臣領民を動員してくれたので、初期費用が全くいりませんでした。
 でも父上も一切費用負担していません。
 家臣領民を軍役として動員しただけです。

 家臣領民も負担があるだけはありません。
 彼らにとっても十分利益がある事でした。
 彼らにも行き場のない部屋住みと呼ばれる子弟がいるのです。
 子弟に一生食事だけを与えて奴隷のように働かせるか、一人前に育てるかです。

 少しでも家族愛があれば、費用を使って基礎教育を施し、冒険者なり職人なりに育てなければいけません。
 余分な領地があれば、比較的安全な農民にさせられますが、耕作地にできる領地は限られているのです。

 だから大身家臣は、子弟のために費用を全額に負担する形で、私が得た南方領地の一角を開墾し、私の家臣、身分的には陪陪臣になるのですが、士族の地位を確保しようとしました。

 豪農と呼ばれる豊かな農民も、子弟を私の直轄領の自作農にすべく、費用を負担して開墾をしました。
 冒険者も自費で広大な森を開墾し、徒士や騎士の領地に相応しい農地を得ました。
 父上が軍役で動員してくれた家臣や領民が開墾してくれた土地は、私の直轄領なので、小作農を募集できれば自作農の年貢に加えて小作料も徴収できます。

 南方未開地に入ったアマル公爵軍は、最初に販売したり家を建てたりする材木を伐採確保しました。
 本当に広大な面積の未開地を、食糧にする獣を狩りながら、材木の伐採中心に開拓しました。
 当面の開墾予定地を伐採し終わってから、残りの雑木に火を放って燃やしました。
 面積当たりの収穫量は、丁寧に耕作した畑には及びませんが、焼き畑農業である程度の収穫を得る事ができました。

 父上の狙いが達成されました。
 父上の統治が成功して比較的豊かなアマル公爵領でも、領都には貧民街が広がり、治安が悪化していました。
 王都ほどではありませんが、犯罪が増加していたのです。

 そんな貧民や貧農の子弟を、私が得た直轄領の小作農に送り込んだのです。
 父上も助かりますし、私も助かりました。
 焼き畑後の一度目の収穫が終わった畑に、手つかずの未開地から集めてきた雑木を燃やした灰をまいて肥料にし、二度目の耕作をする予定です。
 狩り草や雑木の灰で肥料が確保できる間に、人糞を発酵させて肥料を確保します。
 未開地に住む野生の山羊や羊、水牛や馬をとらえて家畜にします。
 家畜の糞も肥料に活用します。
 直轄領を拠点にして冒険者や猟師が狩りをします。
 南方未開地に入って一年、王都の事も王太子の事も忘れ去っていました。
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