前世聖女な公爵令嬢は王太子から婚約破棄されたい。

克全

文字の大きさ
8 / 11

7話

しおりを挟む
「御嬢様。
 身辺をお気をつけください」

 父上が付けてくれた家老であるリッカルドがいきなり変な事を言います。
 父上は私の事を大切にするだけでなく、家臣の事も大切にされます。
 私が新たに得た領地が一刻も早く開拓に成功するように、若くて優秀な家臣リッカルドをつけてくれました。

 リッカルドは微禄の家に生まれたのですが、努力を重ねて農政も武芸の軍略も学び、郡代であろうと家老であろうと務まるまでになりました。
 ですが名門アマル公爵家では序列があります。
 いくら優秀でも、何の失敗もしていない譜代家臣を押し退けて、微禄出身のリッカルドを要職につける訳にはいかないのです。

 父上も内心困っておられました。
 ですがここで予想外に私が広大な新領地を手に入れました。
 普通なら家臣でも名門の言えるような家の者を要職につけなけえればなりません。
 ですがそれでは微禄だが優秀な者を抜擢する事ができないです。

 そこで父上が考えられたのは、豊かな家臣に土地を与えて開拓させ、領地持ち家臣とする事です。
 一方リッカルドたち微禄優秀者には私の直轄領から給与を与え、内臣として大きな権限を与えました。
 家の格で言えば、領地持ちの方が給与を支給される家臣よりは上になります。
 役職と権限で言えば、狩ろうが一番上です。
 そう言うバランスをとらないといけないのが、長い歴史を誇る名門貴族家の宿命なのです。

「何事ですか、リッカルド?」

「領内に不審な者が入り込んでおります。
 王太子殿下との一件を思いだしました。
 いえ、嘘でございます。
 御嬢様と王太子殿下の一件以来、家中の者に調べてもらっていました。
 王太子殿下は御嬢様を狙っておられます。
 それだけではなく、この領地も狙っておられます」

 リッカルドの話はとても腹立たしいとても内容でした。
 父上に力添えを頂き、私の家臣領民も精一杯の努力をして、豊かにした領地です。
 民が汗水たらして作った農作物を年貢として取り立てた中から、開拓用にと分け与えられたモノを、遊興費に使うような王太子に渡す訳にはいきません。

「リッカルド、この領地は開拓に汗水たらしてくれた者たちのものです。
 王太子殿下に渡せば法外な年貢を課す事でしょう。
 それでは開拓直後で余力のない民は逃げだすしかありません。
 それに、開拓に私財を投じてくれた家臣領民が大損します。
 そのような事にはさせたくありません。
 何か手段はありませんか?」

「お任せください、御嬢様。
 しかしそれではマリアの野望が潰えてしまいます。
 それでも宜しいでしょうか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

処理中です...