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大納言対外政策
工藤平助
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「大納言様、これに控えますのが、先日御話させていただいた、工藤平助球卿でございます」
「大納言様の麗しき御尊顔を拝し奉り、恐悦至極に存じ奉りまする」
「よく来てくれた、平助。ところで平助、源内から聞いている話では、松前藩が幕府に対して重大な偽りを申しておるというだが、それは一体どう言う事なのだ」
「恐れながら申し上げます」
「苦しゅうない。気を楽にして思う事を申してみよ」
「は、有難き幸せでございます。多くの江戸詰め松前藩士から話を聞いたところによると、松前藩には何度もオロシャの使者が来ているという事でございます。しかもその事を、幕府に報告していないという事でございます」
「なに。それはどう言う事じゃ。オロシャの使者が本当に松前藩を訪れているかどうかは別にして、何故松前藩はその事を幕府に秘密にしているのじゃ」
「オロシャは武力を持って、日本を脅そうとしております」
「う~む。それは由々しき問題だが、何故それを松前藩が隠しておるのだ」
「藩政に幕府が介入する事を恐れておるのでございます」
「異国より武力を持って脅かされておるのなら、助けを求めこそすれ、隠すことなどないのではないか」
「恐れながら大納言様、松前藩は日本の領地を失う事よりも、商人から受け取る運上金に重きを置いているのでございます」
「なんたることじゃ。それが本当なら由々しき問題である」
「大納言様、オロシャと松前藩に関しましては、江戸蘭学社中で何度も何度も話し合い、間違いない事と結論致しております」
「なんじゃと。玄白も良沢も、オロシャの野望と松前藩の陰謀は間違いないと申しているのか」
「はい」
「だとすれば、一刻も早く手を打たねばならぬ」
「はい」
「主殿頭はこの事を知っておるのか」
「それは分かりません。我々も最初に大納言様の御耳に入れるか、御老中の御耳に入れるか迷いましたが、先ずは大納言様に御話すべきと考えた次第でございます」
「うむ。それは殊勝である」
「御恐れながら申し上げさせていただきます」
「なんじゃ改まって」
「御老中の事でございます」
「ふむ」
「大納言様は、御老中の事をどう考えておられますか」
「以前は嫌っておったが、今ではそれほどでもない」
「御政道に関する考えは、どう思っておられるのですか」
「未だに納得できぬことは多いが、上様や余の事を大切に思ってくれていることは理解しておる」
「御老中は異国との取引を増やし、幕府の利を増やそうと考えておられます」
「その事も理解しておる。亡き八代様が、そのようにして得た利を使い、色々な殖産を起こされたことも今では理解しておるが、商人を利用し過ぎているとも思っておる」
「では大納言様は、東照神君が異国との情報と利益を独占する為に、異国との交易を四つ口に限られたことも、存じられておられるのですね」
「うむ。その事は主殿頭から聞いておる」
「大納言様の御考えが、オロシャを討ち払う事であろうと、御老中は交易を優先されるかもしれません」
「う~む」
「江戸蘭学社中も、幕府の勝手向きを調べさせていただき、異国との交易と殖産が急務であると結論致しました」
「それは余にオロシャとの交易を進めろと言っておるのか」
「いいえ、そうではございません。例え考え方が違おうとも、仲たがいだけはなされませんように、御願い申し上げます」
「それは分かっておる。心配いたすな」
「大納言様の麗しき御尊顔を拝し奉り、恐悦至極に存じ奉りまする」
「よく来てくれた、平助。ところで平助、源内から聞いている話では、松前藩が幕府に対して重大な偽りを申しておるというだが、それは一体どう言う事なのだ」
「恐れながら申し上げます」
「苦しゅうない。気を楽にして思う事を申してみよ」
「は、有難き幸せでございます。多くの江戸詰め松前藩士から話を聞いたところによると、松前藩には何度もオロシャの使者が来ているという事でございます。しかもその事を、幕府に報告していないという事でございます」
「なに。それはどう言う事じゃ。オロシャの使者が本当に松前藩を訪れているかどうかは別にして、何故松前藩はその事を幕府に秘密にしているのじゃ」
「オロシャは武力を持って、日本を脅そうとしております」
「う~む。それは由々しき問題だが、何故それを松前藩が隠しておるのだ」
「藩政に幕府が介入する事を恐れておるのでございます」
「異国より武力を持って脅かされておるのなら、助けを求めこそすれ、隠すことなどないのではないか」
「恐れながら大納言様、松前藩は日本の領地を失う事よりも、商人から受け取る運上金に重きを置いているのでございます」
「なんたることじゃ。それが本当なら由々しき問題である」
「大納言様、オロシャと松前藩に関しましては、江戸蘭学社中で何度も何度も話し合い、間違いない事と結論致しております」
「なんじゃと。玄白も良沢も、オロシャの野望と松前藩の陰謀は間違いないと申しているのか」
「はい」
「だとすれば、一刻も早く手を打たねばならぬ」
「はい」
「主殿頭はこの事を知っておるのか」
「それは分かりません。我々も最初に大納言様の御耳に入れるか、御老中の御耳に入れるか迷いましたが、先ずは大納言様に御話すべきと考えた次第でございます」
「うむ。それは殊勝である」
「御恐れながら申し上げさせていただきます」
「なんじゃ改まって」
「御老中の事でございます」
「ふむ」
「大納言様は、御老中の事をどう考えておられますか」
「以前は嫌っておったが、今ではそれほどでもない」
「御政道に関する考えは、どう思っておられるのですか」
「未だに納得できぬことは多いが、上様や余の事を大切に思ってくれていることは理解しておる」
「御老中は異国との取引を増やし、幕府の利を増やそうと考えておられます」
「その事も理解しておる。亡き八代様が、そのようにして得た利を使い、色々な殖産を起こされたことも今では理解しておるが、商人を利用し過ぎているとも思っておる」
「では大納言様は、東照神君が異国との情報と利益を独占する為に、異国との交易を四つ口に限られたことも、存じられておられるのですね」
「うむ。その事は主殿頭から聞いておる」
「大納言様の御考えが、オロシャを討ち払う事であろうと、御老中は交易を優先されるかもしれません」
「う~む」
「江戸蘭学社中も、幕府の勝手向きを調べさせていただき、異国との交易と殖産が急務であると結論致しました」
「それは余にオロシャとの交易を進めろと言っておるのか」
「いいえ、そうではございません。例え考え方が違おうとも、仲たがいだけはなされませんように、御願い申し上げます」
「それは分かっておる。心配いたすな」
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