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第一章
第3話:約定解消
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王太子リカルドは、婚約者アセリカの事を心から心配していた。
本当なら騎士団の先頭を切って馬を駆けさせたかった。
だが、総大将が危険な先頭を行くわけにはいかない事を理解していた。
同時に、何時戦闘になってもいいように、軍馬を疲れさせない速度で駆けさせなければいけない事も、十分理解していた。
頭で理解している大切な事と、心が大切に思う事がせめぎ合い、リカルドを傷つけ苦しめていた。
「リカルド王太子殿下、今度の敵は恐ろしく強大です。
殿下も大きな傷を受け苦しまれる事でしょうが、どうぞ挫けず頑張ってください。
騎士団の者達は、常に民を助けようとされる殿下の事を心から敬愛しております」
リカルドはベッカー宮中伯バーツ騎士団長の言う事が不思議だった。
まだ必ず魔王軍が侵攻してきているとは限らないのだ。
いや、アセリカ嬢と勇者ロイドが王都に戻ってこない時点で、魔王軍の再侵攻は間違いないから、魔王軍との激戦を心配してくれているのだろうとリカルドは考えた。
最初から大きな戦傷を受けると断言されるのは、未熟と言われているようで腹立たしい気持ちはしたが、リカルドが兵站で王都を離れられないので、王太子指揮団を率いて最前線で戦い続けてくれたバーツ騎士団長が心配するほど、魔王軍は強いのだと考え、怒る事は不当だと自分を諫めた。
「心配してくれてありがとう、バーツ騎士団長。
できるだけケガをしないように、慎重に戦うよ。
万が一私がケガをしてしまったら、騎士団を後方に下げなければいけないからね。
だから今から言っておくよ、私が負傷しても騎士団は下げないでくれ。
護衛はバーツ騎士団長と近衛騎士隊だけでいい」
「承りました」
バーツ騎士団長は、胸が張り裂けそうな哀しみと怒りで叫びだしそうだった。
だが、まだ今は我慢しなければいけないと、必死で全ての想いを飲み込んだ。
王国の二個騎士団が、完全戦闘態勢で、急ぐことなく、奇襲に気を付けながら、七日の日数をかけて、フィエン公爵領の領都にまでたどり着いた。
「かいもおおおん、開門だ、王太子殿下が二個騎士団を率いて援軍に来られたぞ」
王太子率いる援軍の先触れが、馬を駆けさせて到着を知らせようとした。
だが、城門は固く閉じられ、一向に開けられる気配がなかった。
普通ならば領主一族が総出で出迎えるのが礼儀だ。
それなのに、誰一人出迎えないばかりか、返事すらしないのだ。
「これはどういう事だ、フィエン公爵!
いつまでも卑怯下劣な言動を繰り返す心算だ!
いいかげん自分達の不忠不義を認めたらどうだ、尻軽の売女一族が!」
先触れの騎士は、はらわたの煮えくり返る思いを抑えきれずに、怒りの言葉を城内に叩きつけた。
「先触れの騎士殿に物申す。
我が一族に尻軽の売女などはおらん。
神に選ばれた勇者と聖女が結ばれるのは当然の事
それを古い約束に縛られて無理無体に引き裂く方が神意に反する。
王太子殿下に伝えられよ、フィエン公爵家はフィフス王家との約定を解消する」
本当なら騎士団の先頭を切って馬を駆けさせたかった。
だが、総大将が危険な先頭を行くわけにはいかない事を理解していた。
同時に、何時戦闘になってもいいように、軍馬を疲れさせない速度で駆けさせなければいけない事も、十分理解していた。
頭で理解している大切な事と、心が大切に思う事がせめぎ合い、リカルドを傷つけ苦しめていた。
「リカルド王太子殿下、今度の敵は恐ろしく強大です。
殿下も大きな傷を受け苦しまれる事でしょうが、どうぞ挫けず頑張ってください。
騎士団の者達は、常に民を助けようとされる殿下の事を心から敬愛しております」
リカルドはベッカー宮中伯バーツ騎士団長の言う事が不思議だった。
まだ必ず魔王軍が侵攻してきているとは限らないのだ。
いや、アセリカ嬢と勇者ロイドが王都に戻ってこない時点で、魔王軍の再侵攻は間違いないから、魔王軍との激戦を心配してくれているのだろうとリカルドは考えた。
最初から大きな戦傷を受けると断言されるのは、未熟と言われているようで腹立たしい気持ちはしたが、リカルドが兵站で王都を離れられないので、王太子指揮団を率いて最前線で戦い続けてくれたバーツ騎士団長が心配するほど、魔王軍は強いのだと考え、怒る事は不当だと自分を諫めた。
「心配してくれてありがとう、バーツ騎士団長。
できるだけケガをしないように、慎重に戦うよ。
万が一私がケガをしてしまったら、騎士団を後方に下げなければいけないからね。
だから今から言っておくよ、私が負傷しても騎士団は下げないでくれ。
護衛はバーツ騎士団長と近衛騎士隊だけでいい」
「承りました」
バーツ騎士団長は、胸が張り裂けそうな哀しみと怒りで叫びだしそうだった。
だが、まだ今は我慢しなければいけないと、必死で全ての想いを飲み込んだ。
王国の二個騎士団が、完全戦闘態勢で、急ぐことなく、奇襲に気を付けながら、七日の日数をかけて、フィエン公爵領の領都にまでたどり着いた。
「かいもおおおん、開門だ、王太子殿下が二個騎士団を率いて援軍に来られたぞ」
王太子率いる援軍の先触れが、馬を駆けさせて到着を知らせようとした。
だが、城門は固く閉じられ、一向に開けられる気配がなかった。
普通ならば領主一族が総出で出迎えるのが礼儀だ。
それなのに、誰一人出迎えないばかりか、返事すらしないのだ。
「これはどういう事だ、フィエン公爵!
いつまでも卑怯下劣な言動を繰り返す心算だ!
いいかげん自分達の不忠不義を認めたらどうだ、尻軽の売女一族が!」
先触れの騎士は、はらわたの煮えくり返る思いを抑えきれずに、怒りの言葉を城内に叩きつけた。
「先触れの騎士殿に物申す。
我が一族に尻軽の売女などはおらん。
神に選ばれた勇者と聖女が結ばれるのは当然の事
それを古い約束に縛られて無理無体に引き裂く方が神意に反する。
王太子殿下に伝えられよ、フィエン公爵家はフィフス王家との約定を解消する」
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