4 / 127
第一章
第4話:裏切り
しおりを挟む
王太子リカルドは、胸が張り裂けそうな想いで城門前に騎馬を進めていた。
氷の手で心臓を鷲掴みされているような、鋭い痛みを常時感じていた。
激しく打ち鳴らされるドクドクという鼓動が、自分の耳をうつ。
嫌な脂汗が全身を流れているのに、身体中が冷えてしかたがなかった。
馬から落ちそうなほど、全身の景色がグルグルと回っている。
そんな王太子リカルドの左側を、無表情のベッカー宮中伯が馬を進める。
右側には王太子近衛騎士隊の隊長が同じように馬を進めている。
「我が婚約者アセリカ嬢に問う、私との婚約を解消するというのは本当か?
救国勇者ロイドに問う、アセリカ嬢と結婚するというのは本当か?
二人に問う、アセリカ嬢がロイドの子供を宿しているのは本当か?
更に二人に問う、何故私を裏切ったのだ、何時から裏切っていたのだ!?」
王太子リカルドの魂の叫びだった。
心から信じていた二人に裏切られるとは、予想もしていなかった。
その衝撃はあまりにも大きかったが、まだ心からは信じていなかった。
どうしても先触れの騎士の言葉を信じられなかった。
直接アセリカ嬢とロイドから話を聞くまでは、信じられなかった。
いや、信じたくなかったというのが本当だろう。
永劫とも思える時間が過ぎて、城門上の楼閣に二人が現れた。
「そうだ、全て本当の事だ、臆病者の王太子よ。
聖女アセリカは、一度も前線に出ない臆病者の王太子にはもったいない。
聖女アセリカに相応しいのは、救国の勇者、このロイド様だけだ。
ノコノコと恥をかきにここまで来たか、愚か者が!」
最初から青かったリカルドの顔が、更に青くなった。
きつく握りしめられた拳からは、爪が喰い込んで血が流れている。
左右のベッカー宮中伯と近衛騎士隊隊長は、怒りのあまりギリギリと音がするほど奥歯を噛み締めていたが、殿下が動かられないあいだはと、我慢を重ねていた。
だが、殿下が命じるのなら、死を賭して戦う覚悟だった。
相手が救国勇者であろうと、八つ裂きにしてやる心算だった。
「これは運命なのでございます、リカルド王太子殿下。
救国の勇者様と聖女の私が結ばれることで、この世界は救われるのです。
私達は分かち難いほど愛し合っているのです。
その証拠に、私は神が祝福された子供を授かったのです。
私はリカルド殿下の事を愛した事など一度もありません。
政略による婚約をしただけです、どうかもう私の事はお忘れください」
勇者ロイドの裏切りと罵りには何とか耐えたリカルドだったが、アセリカ嬢の裏切りと決別宣言には耐えられなかった。
過去に何か過ちがあったのだとしても、許そう、許せると思っていたリカルドだったが、今まで一度も愛していなかったと言い切られ、気力が尽きた。
リカルドは馬上で失神してしまった。
氷の手で心臓を鷲掴みされているような、鋭い痛みを常時感じていた。
激しく打ち鳴らされるドクドクという鼓動が、自分の耳をうつ。
嫌な脂汗が全身を流れているのに、身体中が冷えてしかたがなかった。
馬から落ちそうなほど、全身の景色がグルグルと回っている。
そんな王太子リカルドの左側を、無表情のベッカー宮中伯が馬を進める。
右側には王太子近衛騎士隊の隊長が同じように馬を進めている。
「我が婚約者アセリカ嬢に問う、私との婚約を解消するというのは本当か?
救国勇者ロイドに問う、アセリカ嬢と結婚するというのは本当か?
二人に問う、アセリカ嬢がロイドの子供を宿しているのは本当か?
更に二人に問う、何故私を裏切ったのだ、何時から裏切っていたのだ!?」
王太子リカルドの魂の叫びだった。
心から信じていた二人に裏切られるとは、予想もしていなかった。
その衝撃はあまりにも大きかったが、まだ心からは信じていなかった。
どうしても先触れの騎士の言葉を信じられなかった。
直接アセリカ嬢とロイドから話を聞くまでは、信じられなかった。
いや、信じたくなかったというのが本当だろう。
永劫とも思える時間が過ぎて、城門上の楼閣に二人が現れた。
「そうだ、全て本当の事だ、臆病者の王太子よ。
聖女アセリカは、一度も前線に出ない臆病者の王太子にはもったいない。
聖女アセリカに相応しいのは、救国の勇者、このロイド様だけだ。
ノコノコと恥をかきにここまで来たか、愚か者が!」
最初から青かったリカルドの顔が、更に青くなった。
きつく握りしめられた拳からは、爪が喰い込んで血が流れている。
左右のベッカー宮中伯と近衛騎士隊隊長は、怒りのあまりギリギリと音がするほど奥歯を噛み締めていたが、殿下が動かられないあいだはと、我慢を重ねていた。
だが、殿下が命じるのなら、死を賭して戦う覚悟だった。
相手が救国勇者であろうと、八つ裂きにしてやる心算だった。
「これは運命なのでございます、リカルド王太子殿下。
救国の勇者様と聖女の私が結ばれることで、この世界は救われるのです。
私達は分かち難いほど愛し合っているのです。
その証拠に、私は神が祝福された子供を授かったのです。
私はリカルド殿下の事を愛した事など一度もありません。
政略による婚約をしただけです、どうかもう私の事はお忘れください」
勇者ロイドの裏切りと罵りには何とか耐えたリカルドだったが、アセリカ嬢の裏切りと決別宣言には耐えられなかった。
過去に何か過ちがあったのだとしても、許そう、許せると思っていたリカルドだったが、今まで一度も愛していなかったと言い切られ、気力が尽きた。
リカルドは馬上で失神してしまった。
6
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる