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第二章
第78話:溢れる母性
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リカルド王太子は一旦ダドリー城の最奥の間に転移した。
そこには愛するローザとコンラッドが待ってくれていた。
リカルド王太子は万感の思いを込めてローザとコンラッド抱きしめ口づけした。
リカルド王太子は自分の強さならまず負ける事はないとは思ってはいたが、想定外の強敵に出会う可能性もあると不安も感じていたのだ。
そもそも北魔境からの侵攻が、魔王軍が仕掛けた罠という可能性もあった。
その想いがローザとコンラッドを抱きしめる時間を長くした。
だがいつまでも愚図愚図しているわけにはいかない。
一分一秒の遅れが、民を死傷させてしまう非常事態なのだ。
そしてリカルド王太子が少しでも早く大陸の最前線に戻ることが、将兵の死傷数に直結しているのだ。
「魔王軍など手も触れずに全滅させてやるから、安心してくれ。
だが魔王軍が北魔境から更なる侵攻軍を送り込んでくる可能性もある。
危ないと思ったら直ぐにカウリー城に転移してくれ」
「分かっております、逃げ時を誤まったりは致しません。
それに、殿下の御心に負担をかけるような事も絶対に致しません」
「ありがとう、ローザ、君のお陰で正気を保っていられるよ」
リカルド王太子は、ローザが自分のために名誉を捨ててくれたのを理解していた。
その事を素直に口にして感謝の気持ちを伝えた。
前世の習慣では、つい大事な事も以心伝心で伝わると思ってしまいがちだった。
だがこの世界では、本当に大切な事を間違いなく伝えるためには、どれほど恥ずかしくても口にしなければいけない。
今生のリカルドならそれ程恥ずかしく感じられない事でも、前世の知識と記憶に引きずられるので、真っ赤になってしまう事がある。
だがそれが上手く相手の母性本能をくすぐることもある。
歴戦の傭兵であるライラとローザには、桁外れな強さと全く比例しない、初心ともいえるリカルドの態度が、たまらなく愛しく思えるのだ。
ローザはコンラッドを抱いているにもかかわらず、この場でリカルド王太子を押し倒してしまいそうになったが、流石に自制した。
思わずリカルド王太子を抱きしめかえしそうにもなったが、コンラッドを抱いているのでそれもままならず、貪るように口づけを返す事しかできなかった。
ローザの目にも万感の思いが込められたが、リカルド王太子にはそれに応える時間がなかった。
絶対に忘れないと決意したような目で、リカルド王太子はローザとコンラッドを見つめたが、直ぐに精神力を総動員して眼を瞑り、振り切るようにして最奥の間から出て行った。
ローザは城門まで見送りたかったが、そんな事をすればリカルド王太子を不安にさせてしまう事を理解していたので、奥から表に続く扉までしか見送らなかった。
だが奥の堅固な扉までは足早に移動するリカルド王太子に付き従った。
「御武運を信じております」
思わずローザの口から出た言葉が全てだった。
神でも運でもなく、リカルド王太子を信じるだけだった。
そこには愛するローザとコンラッドが待ってくれていた。
リカルド王太子は万感の思いを込めてローザとコンラッド抱きしめ口づけした。
リカルド王太子は自分の強さならまず負ける事はないとは思ってはいたが、想定外の強敵に出会う可能性もあると不安も感じていたのだ。
そもそも北魔境からの侵攻が、魔王軍が仕掛けた罠という可能性もあった。
その想いがローザとコンラッドを抱きしめる時間を長くした。
だがいつまでも愚図愚図しているわけにはいかない。
一分一秒の遅れが、民を死傷させてしまう非常事態なのだ。
そしてリカルド王太子が少しでも早く大陸の最前線に戻ることが、将兵の死傷数に直結しているのだ。
「魔王軍など手も触れずに全滅させてやるから、安心してくれ。
だが魔王軍が北魔境から更なる侵攻軍を送り込んでくる可能性もある。
危ないと思ったら直ぐにカウリー城に転移してくれ」
「分かっております、逃げ時を誤まったりは致しません。
それに、殿下の御心に負担をかけるような事も絶対に致しません」
「ありがとう、ローザ、君のお陰で正気を保っていられるよ」
リカルド王太子は、ローザが自分のために名誉を捨ててくれたのを理解していた。
その事を素直に口にして感謝の気持ちを伝えた。
前世の習慣では、つい大事な事も以心伝心で伝わると思ってしまいがちだった。
だがこの世界では、本当に大切な事を間違いなく伝えるためには、どれほど恥ずかしくても口にしなければいけない。
今生のリカルドならそれ程恥ずかしく感じられない事でも、前世の知識と記憶に引きずられるので、真っ赤になってしまう事がある。
だがそれが上手く相手の母性本能をくすぐることもある。
歴戦の傭兵であるライラとローザには、桁外れな強さと全く比例しない、初心ともいえるリカルドの態度が、たまらなく愛しく思えるのだ。
ローザはコンラッドを抱いているにもかかわらず、この場でリカルド王太子を押し倒してしまいそうになったが、流石に自制した。
思わずリカルド王太子を抱きしめかえしそうにもなったが、コンラッドを抱いているのでそれもままならず、貪るように口づけを返す事しかできなかった。
ローザの目にも万感の思いが込められたが、リカルド王太子にはそれに応える時間がなかった。
絶対に忘れないと決意したような目で、リカルド王太子はローザとコンラッドを見つめたが、直ぐに精神力を総動員して眼を瞑り、振り切るようにして最奥の間から出て行った。
ローザは城門まで見送りたかったが、そんな事をすればリカルド王太子を不安にさせてしまう事を理解していたので、奥から表に続く扉までしか見送らなかった。
だが奥の堅固な扉までは足早に移動するリカルド王太子に付き従った。
「御武運を信じております」
思わずローザの口から出た言葉が全てだった。
神でも運でもなく、リカルド王太子を信じるだけだった。
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