結婚式の日に婚約者を勇者に奪われた間抜けな王太子です。

克全

文字の大きさ
80 / 127
第二章

第80話:殲滅戦

しおりを挟む
 リカルド王太子は魔王軍の残党が周囲に残っていないか探し回った。
 数種類の探索魔術を駆使して探し回った。
 ダドリー領都の殲滅戦から追撃殲滅と半日で済んだのに、安全確認の為の索敵に半日かけてしまっていた。

「戻ったよ、ローザ、コンラッド」

「ふっふぇえぇぇぇ、凄いね、流石殿下だ、一日で全滅させたのかい」

 リカルド王太子は急いでダドリー城に戻ってローザとコンラッドを安心させた。
 まだコンラッドは何も理解できない幼さなのだが、そんな事は関係ない。
 不測の事態を警戒して日が暮れる前に戻り、いそいそと二人に会った。
 陽の光の中で凱旋して功を誇るわけでもなく、ただ妻と子に会いたい一心の煩悩の塊だった。

「多分ね、半日かけて索敵したから、見逃しはないと思うけど、魔王軍の中にどんな能力を持っている奴がいるかは分からないから、油断はしないで欲しい」

「分かったよ、しばらくは奥から出ないようにするよ」

 ローザも、リカルド王太子が自分達の事に関しては臆病なくらい慎重になる事を理解していたので、余計な心配をかけないようにおとなしくする約束をした。
 その夜はしっかりを愛を確かめ合って、翌朝早々まだ日が昇る前に、リカルド王太子は領都の民に見つからないように出陣した。
 時に合理的になるリカルド王太子の思考は、二度も三度も凱旋で時間を取られたくないと考えていたのだ。

 リカルド王太子の勝利を高らかに宣言して、領都の民と王国第二騎士団の勇戦を称えるための凱旋式は、領都の士気のためには絶対に必要だった。
 だが、今ここで凱旋式をやってしまったら、アクス城とアイル城を包囲している魔王軍を殲滅した後でも、また凱旋式をやらなければいけなくなる。
 それでなくともアクス城とアイル城でも凱旋式をしなければいけないのだ。
 いや、北魔境に近く常に緊張を強いられる最前線のアクス城とアイル城でこそ、華やかに凱旋式を行い、騎士団将兵と自警団と住民を称えなければいけないのだ。

 だからこそリカルド王太子は夜明け前に出撃し、夜明けと共にアクス城とアイル城を包囲している魔王軍を殲滅した。
 夜目の利かない人間が、夜目の利く強力な魔王軍が攻め寄せるのを一晩護り、消耗した心身で朝番の部隊と交代する時に、圧倒的な勝利が見られるように演出した。
 流石に両城同時に演出する事はできないので、元フィエン公爵家の騎士や領民が多いアイル城で魅せるようにした。

 両城を包囲する魔王軍を瞬殺したリカルド王太子は、最初にアイル城で凱旋式を行い、騎士団と自警団と住民を慰撫した。
 次にアクス城で凱旋式を行い、騎士団と自警団と住民を慰撫した。
 最後にダドリー領都に戻って凱旋式を行い、騎士団と自警団と住民を慰撫した。
 魔王軍を殲滅させるのは一瞬だったが、三つの凱旋式を行うのに丸一日かかってしまった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語

ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ…… リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。 ⭐︎2023.4.24完結⭐︎ ※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。  →2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

処理中です...