天下無双のダンジョン冒険者(神殺しの物語)

克全

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第1章

第2話:神罰と神与

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【クックックックッ、もう試練は終わった】

「何だと?!」

【7人中6人が戦友を、いや、人類を裏切って私利私欲に走った。
 そのような卑怯下劣な生物に生きる資格はない、滅べ】

 ルクス・デウスの言葉と共に、世界中のダンジョンからモンスターが溢れた。
 最強の竜やエンペラークラスのモンスターが溢れ出して人類を襲った。
 冒険者や軍隊が抵抗したが無駄だった。

 戦術核兵器がエンペラードラゴンに放たれたが、殺す事ができなかった。
 核戦争にも耐えられる地下基地が破壊されれ、独裁者や大統領が殺された。
 どれほどの僻地にいる人間も逃げる事ができなかった。

《やりすぎだ、試練にしてもやり方が卑怯するぎる》

 ルクス・デウス以外の神、閻魔大王が怒りをあらわにして言い放つ。

【やかましい、今更余計な口出しをするな、人類の神判に賛成しただろう!】

《公平な神判を行うと言うから賛成したのだ、こんな卑怯下劣は認めん》

≪その通りだ、これが公明正大だと言い張るなら、我がお前を滅ぼしてくれる≫

 神の中の神、上級神の天之常立神も激怒して言う。

【今更遅いわ、人類は我が滅ぼしてやったわ】

≪お前如き弱小下級神と我を同列に扱うな、時を戻せば全てなかった事になる≫

【何だと、人類如きの為に時を戻すというのか?!】

≪人類だけの為ではない、お前が神に相応しいか見定めるためだ≫

《そうだな、お前とお前に賛成した連中が神に相応しいか、時を戻して確かめる》

≪次に今回と同じような卑怯下劣な真似をしたら、誰であろうと滅する!≫

★★★★★★

≪八百鬼竜也よ、今1度人類のために戦う覚悟はあるか≫

「ある、何度死ぬ事になっても人類のために戦う!
 人類を救うために神を殺す必要があるなら、ためらう事なく殺す」

 ルクス・デウスに人類滅亡を最後まで見せつけられた八百鬼竜也が言う。
 神の力で拘束され、悔しさの余り奥歯を噛み砕き血の涙を流しながら、人類の最後を見せつけられた八百鬼竜也が断言する。

《だが今のその方の力では絶対にルクス・デウスには勝てない》

「分かっている、これまで以上に努力して強くなる!」

《無理だ、人の限られ寿命、限られた能力では神に勝てる力は得られない》

「その言い方は、俺に人以外になって戦えと言っているのか?」

《いや、人以外の者がルクス・デウスの試練を達成しても意味がない》

「人を捨てる以外の方法があるというのか?」

《我が管理している地獄と友だちが管理している黄泉国と冥界で修行させる》

「地獄? 閻魔大王様なのですか?」

《そうだ、我は閻魔大王だ、地獄にいるあらゆる人類に修行を付けさせてやる》

「ありがとうございます、心から感謝します。
 ですが時間は大丈夫なのですか、人間の寿命では神に勝てないのですよね?」

≪心配するな、我が時を停めてやる、その間に好きなだけ修行するがよい≫

「貴方様はどの神様なのでしょうか?」

≪我は上級神の天之常立神である≫

「アメノトコタチのかみ、ですか? 別格5神の天之常立神様ですか?」

≪そうだ、小説家志望で色々調べていた八百鬼が我を知っているのは分かっている≫

「どのくらい時を停めてくださるのですか?」

≪千年でも万年でも億年でも停めてやる≫

「私がルクス・デウスに勝てる力を得るまで待って頂けるのですか?」

≪いや、地獄と黄泉国と冥界だけの修業ではルクス・デウスには勝てない。
 時を戻してやり直した時に、ダンジョンで多くの神々から認められねばならぬ≫

 ルクス・デウスに手も足も出なかった八百鬼には痛いほど身に染みる言葉だった。

「ルクス・デウスの試練で、ルクス・デウスから力を与えられたのと同じように、他の神からも力を与えられるようになれと申されるのですね。
 限られた人の能力を超える力を神から授かれというのですね?」

 ルクス・デウスに授けられた力でルクス・デウスに勝てるわけがない。
 少なくともルクス・デウスよりも強い神から力を授からないといけない。

≪そうだ≫

「お眼鏡に叶ったら、天之常立神様と閻魔大王様から力を授かれるのですか?」

《他の神々に文句を言わせない行いをすれば授けてやる》

「人類よりも卑怯下劣なやり方で神判を下したルクス・デウスが文句を言えない、この世界に存在する事が許される高潔な行いをしろと言われるのですね」

《その通りだが、八百鬼なら、これまで行っていた通りにすれば好い、ではまず我の管理する地獄で修行せよ》

★★★★★★

「植芝盛平殿、宜しくお願いします」

 ルクス・デウスから与えられた力を失った八百鬼が合気道の指南を頼む。

「手加減はしない、体で覚えよ」

「はい!」

 ルクス・デウスから与えられた力を失った八百鬼だが、命懸けでダンジョンに挑んだ1年で鍛えられた身体はそのままの力を発揮した。
 僅か10年で、植芝盛平どころか塩田剛三を負かすほどの強さに達した。

「皆様方、宜しくお願いします」

「「「「「「任せろ」」」」」
「八百鬼が人類の希望だと閻魔大王から聞いている、納得するまで相手してやる」

 地獄にいる空手家、柔術家、レスラーの達人たちが言う。
 百人組手どころではない千人組手、万人組手が100年200年行われた。
 死ぬ事の無い地獄で、身体中の骨を砕き内臓を破裂させながら修行する。

「お待たせしました、お願いします」

「「「「「おう!」」」」

 次の修業は剣道剣術だった。
 柳生新陰流の柳生石舟斎、柳生十兵衛、柳生宗冬、柳生連也斎などに骨を砕かれ身体を斬り刻まれながら修行する。

「次をお願いします」

 柳生新陰流の免許皆伝と成った八百鬼が上泉信綱に一手指南を願う。
 柳生新陰流の元となった新陰流の上泉信綱に実戦訓練してもらう。
 何度も殺されながら身をもって上泉信綱に新陰流の極意を学ぶ。

 愛洲移香斎からは陰流を学んだ。
 飯篠家直からは天真正伝神道流を学んだ。
 念阿弥慈恩からは念流を学んだ。
 東郷重位からは示現流を学んだ。
 塚原卜伝からは鹿島新當流を学んだ。

 一定の実力を得てからは実戦訓練を繰り返した。
 殺されても死ぬ事の無い地獄で、道場剣術ではなく戦場の太刀を学んだ。
 それも一対一ではなく、多対一から乱戦まで実戦訓練した。

「複数でかかって来て下さい」

 八百鬼が幕末の剣客たちに言う。

「戦国の剣豪に学んだからといって良い気になるなよ」

 佐々木只三郎が吼えるが、他の者たちは黙って斬りかかって来た。
 八百鬼は取り囲まれないように駆け回って1人ずつと戦う。
 既に十分な実力と実戦経験はあるが、多勢に無勢で何度も殺される。

 河上彦斎の片手抜刀、左膝が地面に着くほど低い姿勢からの逆袈裟斬りを受けて何度も死に、遂に避けるだけでなく自分でも使えるようになった。

 坂本龍馬、沖田総司、近藤勇、4代目桃井春蔵、斎藤弥九郎、千場周作、千葉定吉、千葉栄次郎、山岡鉄舟、伊藤甲子太郎、藤堂平助、山南敬介、木戸孝允、高杉晋作、伊藤博文、渡辺昇、谷干城、品川弥二郎、武市半平太、岡田以蔵と殺し合う。

 天才的な閃きと剣技で戦う者もいれば、実直に流派の剣術通りに戦う者もいた。
 流派で徒党を組んで戦う集団もいれば1人で戦う者もいた。

 三段突きに名手と言われた沖田総司、幕末から明治にかけて突き日本一と言われた下江秀太郎と戦い、殺し殺される間に突きの間合いと呼吸を身に着ける。

「次をお願いします」

 体術と剣術の次に学んだのが槍術や薙刀術だった。
 本多平八郎、榊原康政、前田利家、前田慶次、柴田勝家、加藤清正、福島正則、渡辺守綱、渡辺勘兵衛、可児才蔵、後藤又兵衛、母里太兵衛、小野鎮幸、島津忠恒、直江兼続、飯田覚兵衛、吉川広家などと槍を合わせて学んだ。

 弓術は浜から船上の扇を射た事で有名な那須与一を筆頭に、立花宗茂、内藤正成、真弓広有、大弓音人、吉田重政、小笠原貞慶、六角義治、大島光義、七条兼仲、一栗放牛、一宮随波斎、日置正次、吉田重氏などから流派の奥義を学んだ。

「次は冥界と黄泉国の猛者と実戦訓練させてください」

 地獄でひと通りの鍛錬を終えた八百鬼は、日本古代の死人や中国やインドの死者を相手に実戦訓練を行った。

 八百鬼が名前を知っている項羽、楊大眼、韓世忠、尉遅敬徳、秦叔宝、檀道済、呂布、趙雲、典韋、関羽、馬超、張飛、李克用、蕭摩訶、衛青、李広、霍去病、黄忠、許禇、岳飛、孫策、太史慈、夏侯惇、夏侯淵、張遼、張郃、徐晃、龐德、甘寧、周泰、魏延、張繡、文醜、顔良、鄧艾、姜維だけでなく、名もなき剛勇の武将とも槍を合わせ剣を打ち合って実戦経験を積む。

 個の戦いだけでなく、地獄と冥界、黄泉国の人間を率いて軍略を学ぶ。
 歴代の名将軍師に弟子入りして戦略戦術を学ぶ。
 自分自身で戦わなくても兵を動かして勝つ方法を学ぶ。

≪もう十分だ、これだけ学べば後は人の善良さを証明するだけだ、元の世に戻れ。
 ルクス・デウスなど、我の神判を受ける神々の記憶は奪ってある。
 其方の記憶だけは残しておいてやる、人類が生き残るべき生物である証を示せ≫

「はい、ありがとうございます、神々に認めて頂ける生き様をしてみせます」
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