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第一章
第5話:先々代ダイン男爵リドワーン卿
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「ですが、何故私なのですか、それが全く分かりません」
私はとても不思議だったのです。
ゴールド公爵ヴィルヘイム卿が人間不信となり、女性と接することができず、子供が残せない事は理解できました。
ヴィルヘイム卿が、親戚に跡目を譲りたくない気持ちも理解できましたが、私になら譲ってもいいという理由が分かりません。
それを教えてもらわない限り、簡単に引き受ける事などできません。
「それは、先々代ダイン男爵リドワーン卿が公爵閣下を助けてくださったからです。
しかも、命懸けで戦ってくださったにもかかわらず、全く代償を求められず、こちらが御礼をしようとすると、逆に怒られました。
『ダイン男爵はゴールド公爵の分家、今ダイン男爵家があるのは、本家が大切な領地を分与してくれたお陰、藩屛として本家を護るのは当然である』そう申されて、一切の報酬を拒まれたのでございます」
私が生まれた時には、すでに亡くなられていた曾祖父が、とても誇り高い方だったのがよく分かりました。
ちょっとだけでも、その報酬をもらっていてくれていたら、ダイン男爵家の家計のやりくりがもっと楽だったのにとも思いましたが、どうせ父が騙された時に全部奪われて無くなってしまっていますね。
「公爵閣下は、今こそあの時のお礼をすべきだと申されているのです。
だから、遠慮も心配もなされずに、安心して嫁いできてください。
あの時以来、家臣一同死ぬ気で自らを鍛え、どこの誰にも公爵閣下を害させないように努力してきました。
その力で必ずダニア様を御守りいたします」
今度もロメロ準男爵が最敬礼してくれたと同時に、室内にいる全員が私に最敬礼してくれます。
曾祖父の遺徳のお陰で、ダイン男爵家が助かるというのなら、胸を張って嫁入りしてもいいでしょう。
まして白の結婚でいいと言ってくれているのですから、これほどの好条件はありませんが、ちょっと引っかかる所があります。
「分かりました、曾祖父の気持ちを考えれば、お受けするしかありません。
お受けすると決めた以上、このままこの屋敷に残らせていただきます。
父には私が事情を書きますので、それを見せて手回り品を持って来てください。
公爵家の正室には相応しくない安価な品物ですが、愛着がありますので、廃棄せずに使わせてください、いいですね」
「承りました、奥方様。
さあ、お前達、奥方様の荷物を運んでくるんだ」
ロメロ準男爵が指示を出し、他の家臣達が一斉に動き出しました。
すでに私をゴールド公爵家の正室として扱ってくれています。
ありがたいと同時に、大きな重圧を感じます。
彼らと、そして曾祖父リドワーン卿の想いです。
ヴィルヘイム卿の血筋を残したいという、口にはしない本心を感じます。
私だって貴族令嬢ですから、最初から政略結婚をする心算でいたのです。
問題は、私にヴィルヘイム卿の人間不信を治し、子種を得るだけの能力と魅力があるかですが、やれるだけやるしかありませんね。
私はとても不思議だったのです。
ゴールド公爵ヴィルヘイム卿が人間不信となり、女性と接することができず、子供が残せない事は理解できました。
ヴィルヘイム卿が、親戚に跡目を譲りたくない気持ちも理解できましたが、私になら譲ってもいいという理由が分かりません。
それを教えてもらわない限り、簡単に引き受ける事などできません。
「それは、先々代ダイン男爵リドワーン卿が公爵閣下を助けてくださったからです。
しかも、命懸けで戦ってくださったにもかかわらず、全く代償を求められず、こちらが御礼をしようとすると、逆に怒られました。
『ダイン男爵はゴールド公爵の分家、今ダイン男爵家があるのは、本家が大切な領地を分与してくれたお陰、藩屛として本家を護るのは当然である』そう申されて、一切の報酬を拒まれたのでございます」
私が生まれた時には、すでに亡くなられていた曾祖父が、とても誇り高い方だったのがよく分かりました。
ちょっとだけでも、その報酬をもらっていてくれていたら、ダイン男爵家の家計のやりくりがもっと楽だったのにとも思いましたが、どうせ父が騙された時に全部奪われて無くなってしまっていますね。
「公爵閣下は、今こそあの時のお礼をすべきだと申されているのです。
だから、遠慮も心配もなされずに、安心して嫁いできてください。
あの時以来、家臣一同死ぬ気で自らを鍛え、どこの誰にも公爵閣下を害させないように努力してきました。
その力で必ずダニア様を御守りいたします」
今度もロメロ準男爵が最敬礼してくれたと同時に、室内にいる全員が私に最敬礼してくれます。
曾祖父の遺徳のお陰で、ダイン男爵家が助かるというのなら、胸を張って嫁入りしてもいいでしょう。
まして白の結婚でいいと言ってくれているのですから、これほどの好条件はありませんが、ちょっと引っかかる所があります。
「分かりました、曾祖父の気持ちを考えれば、お受けするしかありません。
お受けすると決めた以上、このままこの屋敷に残らせていただきます。
父には私が事情を書きますので、それを見せて手回り品を持って来てください。
公爵家の正室には相応しくない安価な品物ですが、愛着がありますので、廃棄せずに使わせてください、いいですね」
「承りました、奥方様。
さあ、お前達、奥方様の荷物を運んでくるんだ」
ロメロ準男爵が指示を出し、他の家臣達が一斉に動き出しました。
すでに私をゴールド公爵家の正室として扱ってくれています。
ありがたいと同時に、大きな重圧を感じます。
彼らと、そして曾祖父リドワーン卿の想いです。
ヴィルヘイム卿の血筋を残したいという、口にはしない本心を感じます。
私だって貴族令嬢ですから、最初から政略結婚をする心算でいたのです。
問題は、私にヴィルヘイム卿の人間不信を治し、子種を得るだけの能力と魅力があるかですが、やれるだけやるしかありませんね。
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感想ありがとうございます。
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あれ?ここで完結ですか?
打ち切りの場合、タグ付けして欲しい😢
感想ありがとうございます。
タグ付ですか、分かりました。
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感想ありがとうございます。
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