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第一章
第23話:実体
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俺とサクラは一旦館に戻った。
幽体ではなく実体になるためだった。
そしてクジラ肉を風魔術でミンチにした。
赤身と脂身を混ぜて美味しく食べられるようにした。
孤児院の子供達はとても痩せていた。
あの痩せた身体からは、普段肉を食べていないのが分かる。
北方に来るまでの旅でも、民はとても貧しい食生活だった。
俺自身もここにいてからは大麦粥しか食べていない。
同じように大麦粥しか食べていない子供に肉の塊を与えても食べられない。
ふんわり柔らかくしたハンバーグを塩茹でにして子供でも食べられるようにした。
「ママ、ママ、ママ。
こわいよ、さみしいよ、1人は嫌だよ」
「だいじょうぶよ、わたしたちがいるから、わたしたちはいなくならないから」
さっきの女の子がまだ泣いていた。
最初に慰めていたちょっと大きな女の子ではなく、13歳くらいに女の子が慰めていたが、小さい子はよほど哀しく寂しいのか、泣き止まない。
このままでは他の女の子まで泣き出すのは目に見えていた。
「ニャッ、ニャオ」
そんな悲しみに満ちた部屋にサクラが現れた。
サクラは子供達に「大丈夫だよ、安心しなさい」と母性丸出しで話しかけている。
だが俺や古代氷竜と違って、子供達に猫語は分からない。
それでも猫と言うのは子供達に安心感を与える事ができるようだ。
サクラが黒猫ではなく茶トラだったのもよかった。
「わぁあああああ、ねこさんだぁあああああ」
泣いている子とは違う女の子がサクラに駆け寄った。
少々乱暴な撫で方だが、サクラは教育的指導も入れずに我慢している。
今のサクラは母性の塊だから、泣いている子供が相手だと、大概の事は我慢する。
それでも、あまりに乱暴だと教育的指導をしてしまうだろう。
そんなことになったら、サクラの出現に驚いて泣き止んだ子がまた泣き出す。
(イリュージョンキャット)
俺の姿が猫に見えるように、小さな声で幻影魔術を自分にかけた。
「私は猫の妖精だ。
私のかわいい猫が子供を亡くして哀しんでいた。
哀しみの余り愛情を与える子供を欲しがっていたのだが、ここに親を亡くした人間の子供がいた。
種族は違うが、母の子に対する愛情は同じだ。
だからこの猫の願いを叶えるために君達にプレゼントを持ってきた。
受け取ってくれるかな」
「ねこのようせい?
でもどこにもだれもいないわ。
こえだけしかきこえないわ」
「私は猫の妖精だから猫の姿をしているのだが、とても大きいのだよ。
それこそトラの様に大きいのだよ。
そんな姿を見せると君達が怖がると思って、隠れているんだよ」
「そう、わかったは、すがたがみえないのはそれでいいわ。
それで、わたしたちになにをプレゼントしてくれるというの。
おかさんやおとうさんをいきかえらせてくれるとでもいうの」
「流石にお母さんやお父さんを生き返らせてあげる事はできない。
だけど、お腹一杯お肉を食べさせてあげる事はできるよ。
その子が泣いているのも、お腹が減っているからではないのかい。
お腹が一杯になれば眠れるのではないかな」
「おにく、おにくをたべさせてくれるというの。
ほんとうならうれしいけれど、わたしたちだけなの。
ここにはたくさんのこどもたちがいるわ。
ほかのへやのこたちにかくれて、わたしたちだけたべるわけにはいかないわ」
「大丈夫だよ、沢山持ってきたから全員で食べればいいよ。
1日では食べくれないくらいのお肉を持ってきたからね。
安心して食べればいいよ」
俺はそう言うと、急いで作った巨大ハンバーグを魔法袋から取り出した。
女の子が大声で泣き出す前に戻ってくるために、魔力と魔術を惜しむことなく使って作った巨大ハンバーグだ。
総重量10キログラムのハンバーグに中で火を通すのは難しい。
だから薄く広く伸ばして火が通るように工夫したのだ。
「「「「「うわぁあああああ、おにくだぁあああ」」」」」
子供達が巨大ハンバーグを食べようとベットから降りてきた。
サクラは、まだ動かない泣いていた女の子の所に素早く走り寄って、慰めるように身体をすりつける。
女の子が力一杯サクラを抱きしめて泣き出した。
幽体ではなく実体になるためだった。
そしてクジラ肉を風魔術でミンチにした。
赤身と脂身を混ぜて美味しく食べられるようにした。
孤児院の子供達はとても痩せていた。
あの痩せた身体からは、普段肉を食べていないのが分かる。
北方に来るまでの旅でも、民はとても貧しい食生活だった。
俺自身もここにいてからは大麦粥しか食べていない。
同じように大麦粥しか食べていない子供に肉の塊を与えても食べられない。
ふんわり柔らかくしたハンバーグを塩茹でにして子供でも食べられるようにした。
「ママ、ママ、ママ。
こわいよ、さみしいよ、1人は嫌だよ」
「だいじょうぶよ、わたしたちがいるから、わたしたちはいなくならないから」
さっきの女の子がまだ泣いていた。
最初に慰めていたちょっと大きな女の子ではなく、13歳くらいに女の子が慰めていたが、小さい子はよほど哀しく寂しいのか、泣き止まない。
このままでは他の女の子まで泣き出すのは目に見えていた。
「ニャッ、ニャオ」
そんな悲しみに満ちた部屋にサクラが現れた。
サクラは子供達に「大丈夫だよ、安心しなさい」と母性丸出しで話しかけている。
だが俺や古代氷竜と違って、子供達に猫語は分からない。
それでも猫と言うのは子供達に安心感を与える事ができるようだ。
サクラが黒猫ではなく茶トラだったのもよかった。
「わぁあああああ、ねこさんだぁあああああ」
泣いている子とは違う女の子がサクラに駆け寄った。
少々乱暴な撫で方だが、サクラは教育的指導も入れずに我慢している。
今のサクラは母性の塊だから、泣いている子供が相手だと、大概の事は我慢する。
それでも、あまりに乱暴だと教育的指導をしてしまうだろう。
そんなことになったら、サクラの出現に驚いて泣き止んだ子がまた泣き出す。
(イリュージョンキャット)
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「私は猫の妖精だ。
私のかわいい猫が子供を亡くして哀しんでいた。
哀しみの余り愛情を与える子供を欲しがっていたのだが、ここに親を亡くした人間の子供がいた。
種族は違うが、母の子に対する愛情は同じだ。
だからこの猫の願いを叶えるために君達にプレゼントを持ってきた。
受け取ってくれるかな」
「ねこのようせい?
でもどこにもだれもいないわ。
こえだけしかきこえないわ」
「私は猫の妖精だから猫の姿をしているのだが、とても大きいのだよ。
それこそトラの様に大きいのだよ。
そんな姿を見せると君達が怖がると思って、隠れているんだよ」
「そう、わかったは、すがたがみえないのはそれでいいわ。
それで、わたしたちになにをプレゼントしてくれるというの。
おかさんやおとうさんをいきかえらせてくれるとでもいうの」
「流石にお母さんやお父さんを生き返らせてあげる事はできない。
だけど、お腹一杯お肉を食べさせてあげる事はできるよ。
その子が泣いているのも、お腹が減っているからではないのかい。
お腹が一杯になれば眠れるのではないかな」
「おにく、おにくをたべさせてくれるというの。
ほんとうならうれしいけれど、わたしたちだけなの。
ここにはたくさんのこどもたちがいるわ。
ほかのへやのこたちにかくれて、わたしたちだけたべるわけにはいかないわ」
「大丈夫だよ、沢山持ってきたから全員で食べればいいよ。
1日では食べくれないくらいのお肉を持ってきたからね。
安心して食べればいいよ」
俺はそう言うと、急いで作った巨大ハンバーグを魔法袋から取り出した。
女の子が大声で泣き出す前に戻ってくるために、魔力と魔術を惜しむことなく使って作った巨大ハンバーグだ。
総重量10キログラムのハンバーグに中で火を通すのは難しい。
だから薄く広く伸ばして火が通るように工夫したのだ。
「「「「「うわぁあああああ、おにくだぁあああ」」」」」
子供達が巨大ハンバーグを食べようとベットから降りてきた。
サクラは、まだ動かない泣いていた女の子の所に素早く走り寄って、慰めるように身体をすりつける。
女の子が力一杯サクラを抱きしめて泣き出した。
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