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第二章

第44話:認知症・アルツハイマー型認知症

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 俺はアリステアの協力を得ながら製薬の研究を続けた。
 アリステアは異世界各地を飛び回り、各種薬草を集めてくれた。
 集めてくれた薬草の種類が多過ぎて、また単独素材を使った製薬を繰り返した。
 薬が完成する度に鑑定魔術で効能を確認していた。
 お陰で需要は少ないが、特定の病人には必要な快復薬を創り出す事ができた。
 
 だがとても大きな問題があって、薬草の中にはとても希少で、数を集める事のできないモノがあったのだ。
 限られた環境、数多くの条件を兼ね備えた場所でしか育たない薬草、それを人工的に栽培するのはとてもとても難しいのだ。
 だが俺には無意識に多くの知識が蓄えられている。

 古代氷竜アリステアがそれを教えてくれたので、2人で俺が蓄えている知識を思い出しながら、希少薬草の人工栽培を試していた。
 ガラスやビニールを使った温室栽培はできないが、魔力を使って環境をコントロールする事と促成栽培は可能だった。
 魔力促成栽培で一気に製薬が進むと思われた頃、1つの問題が持ち込まれた。

「ネコヤシキ殿、このような症状に効果がある魔術や薬はないだろうか」

 またパーカー準男爵である。
 領主として王家直轄領の代官として、慈悲深く責任感があるのは素晴らしい事なのだが、領民のためなら遠慮しながらではあるが、問題を持ち込んでくる。
 まあ、サクラの長男坊として恥ずかしくない生き方をしようと決めたから、極力協力はするけどね。

「分かっているとは思いますが、全部アリステア殿がやった事にしてくださいよ」

「ありがとうございます、ネコヤシキ様。
 分かっております、誰も申しません。
 妻にも息子にも娘にも言いませんから、安心してください」

 俺はパーカー準男爵から聞いた民の症状を確かめるために幽体離脱した。
 俺が直接診察したら絶対に噂になってしまう。
 サクラやアリステアに治させても、以前の大量難民騒動の再来になる。
 だからこっそりと診察して薬を創り出すことにしたのだが、対象の民は若年性認知症になっていた。

 認知症やアルツハイマーの分類の1つに、65歳未満で発症した認知症を若年認知症と定義するものがある。
 18歳から29歳で発症した場合は若年期認知症と定義して、40歳から64歳で発症した場合は初老期認知症と定義するのだが、今回はかわいそうに20歳で発症してしまっていた。

 20歳での発症は、本人だけでなく家族もかわいそう過ぎるので、急いで想いと願いを込めて薬を創ることにした。
 さいわいクジラの赤身肉には、認知症やアルツハイマー型認知症を快復させる効果があると読んだ事があった。
 別のその説が間違っていても構わない。

 俺の思い込みと願いが強ければ、その影響を受けた魔力が素材に定着して、ポーションとなってくれるかもしれないのだ。
 脳に蓄積されたアミロイドβタンパク質を除去するイメージと、アミロイドβタンパク質によって破壊された脳細胞が再生されるイメージを強く持つ。

 生きていくために必要な知識や経験を忘れないようにしてあげたい。
 すでに失われてしまった記憶を取り戻してあげる事はできないが、これから手に入れられる素敵な想い出を忘れないようにしてあげたい。
 友人や恋人、家族が哀しい思いをしないようにしてあげたいのだ。
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