五十四歳独身小説家志望が、資料の乙女ゲームのモブ令嬢にTS転生させられてしまいました。

克全

文字の大きさ
5 / 8

4話

しおりを挟む
「誰かいないか!
 誰か王太子殿下を助けよ。
 王太子殿下を助けるのじゃ!」

 ああああ、また知らない設定が発動している。
 こんなところで王太子殿下が暴漢に襲われる話なんて知らない。
 それ以前に、アルテイシアとリリィが一緒に教会に行くこと自体がありえないことなのだ!

 それにしても、王太子殿下の護衛が弱すぎる。
 相手はただの強盗ではないのか?
 王太子殿下の護衛に選ばれるのは、王家に仕える騎士でも屈指の使い手が選ばれるモノだろう。
 よほどシナリオがご都合主義なのか?

「急ぎなさい。
 王太子殿下をお助けするのです」

「分かりました、アルテイシア御嬢様」

 俺と一緒に馬車の中にいる、アルテイシアが毅然と指示している。
 一緒に乗っている侍女二人が顔色を青くしている。
 それも当然だろう。 
 戦う気構えなど一切ないのだから。

 問題はアルテイシアについている護衛の質と数だ。
 王家の、いや、王太子殿下の馬車は八頭立六頭曳の騎馭式だが、公爵令嬢アルテイシアの馬車は六頭立四頭曳の騎馭式だ。
 前衛の二騎の騎士は俺が見てもかなりの腕利きだ。
 四頭の輓馬のうち左の前馬と後馬に御者が乗っているが、彼らも騎士だから十分戦える。
 後衛の二騎の騎士も強盗に負けるような、形だけの騎士ではない。
 馬車自体に乗っている御者台の二人も徒士としては飛び抜けて強い。
 馬車の後ろにある護衛台に立っている徒士も同様に飛び抜けた剣士だ。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ギャァァァァアァアァアア!」
「御嬢様に近づけるな!」
「何事ですか!
 暴漢などさっさと殺してしまいなさい!」

 馬車の外は阿鼻叫喚の修羅場となっているようだ。
 馬車の中は慌て騒ぐ侍女のせいで、うるさいことこのうえない。
 暴漢だと思っていたが、鍛え抜かれた刺客だったようだ。
 ヘイグ公爵家の選び抜かれた騎士と徒士が苦戦しているのだから。
 王太子殿下を襲ったのだから、それくらいは考えておくべきだった。

 俺が甘かったのだが、だがそれも仕方ないだろう。
 俺の本質は貴族家の人間なんかじゃない。
 小説家志望のまま無為に年を取ってしまったフリーターなのだ。
 バブルがはじけてしまって、就職したばかりの会社が倒産し、それからはアルバイトを転々と変えながら、三十有余年チマチマと持ち込みと投稿を続けながら、全く芽の出なかった何の取り柄もない凡才なのだ。

「リリィ、聖の魔法で一緒にケガ人を癒しましょう。
 私達が手助けすれば、必ず王太子殿下をお助けできます!」
 
 ああ、アルテイシアは俺なんかとは比べものにならないくらい、勇気があって立派です。
 ゲームか夢だと思っているくせに、怖くて足が震えてしまう俺は、なんて卑小な存在なんだ……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

処理中です...