五十四歳独身小説家志望が、資料の乙女ゲームのモブ令嬢にTS転生させられてしまいました。

克全

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5話

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「大丈夫ですよ、リリィ。
 怖いのは誰も同じです。
 私が盾になりますから、私の後ろから聖の魔法を使えばいいのです」

 本質は男なのに、情けないです。
 TS転生で女に生まれたお陰で、アルテイシアの陰に隠れて震えていても、誰にも非難されることなく許されます。
 俺の自尊心、男の尊厳以外からは……

 隠れてらいれるかぁ!
 あの世があるのなら、可愛がってくれた祖母に顔向けできんだろうがぁ!
 足が震えようが、手が目に見えて震えていようが、逃げられるかぁ!
 夢の中くらい男気を出すべきだ!
 TS転生して見た目は女でも、中身は男なんだ!

「だ、だ、だ、だいじょうぶです。
 ば、ば、ば、ばしゃのかげからなら、まほうもつかえます」

「そうね、リリィはやればできる女だもの。
 なんといっても私の親友だものね!」

 そうだ!
 俺はアルテイシアの親友なのだ!
 こんな時のために、剣を学び魔法も学んできたのだ!
 ないのは勇気だけなのだ!
 勇気以外は準備万端整えてきたのだ!

「神々よ、癒しを与えたまえ!」

 王太子を助けようとして馬ごと負傷し二騎の騎士に、アルテイシアが癒しを与えています。
 
「神々よ、癒しを与えたまえ!」

 次に私が、輓馬に上で倒れ伏している二騎の騎士に癒しを与えました。
 板金鎧の上からですが、わずかに生きている兆候がうかがえたからです。
 もし何の兆候もなければ、確実に生きているのが分かる、馬車の御者台で奮戦している徒士を支援していたでしょう。

「うぉおおお!」
「御嬢様に手を出すな!」

 復活した前衛の騎士と騎馬がこちらに戻ってきます。
 王太子よりもアルテイシアを優先するのでしょう。
 まあ当然と言えば当然です。
 彼らは王家の騎士ではなく、ヘイグ公爵家の騎士なのですから。
 四人の徒士と戦っていた刺客が、素早く馬車から離れます。
 騎士に挟み撃ちにされるのを恐れたのでしょう。

「雷よ!」

 短い詠唱です。
 実戦に即した詠唱なのでしょう。
 せっかく戦線に復帰した二騎の騎士が、再び落馬転倒してしまいました。

「神々よ、癒しを与えたまえ!」

 アルテイシアが再び癒しを与えています。
 私もやらねばなりません!

「神々よ、癒しを与えたまえ!」

 多くの魔力を失いましたが、四人の徒士を同時に癒しました。
 これでアルテイシアと私が攻撃される危険は減ったと思います。

「「ギャァァァァアァアァアア」」

 輓馬に伏せていた二騎の騎士が、私の癒しを受けていたのに、死んだふりをしていたのでしょう。
 刺客のすきをうかがって背後から斬りつけました!
 これで一気に敵が二人減りました。
 圧倒的に有利になったはずです!
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