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第二章
59話
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「御嬢様。
コックスは、御嬢様のためシーモア公爵家のため、新たな役目に励んでおります。
そして見事にその役目を果たしました。
しかしながら過酷な任務のため、少々疲れております。
ですがここで休むと、せっかくの任務達成に傷がつきます。
ここは労いの言葉をかけるだけにしてください」
なるほど、そういう事でしたか。
表に出せない陰の仕事か、目立たないけど大切な裏方仕事をしてくれたのですね。
「そうでしたか、分かりました。
コックス、よくぞ見事に役目を果たしてくれました。
コックスの御陰で安心して過ごす事ができます。
これからも頼みましたよ」
「過分な御言葉恐れ入ります。
これからも忠誠を尽くさせていただきます」
そうは言ってくれましたが、心に迷いがあるようです。
裏方仕事ではなく、陰の仕事を任されたのですね。
リリアンに見込まれたのでしょう。
リリアンが陰の仕事を統括していたとは、領地に帰る旅程で襲われるまで、全く気がつきませんでした。
本当に何も見えていませんでしたね。
「リリアン。
コックスは狩りに同行させた方がいいですか?
それとも育児をしている魔犬達の世話をさせた方がいいですか?」
「それは御嬢様がムクに確認してくださいますか。
ムクが一番状況を分かっていると思われます」
コックスがハッとしています。
何か魔獣と魔獣使いに関する問題があるのですね。
絆に関係するのなら、大問題です!
王都で初めて会った時の話から考えると、陰の仕事に魔犴を使ったのですね!
それは、コックスが魔獣使いとしてこれからも生きていけるかどうかの、一大事ではありませんか!
「分かりました。
ムク、どうすべきですか?」
常に、いついかなる時も、私の側を離れないムクとアズ、私を護るように、少し離れた場所に陣取る魔犴と銀狼がいます。
ムクが即座に反応して、かつての主であるコックスに近づき、頭を足にこすりつけています。
その後で私の方に頭を向けて、訴えてきました。
「一緒に狩りに行った方がいいようですね。
特に二匹の魔犴には、自由にデビル魔境を駆けさせた方がいいようです。
コックスとの絆は……
少し細くなっているようですが、切れる心配はないようですね」
「よかった!
ありがとうございます。
御嬢様」
コックスの陰りはやはり絆の心配でしたか!
今の私には痛いほど分かります。
魔獣との絆が細くなる事は、生死にかかわる大問題です。
生死にかかわらなくても、自分の生き様を変えねばならない大問題です。
忠誠のためとはいえ、失うのは怖いでしょう。
主君とパートナーの魔獣、どちらかを選べと言われたら、今の私なら魔獣を選びます。
コックスは、御嬢様のためシーモア公爵家のため、新たな役目に励んでおります。
そして見事にその役目を果たしました。
しかしながら過酷な任務のため、少々疲れております。
ですがここで休むと、せっかくの任務達成に傷がつきます。
ここは労いの言葉をかけるだけにしてください」
なるほど、そういう事でしたか。
表に出せない陰の仕事か、目立たないけど大切な裏方仕事をしてくれたのですね。
「そうでしたか、分かりました。
コックス、よくぞ見事に役目を果たしてくれました。
コックスの御陰で安心して過ごす事ができます。
これからも頼みましたよ」
「過分な御言葉恐れ入ります。
これからも忠誠を尽くさせていただきます」
そうは言ってくれましたが、心に迷いがあるようです。
裏方仕事ではなく、陰の仕事を任されたのですね。
リリアンに見込まれたのでしょう。
リリアンが陰の仕事を統括していたとは、領地に帰る旅程で襲われるまで、全く気がつきませんでした。
本当に何も見えていませんでしたね。
「リリアン。
コックスは狩りに同行させた方がいいですか?
それとも育児をしている魔犬達の世話をさせた方がいいですか?」
「それは御嬢様がムクに確認してくださいますか。
ムクが一番状況を分かっていると思われます」
コックスがハッとしています。
何か魔獣と魔獣使いに関する問題があるのですね。
絆に関係するのなら、大問題です!
王都で初めて会った時の話から考えると、陰の仕事に魔犴を使ったのですね!
それは、コックスが魔獣使いとしてこれからも生きていけるかどうかの、一大事ではありませんか!
「分かりました。
ムク、どうすべきですか?」
常に、いついかなる時も、私の側を離れないムクとアズ、私を護るように、少し離れた場所に陣取る魔犴と銀狼がいます。
ムクが即座に反応して、かつての主であるコックスに近づき、頭を足にこすりつけています。
その後で私の方に頭を向けて、訴えてきました。
「一緒に狩りに行った方がいいようですね。
特に二匹の魔犴には、自由にデビル魔境を駆けさせた方がいいようです。
コックスとの絆は……
少し細くなっているようですが、切れる心配はないようですね」
「よかった!
ありがとうございます。
御嬢様」
コックスの陰りはやはり絆の心配でしたか!
今の私には痛いほど分かります。
魔獣との絆が細くなる事は、生死にかかわる大問題です。
生死にかかわらなくても、自分の生き様を変えねばならない大問題です。
忠誠のためとはいえ、失うのは怖いでしょう。
主君とパートナーの魔獣、どちらかを選べと言われたら、今の私なら魔獣を選びます。
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