逆行悪役令嬢は改心して聖女になる。

克全

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第三章

68話

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「御嬢様。
 刺客を送ってきたのはヒックス子爵家と判明いたしました。
 これよりコックスを報復に送ります」

「リリアン。
 コックスに無理をさせていませんか?」

「多少の無理はさせています。
 ですが御嬢様の護りを引き受けた以上、やらねばならない事でございます。
 コックスには他の戦闘侍女にはない能力があり、それが評価されていきなり騎士として召し抱えられました。
 地位には責任が伴うのが当然でございます。
 それに、敵の攻撃を受けるだけでは防ぎ切れません。
 手痛い反撃を受けると分かっていれば、敵も刺客を送ることを躊躇います。
 それが敵を殺さずにすむ方法でもあります」

「リリアンのコックスに対する考えは理解しました。
 もっともな事だと思います。
 ですが、仕えてから後悔する事もあります。
 もしコックスが、これ私に以上仕えるのがむりだと言ってきたら、引き留めずに召し放ちにしてやってください。
 敵に対する斬新な考え方も分かりました。
 ですがまだ納得しかねます。
 もう少し待つわけには参りませんか?」

「残念ながら、御嬢様の願いを完全に叶える訳には参りません。
 コックスは仕える時に誓紙血判を書いております。
 しかも、他家に絶対知られてはならない、御嬢様とシーモア公爵家の秘密を知ってしまっています。
 召し放ちにする訳には参りません。
 ですが御嬢様の慈悲の御心を蔑ろにもできません。
 もしそのような事を言ってきたら、本来なら内々で処分するところですが、デビルイン城の警備に役目替えとします」

「ありがとう、リリアン。
 それで、反撃はどうするの?」

「派遣する者を変えて、ヒックス子爵家に報復します。
 これも御嬢様一人の問題ではございません。
 戦闘侍女は言うに及ばず、シーモア公爵家に仕える者全てが、御嬢様を護ろうとして死傷する可能性がございました。
 無辜の民が巻き込まれる可能性もございました。
 シーモア公爵家に刺客を送ってきた敵に対しては、断固たる処置をとれというのが、公爵閣下の決定でございます。
 御嬢様が
『納得しかねます』
 と申されても、報復を止める訳には参りません」

「そうですか、分かりました。
 でしたら、できる限り、自分から志願する者にやらせてくださいね」

「承りました」

 頭では、やらなければいけない事だと分かっているのですが、完全に割り切って考えるのは、なかなか難しいですね。
 シーモア公爵家に生まれた以上、いえ、貴族に生まれた以上、手が血塗られるのは仕方のない事なのですが……
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