勇者パーティーを追放された魔法剣士は卑怯な手段でエッチに復讐する!

ヤラナイカー

文字の大きさ
21 / 42
第三章「ハイラント王国の危機」

第二十一話:決戦の始まり

しおりを挟む
 女勇者セイラは、少し驚いたように言う。

「師匠が有利の場所とはいえ、まさか本当に一人で待ち構えているとは思わなかった」

 ガンプは、静かに手元のアイテムを確認しながら言う。

「俺がこうして見えるというのは、お前がこういう師匠を望んでいたんじゃないのか」

 セイラの方も、封魔の剣ブルームハルトを引き抜いて言う。

「ああそうだ。ここなら僕たちは、師匠と対等に戦える」

 まさに、決闘にふさわしい。
 最初にやったようなだましうちではない。

 お互いが死力を尽くして戦う戦場で、セイラは師匠を超える。
 これまでの因縁に決着を付ける。

「じゃあ、早速始めようぜ。|《魔物召喚》サモン・モンスター!」

 ガンプが出してきたのは、アッシュワームとデロデロアメーバ。
 ほんとに、最後まで代わり映えがしない攻撃だ。

 しかし、この精侵汚染の部屋では冒険者のレベルなんて関係ないし、魔法も使えない。
 雑魚モンスターもバカにはできない。

「くそ! 動きづれえ!」

 聖槍ゲイハルトをぎこちなく振るうヴァルキリアは、触手に全身を拘束されながら、迫り来るアッシュワームと必死に戦っていた。

「なんていたましい! いやぁ! やっぱり私、こいつだけはだめです! なんで私だけぇ!」

 よっぽど触手が苦手なのか、手足を縛られた上でデカイおっぱいに触手にぐるぐると巻き付かれてぎゅうぎゅう締め上げられている。
 そして、そこにアッシュワームの白濁液をぶっかけられて聖女のローブがドロドロに溶けて酷い状態だ。

「今助けるわよ!」

 意外にもエリザベート姫は勇敢に立ち向かい、王者の剣で触手を斬り落としてプリシラを解放する。
 そして、アッシュワームに白濁液をぶっかけられるのも恐れずに突っ込んでいってその巨体を斬り裂いている。

 もしかしたら姫様、剣を握って戦ってたほうがいいのではないか。

「こいつめ! こいつめ!」

 プリシラも、さっきの仕返しなのか、触手やアッシュワームを裁きのメイスで粉砕していた。
 意外に、こう見えて力はあるのだ。

「きゃー!」

 でもやっぱり、触手にぐるぐる巻きにされると弱いけど。
 みんなが敵を引き付けてくれる間に、セイラは封魔の剣ブルームハルトを振り回して、ガンプへと肉薄していた。

「師匠、覚悟!」
「やはり、お前がくるかセイラ!」

 ガンプは、見たこともない青い剣を持ってセイラの一撃をはねのける。

「やるね、師匠!」

 ここは、精神力が物を言う精侵汚染の部屋だ。
 心の強さ、勇気こそが力となる。

「ここでなら、俺はお前に負けない!」
「それはどうかな!」

 単純に剣の勝負なら、セイラは圧倒的に強い。
 だが、ガンプは触手をまるで自分の手のように操りながら、セイラに攻撃を仕掛けてくる。

「たった数年勇者だけをやった小娘が! 年季が違うんだよ!」
「師匠が強いのは知ってたさ!」

 ガンプは、誰よりも努力してきた。
 いなくなっていかにそれに自分たちが依存していたのか、セイラは痛感した。

「だったら、お前はここで俺にやられておけ!」
「それでも!」

 セイラも、いつかは大人になるのだ。
 ガンプという、うざったい師匠の束縛を斬リ抜けて、自分の本当の人生を生きる。

「俺を試金石にするか! される側は、たまったものではない!」
「それでもだ!」

 セイラは勇者だ。
 本人が望むと、望まないとに限らず、誰よりも勇気あるものに与えられる称号。

「甘いなセイラ!」

 腕を触手に拘束されたセイラの胸に、深々とガンプの剣が刺さった。
 激しい痛みが走る。

 だが、それでいい。
 やはり、師匠は僕を自らの手で殺したかったのだなとセイラは思った。

 ただの村娘だったセイラに戦う術を教えてくれた。
 その師匠を殺そうというのだ。

 胸に一生の傷が残るくらいでちょうどいい。
 そして、その傷は致命傷ではない。

「ごめんね、師匠! これで本当にサヨナラだ!」

 セイラは勇者だ。
 その思いも、人類最強であると定められている。

 たとえどんな敵であっても、必ず倒してしまう。
 ぶちぶちぶちと音を立ててセイラの腕の触手がちぎれると、そのままセイラは封魔の剣を振り下ろしてガンプを真っ二つに斬り裂くのだった。

 終わったと思ったその時。
 ふいに、胸の傷の痛みがなくなる。

「え……」

 グラッと視界が揺れて、その場に倒れ込んでしまう。
 頭から、ガンプの声が聞こえる。

「面白い踊りを見せてもらったよ」

 目の前にあるのは、ガンプの映っているモニターと中継しているらしい魔導球であった。

「どういうこと」

 あたりを見回すと、たくさんいたはずのアッシュワームも、デロデロアメーバもいない。
 ただ、がらんとした精侵汚染の部屋に、セイラたち勇者パーティーの四人が倒れているだけ。

「説明しなきゃわからないのか。お前たちは、俺の幻覚の魔法で踊ってただけだ」
「そんなわけない! だってこの部屋は……」

 セイラたちに幻覚なんて初歩的な魔法が聞くわけもないし、ましてこの部屋は魔法が使えない部屋ではないか。

「誰がこの部屋で幻覚をかけたといった」

 そう言われて、聡明なセイラは気がついてしまう。

「あっ、さっきのウィルオウィスプ!」
「そうだ。俺が幻覚の魔法をかけるのは、あれくらいの隙があれば十分だ」

「でも、僕たちに幻覚魔法が効くわけない」
「まだ寝ぼけてるようだな。自分の格好を見てみろよ」

 そう言って、ガンプはニヤッと笑う。
 セイラは、またあの忌まわしい呪いのエッチな青色の下着を着せられていた。

 倒れている他の三人も一緒だった。

「いつの間に……」
「お前さ、俺が補助魔法が効かないはずの上位魔族にデバフ攻撃できてるのを見てるよな」

「うん」
「だったらなんで、自分たちだけ特別だと思えるんだ」

 この人は恐ろしいと、セイラは心底思い知った。
 これまでの魔術の常識をくつがえすことをやってのけたと言っているのだ。

 そうして、ずっと周回遅れだったセイラはようやく気が付いた。
 こうやって種明かしをするということは、ガンプにはもう次の手が存在しているということだ。

「師匠、これから一体、何が起こるの……」
「ほお、鈍いお前もようやく気がついたか」

「なんなのさ、早く言ってよ!」

 何かとんでもないことを見逃しているような、そんな恐ろしく悪い予感に囚われているセイラ。

「さっさとそこで寝ている仲間を起こして上の馬車にまで戻れ。王宮からお前たちにも連絡があるはずだ」

 もう遊びの時間は終わりだぞと、ガンプは不吉な言葉を残してモニターから姿を消すのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...