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スコットの甘え

サラの為に

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俺が騎士になろうと決めたのは、同じ孤児院で育ったサラの影響からだった。


小さい頃は同じ年のはずなのに、男の俺の方が体が小さかった。

いつも泣いてばかりいる俺を慰めてくれていたサラが大好きで、いつも後ろを付いて回っていた。

ある時村に在住していた若い騎士を見て、サラが言ったんだ。

「騎士様って格好良いね!」

「サラは騎士様が好きなの?」

そう聞いた俺にサラが笑顔で言った。

「うん!騎士様って強くて、いつもみんなを守ってくれるんだもん!大好きっ!」

サラのその言葉で、俺は騎士になることに決めたんだ。


それから大きくなってサラの背を抜いて、鍛えて…

自分に自信がついた。

もうサラの後ろを歩く泣き虫なんかじゃない。

俺はサラの前を歩いて、サラを引っ張っていくんだ。


16歳になって孤児院を出る時が来た。

本当はサラと一緒にこの村に残りたかった。でも、サラの好きな騎士になるために、王都に行くと決めたんだ。

サラに待ってていて欲しい。そう思ってサラに思いを告げた。

初めてのキスをして、王都に旅立った。


騎士団の訓練は大変だった。

毎日吐くまで走らされて、剣の素振りを続けた。

辞めたいと何度も思ったけど、合格するまで騎士にはなれない。

騎士にならないと王都に来た意味がない。

只管に走り続けた。


サラから手紙の返事が来た。手作りのクローバーの栞が入っていて、サラらしいなと思って嬉しかった。

「何ニヤニヤしてんだよっ!」

「彼女から手紙が来たの?」

「羨ましいよなぁ。俺なんて母ちゃんからしか来ないぜ!」

「クローバーの栞…?素朴だねぇ。スコットって田舎から来たんだったよな?」

部屋で一人で手紙を読んでいると、同期達が、シャワーから帰って来て、俺をからかった。

田舎から来たことを馬鹿にされたくなかった俺は、強がって言った。

「そんなんじゃないよ。どうしてもっていうから、付き合っただけ」

そう言って手紙とクローバーの栞を机に投げ捨てた。

「またまたー。手紙見てニヤニヤしてたくせに」

ギャハハハー

みんな俺を馬鹿にして笑っていた。


「そういえばさ、今度の休みに娼館に行こうぜ!楽しみがないとやってられないしな!」

「いいね!俺も行きたかったんだ!」

俺は同期達の会話に戸惑った。


「俺はいいかな…」

断った俺に同期達が詰め寄った。

「なになに?初めては恋人とが良いって?」

「純情っ!流石田舎っ子だな!」

「でも、初めてだと恋人可哀想じゃない?練習した方が恋人も喜ぶよ?」

ギャハハハー

(辺境の村出身だからって馬鹿にしやがって…)

俺はみんなに笑われて恥ずかしくなった。

「別にそんなんじゃねぇし。良いよ。行くよ」

ぶっきらぼうにそう言った俺に、みんなは笑って言ったんだ。

「そうこなくっちゃ!」

次の休みに同期達と娼館へと向かった。
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