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本編

応援してる

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そのまま私はケビンさんと手を繋いで村に帰った。


食堂の近くまで来ると、女将さんが慌てて駆け寄ってきた。

「あぁ、サラちゃん。見つかって良かった。今日は家に帰らないで欲しいの」

「女将さん、そんなに慌ててどうしたんですか?」

私はケビンさんと顔を見合わせた。

(何かあったのかな…?)

私が不思議に思っていると、遠くから呼びかけられた。

「サラ!やっと会えた!孤児院のみんなも、食堂の人たちも、誰もサラが何処にいるか教えてくれなくて…やっと帰って来れたんだ。サラ、お待たせ」

スコットだった。彼が私を見つけて走ってきた。

(何言ってるの…?会いに来なかったくせに、手紙も返さなかったくせに…あれから何年経ってると思ってるの?)

別れの手紙を送ったのに、もう何年も会っていないのに、まるで何事もなかったかのように振る舞うスコットに、私は何処か恐怖を感じた。

思わずケビンさんを握る手に力が入った。

「スコット、あんた何勝手な事言ってるんだい!何年も連絡もなしに会いに来なかったのはあんただろう?サラちゃんを悲しませて…私は絶対にあんたを許さないよ!」

女将さんがスコットに捲し立てて、私を庇ってくれた。

「でも俺はサラの恋人だ。俺はサラの事を今でも愛しているし、サラだって同じだ!」

そんな事を言って喚くスコットを見て、ケビンさんが私の前にすっと立ち塞がった。

「スコット君、君はサラの気持ちを考えた事があるかい?サラは君に別れの手紙を送ったはずだよ?そして、君は何もしなかった…それで終わりだと思うのは当然じゃないかな?」

彼が私の気持ちを代弁してくれたんだ。

「それはっ…手紙は読んだ。でも、受け入れていない。会って話せばわかると思ったんだ。なぁ、サラ。そうだろう?まだ俺を愛してくれているだろう?」

そんな勝手な事を言うスコットに、私は怒りを覚えた。

「勝手な事言わないでよ!私達はもう終わったの。あれからもう三年だよ?スコットは何も言ってくれなかった。その時点で私達は終わったの」

私はケビンさんの横に立って、スコットに言った。

「は…?なんで他の男と手を繋いでるんだよ?浮気してるのか?」

(浮気したのはスコットじゃない)

私を問い詰めるスコットに、呆れて声も出なかった。

「サラ、浮気は許してあげる。帰って来れなかった俺が悪いからな。でも、二度目はないよ?サラと結婚しようと思って帰ってきたんだよ。結婚したがってただろう?幸せにしてやるからさ」

何も言わない私にスコットが更に勝手な事を言った。

(今更なんなの…?許してあげるって、もう関係ないじゃない!)

そう思っていた私の言葉を、ケビンさんがまた代弁してくれた。

「スコット君、今更なんですよ。もう三年も経ったんです。それに私とは浮気ではありません」

「関係ないやつは引っ込んでろよ!」

スコットがケビンさんを怒鳴った。

「関係なくありません。先程サラにプロポーズをして、受け入れてもらいました。関係ないのはスコット君、あなたの方では…?」

ケビンさんがスコットに冷たく言い放った。

その瞬間わぁっと村のみんなが騒ぎ出した。

「おめでとう!」

「遂にか、焦れったかったんだよ」

「幸せになってね」

私達はみんなに囲まれて祝福された。
スコットは村の人達に、輪の外に追いやられていた。


「サラ!俺を捨てないでくれ!愛してるんだ!」

叫ぶスコット。

「私も愛していたよ。もうずっと前だけど…私は私だけを見てくれる人が良いの。幸せにしてくれるんじゃなくて、一緒に幸せになれる人が良いの。浮気の心配ばかりするんじゃなくて、穏やかで心地よい、小さな幸せを感じて生きていきたいの。さようなら、スコット。騎士になったあなたを、いつまでも応援してるよ」


立ち尽くすスコットを残して、私はケビンさんと一緒に家に帰った。

村の人達も「今日は飲むぞ!」と言いながらぱらぱらと散っていった。

道の真ん中でスコットだけがただ一人、佇んでいた。


「ケビンさん、ありがとう」

私はそう言ってケビンさんの握る手に、ギュッと力を入れた。

「ん?何かしましたか?」

ケビンさんが優しく聞いてきた。

「私の気持ちを代わりに言ってくれてありがとう。嬉しかった」

私は立ち止まっって、彼の顔を見て言った。

「いえ、思わず我慢出来ずに言ってしまいました。私もありがとうございます」

ケビンさんが私の頭を撫でて言った。

「何がですか?」

そう聞いた私に彼が頬を染めて言ったんだ。

「プロポーズを受けてくれてありがとうございます。スコット君に言っていた言葉も嬉しかったです」


「「一緒に幸せになりましょう」」

声が揃った私達は笑い合った。

こんな穏やかな時間が、いつまでも続きますように…
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