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第三章

仲睦まじくお過ごしください

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マーガレットがシルベスタ帝国に来て一年が経った。

皇太子妃になったものの、お気楽な性格はそのままだった。

オリビアにセバスは相も変らず、王城の使用人達でさえも、マーガレットに振り回されていた。

「全くもう!」

そう言って腰に手を当てる使用人達だったが、彼らは皆笑っていた。そして最後に決まって言うのだ。

「マーガレット様ですから、仕方がないですね」

あの『鬼の爺や』と呼ばれるジルヴィウスでさえも、マーガレットには苦言を言えなかった程だった。


そして…

今日はマーガレットとギルバートの結婚式。

「メグ…お嫁に行ってしまうんだね…」

ビクトールは号泣していた。

「幸せそうで安心したわ」

スザンヌの目にも涙が浮かんでいた。

「お父様もお母様もありがとう。私はとても幸せだわ」

「メグ!」

ビクトールの涙が止まることは無かった。


「皇太子殿下、メグを…マーガレットをよろしくお願い致します」

泣きながら言うビクトールに、ギルバートは真面目な顔をして答えた。

「必ず幸せにすると誓おう」

この日、二人は始めて握手を交わしたのだった。


挙式を終えて馬車に乗ったマーガレット達は、民達に手を振りながらゆっくりと城下町を回った。

(あら…?あのおじいさんは…)

以前マーガレットが精霊の神殿に訪れた時に会った、不思議な老人が見えた。

老人はマーガレットを見て、ゆっくりと頷いた。

「ギル、あの時のお爺さんが来てくれたわ」

マーガレットがもう一度見ようと思った時には、既に居なくなっていた。

気になったマーガレットだったが、民達の歓声に応えるのに精一杯で、それどころではなくなってしまったのだ。


「マーガレット様!おめでとうございます!」

ケナード領の領民達も大勢紛れていた。

「メグお姉ちゃん!おめでとう!」

プラムの隣にはトムが立っていた。

「みんな、来てくれたのね。ありがとう」


「ギルバート皇太子殿下、マーガレット皇太子妃殿下!おめでとうございます!」

「シルベスタ帝国!万歳!」

大きな歓声に包まれて、マーガレットとギルバートは皆に手を振っていた。

マーガレットは気が付かなかったが、祝いに駆けつけた人達の中には、今までマーガレットが関わった人々が全員、色んな所に紛れていた。


「マーガレット!」

聞き覚えのある声を聞いたマーガレットは、キョロキョロと声の主を探していた。

(あら…?あそこにいるお二人は…)

「マーガレット嬢!おめでとう!」

キャシーとジェラルドだった。

「マーガレット!真実の愛で結ばれた皇太子殿下と末永くお幸せに!」

キャシーは大きな声で叫んだ後に、綺麗なカーテシーを披露した。そして「どうかしら?」と口の動きだけでマーガレットに伝えた。

(とても綺麗なカーテシーだわ…ずっと頑張っていたのね)

マーガレットは頷いてキャシー達に手を振った。

ジェラルドの腕の中には、大きくなった二人の子供がいた。

「キャシー様、ジェラルド様。真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください」

マーガレットはそう囁いた。

「私達も、だろう?」

ギルバートはそっとマーガレットの手を取り、二人はもう片方の手を民達に振り続けたのだった。
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