拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ

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第一部:私だけの物語

17.ほしいもの

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 キット様にも、悩みはあるらしい。

 今届いた手紙には、私と同じぐらいの年齢の女性の知り合いがいるそうなのだけど、プレゼントにどんなものを贈ればいいか悩んでいると書いてあった。

 昔、誕生日に学術書を送ったら三日ほどほとんど口を利いてもらえなくなったらしい。
 そんなものを贈ってくるなんて、クリスみたいだなと思った。二十一歳の誕生日にもらったのは、『よく分かる財政管理』だった。ちなみに、一度も開いていない。

『よかったら知恵を貸して貰えないだろうか。貴女なら、どんなものをプレゼントに欲しい?』

 なんでもお見通しなのにこんなことだけは分からないのか。そう思うと自分より随分年上のはずの彼が可愛らしく思えてくる。

 何より私は、キット様の役に立てることが嬉しかった。助けてもらって、相談に乗ってもらってばかりだったから、キット様が私を頼りにしてくれたということが踊り出したいくらいに嬉しい。
 “貴女”と呼びかけられる度に、ちゃんと対等に扱ってもらっている気がする。

 ペンを片手にしばし考えてみる。同世代の女の子なら、少しは気持ちが分かるつもりだ。

 花束は、悪くない。誰かがくれた花が部屋にあるだけで、ぱっと気分が明るくなる。

 アクセサリーも、いい。
 お気に入りのアイテムはお守りみたいなものだ。
 ネックレスもいいけれど、着けている間手元がずっと目に入るからブレスレットなんかもいいんじゃないだろうか。

 けれど、何よりうれしいのは、自分の為に何かを選んでくれる人がいるということだろう。
 相手の喜ぶ顔を考えて選ぶといいと思うと、私は書き添えた。

「いいなぁ。私も誰かプレゼントくれたりしないかな」

 無論、そんな予定はない。私は便箋をきれいにたたんで封筒にしまった。
 明るい色の花束も煌びやかなアクセサリーも、私の毎日からは遠いものだ。それぐらいはちゃんと弁えている。
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