真紅の瞳と小さな灯

夜明けのハリネズミ

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「おもいだすひとみ」

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 リューは洞窟の奥深くで不機嫌そうにゴロリと横になっていた。
 昨日も、一昨日も、リナは遊びに来なかった。

「何をしているんだ、あの人間め……!」

 洞窟の中には、リューが苛立ちのあまり放り投げた金貨や宝石が散らばっている。
 宝石の山を引っ掻いては崩し、尻尾で床を叩きつけ、苛立ちは募る一方だ。

「まったく……友達とか言いながら、俺を放っておくとは何事だ!」

 リューは立ち上がり、洞窟の外へ向かって大きく羽ばたいた。

 森を抜け、リナが住む小さな小屋の近くまで来ると、リューはその場で周囲を見渡した。
 だが、リナの姿はどこにもない。

「いない……? またいないのか!」

 リューは苛立ちに任せて地面を爪で掻き、周囲の木々を吹き飛ばすような勢いで大きく息を吐いた。

「やっぱり人間は信用ならん! もういい、壊してやる!」

 リューの赤い瞳がギラリと光り、近くの村へと向きを変えた。

「壊せば気が晴れる。それでいいんだ……それで……」

 自分に言い聞かせるように呟きながら、大きな翼を広げて空を飛び立つ。

 村が見えてきた。小さな家々、人々の声。

「ああ、この感じだ。俺に逆らう弱き者たち……。」

 リューは村の上空で大きく吠えた。

「俺を怒らせた人間どもよ、存分に恐れ――!」

 そのとき、ふいに脳裏にリナの顔が浮かんだ。

「お願い、もう壊さないで。」

 まっすぐな瞳。怖がりながらも、自分を見つめていたあの瞳。
 その記憶が、心の奥にしみ込むように蘇った。

「くっ……」

 リューの動きが止まる。鋭い爪を振り下ろそうとした手が震えた。

「俺は……」

 リューは振り返り、もう一度村を見下ろした。そこにいるのはリナではない。ただの人間たちだ。
 だが、リナと同じように怯えた表情を浮かべている彼らを見て、胸がチクリと痛んだ。

「……もういい。」

 リューは大きなため息をつくと、爪を下ろして背を向けた。

「俺は……壊さない。」

 言葉に出してみると、その重みが自分でも不思議だった。
 彼は大きな翼を広げ、ゆっくりと森へ戻っていった。

 洞窟に戻ったリューは、静かに床に横たわり、天井を見上げて呟いた。

「お前の瞳……どうして俺をこんな気持ちにさせるんだ。」

 リューの中で苛立ちは消え、代わりにぽっかりとした寂しさだけが残った。

「リナ……早く戻ってこい。」

 自分の気持ちがなんなのか、まだ彼は分かっていなかった。
 ただ、リナの顔を思い浮かべると、それ以上壊す気にはどうしてもなれなかったのだ。

 外の風が静かに吹き抜け、リューは目を閉じた。
 またリナに会える日を、じっと待ちながら――。
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