真紅の瞳と小さな灯

夜明けのハリネズミ

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「はじめてのすがた」

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 リューは洞窟の奥で、一人黙々と練習をしていた。
 人間の姿になるための練習を。

「どうして俺がこんなことを……」

 そう呟きながらも、心の奥底では分かっている。
 リナが来なくなって寂しいからだ。

「友達なら、同じ姿のほうが……いや、そういう問題じゃない!」

 リューは怒鳴りながらも、魔法の力を練り上げ、必死に自分の体を変えようとしていた。
 大きな翼を縮め、角を隠し、鱗を滑らかな肌に変えようとするたびに、全身が痛む。

 それでも諦めなかった。

 一日目。
 失敗。尻尾が消えず、顔には鱗がまだら模様のように残った。

 二日目。
 もう少し近づいた。角も消えたが、手のひらがまだドラゴンのままで、とても人間とは言えない姿だった。

「くそっ……」

 リューは寝る間も惜しんで練習を続けた。

 三日目――夜明け。
 やっと、人間の姿に近づくことができた。

 大きな体を小さくし、鱗を消し、尻尾も見えないようにした。
 ただ、ところどころ肌に鱗の名残が残り、完璧とはいえなかった。

「これでいい……これで、リナのように見えるだろうか……」

 鏡を覗き込みながら、リューは肩で息をしていた。
 この姿になると、力が抜けて非常に疲れる。

 少し休んだ後、リューは人間の姿のまま村に向かった。
 道中、人間たちがこちらを見ても、怯えるどころか、何も気づかない様子だった。

「……本当に気づかれないのか。」

 不思議な感覚だった。いつもなら怯え、泣き叫ぶ人間たちが、自分を恐れない。

 それに少し安堵しながらも、リナを探そうと村を歩いた。

 だが、人間の姿になると、なぜか言葉がうまく出てこない。

「リ……ナ……ど、こ……」

 口を開いても舌がもつれ、声が思うように出ない。
 自分がこんなにも不器用だったのかと愕然とし、リューは肩を落とした。

「なんだ……この姿になっても、俺には何もできないじゃないか。」

 ガッカリしたリューは、村を出て洞窟に戻ろうと足を向けた。

 そのときだった。

「もしかして…。リュー……?」

 柔らかな声が背中に届き、リューは足を止めた。
 ゆっくり振り返ると、そこにリナが立っていた。

 彼女は顔を真っ赤に染め、こちらをじっと見つめている。

「どうして……人間の姿に……?」

 リナの声を聞いた瞬間、リューの胸の奥がぎゅっと締めつけられるような感覚に襲われた。

「……なぜだろう……涙が……」

 気がつくと、リューの目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちていた。

「リュー?」

 リナが不安そうに近づいてきた瞬間、リューは体が勝手に動いていた。

 次の瞬間には、リナをしっかりと抱きしめていた。

「なっ……リュー!? ちょっと! なにしてるの!」

 リナは驚いていたが、リューにはもう自分の体がどうなっているのかすら分からなかった。
 ただ、彼女を抱きしめることで、ずっと感じていた寂しさが消えていく気がした。

「……会いたかった……」

 やっとのことで、それだけを口にした。

 リナは驚いた顔をしていたが、次第に柔らかな笑顔になり、リューの背中をそっと叩いた。

「……ごめんね、待たせちゃったね。」

 その一言で、リューの心は静かに満たされていった。

 こうして、人間の姿になったリューとリナは再び出会い、また新たな絆を深めることになるのだった――。
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