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「まほうのれんしゅう」
しおりを挟むリューは洞窟の中、額に汗を浮かべながら腕を振り上げた。
「治れ……治れ……!」
目の前に置かれた小さな花瓶。そのヒビを回復させようと、何度も呪文を唱えるが、何も起こらない。
「くそっ! なんでだ!」
リューは苛立ちのあまり、床を力いっぱい尻尾で叩いた。
いつもなら魔法なんて簡単だ。火を操ることも、空を裂く力も、考える間もなく使えるというのに。
「回復の魔法なんて、大したことないだろうに……」
そう思って練習を始めたのは、リナのためだった。
人間は体が弱い。あんなに小さな体では無理もない。
だから、いつかリナが怪我をしたとき、自分が治せるようにしておこうと思ったのだ。
「でも……こんなに難しいなんてな!」
リューは花瓶を睨みつけ、苛立ちに満ちた声をあげた。
「あー! むしゃくしゃする! こんな時は――」
そう言いかけて、ふとリナの顔を思い出す。
「……なんでもない。頑張ろう。」
リューはため息をつき、もう一度呪文を唱え始めた。
練習を始めてから、あっという間に3ヶ月が経った。
その日、リューとリナは森で遊んでいた。リナが木の実を摘もうと小走りで動き回るのを、リューは半人半竜の姿でぼんやり見ていた。
「リュー、これ美味しそうじゃない?」
「どうでもいい。」
「もう、少しは興味持ちなさいよ!」
リナは笑いながら手を振ったが、次の瞬間、足元の段差につまずいて地面に転がった。
「いたっ……!」
リナの小さな悲鳴を聞いた瞬間、リューは飛び上がるように駆け寄った。
「おい、大丈夫か!?」
リナは地面に座り込み、膝を抱えたまま足をさすっている。見れば、足首が腫れ始めているではないか。
「痛い……たぶん捻っただけだけど。」
その言葉を聞くや否や、リューはリナの足首に手をかざした。
「治してやる。」
「え?」
リナが驚いている間に、リューは必死に呪文を唱えた。光が彼の手から広がり、リナの腫れた足首を包み込む。
「よし……これで――」
リューが呪文を終えた瞬間、リナがクスクスと笑い始めた。
「な、なんだ?」
「ごめん、でも……似合わない魔法ね!」
リューはリナの言葉に顔を引きつらせた。
「……似合わないだと?」
「だって、リューってほら、火を吹いたり、大きな爪で木を倒したりするじゃない。なのに回復魔法なんて……」
リナが笑いをこらえる様子に、リューの眉間にしわが寄る。
「そんなこと言うなら、もう使ってやらん!」
「えっ!? それは困るわ!」
「困る? なら言い直せ!」
「えーっと……その、素敵な魔法だと思うわ?」
「嘘くさい!」
二人は睨み合ったが、次第にリナの顔が笑顔に変わり、それにつられるようにリューも小さく笑ってしまった。
「ありがとう、リュー。」
リナがふいにそう言うと、リューは耳元まで真っ赤に染めながらそっぽを向いた。
「ふん、別にお前のためじゃない。これでひとつ最強に近づいたのだ。」
リナはそんなリューの背中を見つめ、また小さく笑うのだった。
「ふふ!そういうことにしておきましょう。」
こうしてリューは、ぶつくさ文句を言いながらも、これからも回復の魔法を使うことになるのだった――。
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