真紅の瞳と小さな灯

夜明けのハリネズミ

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「おくりもの」

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 リナが森の中で小さな花を摘み、せっせと編んでいる間、リューは隣で腕を組んで座っていた。

「何をしているんだ?」

「見て分からないの? 花かんむりを作ってるの。」

 リューは眉をひそめ、リナが手先を動かす様子をじっと見ていた。

「花かんむりだと? そんなもの何になる?」

「ほら、できた!」

 リナは完成した花かんむりをリューに向けて差し出した。小さな白い花と緑の草で丁寧に作られたそれは、繊細で美しかった。

「これ、リューにあげる。」

「……なんだ、こんなもの!」

 リューは顔を赤くしてそっぽを向いたが、リナが手を伸ばして彼の頭の上――角にそっと引っかけると、そのまま文句も言わず固まってしまった。

「似合ってるわよ!」

 リナが笑いながら言うと、リューはぶつぶつと文句を言いながらも、花かんむりを外さずにリナを背中に乗せた。

 空を飛びながら、リューはふと角に触れた。小さな花かんむりの感触がそこにある。

「……これが似合っているだと?」

 自分でも理由が分からないが、胸の奥が少し温かい気持ちになった。

 住処に戻ると、リューは花かんむりをそっと外し、大事そうに手に持ちながら洞窟を見渡した。

「……どこに置くべきだ?」

 考えた末、壁の一部を爪で削り始めた。慎重に、花かんむりを飾れるような小さな穴を掘り上げたのだ。

「これでいい。」

 そうして飾られた花かんむりを眺めると、リューはふっと小さく笑った。

「風を送って……これで乾くだろう。」

 羽を動かして優しく風を送り、花が乾いて壊れないようにする。その繊細さは、普段のリューからは考えられないものだった。

 リューは時折、人間の姿になって花かんむりをそっと撫でるのが日課になった。

「お前を壊すわけにはいかないからな……。」

 そう呟きながら、優しく指先で触れる。ドラゴンの姿では絶対にできない繊細な仕草だった。

 ある日、久しぶりにリナが住処に遊びに来た。

「リュー! 久しぶりね!」

 その声に驚いたリューは、花かんむりを慌てて隠そうとする。手近にあった絨毯の下に滑り込ませ、何事もなかったように振る舞った。

「お、お前、急に来るな!」

「いいじゃない、友達でしょ?」

 リナは笑いながら洞窟に足を踏み入れる。そのとき――。

「バリッ……」

 鈍い音とともにリナが何かを踏んだ。

「え? 何これ……あ!」

 リューは顔を青ざめさせながら絨毯を引っ張り、そこから出てきたのはペシャンコに潰れた花かんむりだった。

「花かんむり……!」

 リューの目に涙が浮かぶ。

「ごめん、リュー。私、気づかなくて……!」

 リナが慌てて謝ると、リューは潰れた花かんむりをそっと手に取り、静かに呟いた。

「君に貰ったものなのに……。」

 その声があまりにも寂しそうで、リナは少し黙った後、にっこりと笑顔を浮かべた。

「それじゃ、それを3日後、素敵なものにしてあげる! 貸して!」

「……え?」

「絶対に素敵にするから。楽しみにしてて!」

 リナは花かんむりを持って、村の外れにある小さな小屋へ戻っていった。

 3日後、リナが持ってきたのは、美しいリースだった。

「どう? 元の花かんむりを守るように作ってみたの。」

 リースの中心には、元の花かんむりが大切に守られている。リナの工夫が詰まったそのリースは、さらに輝きを増していた。

「お前……。」

 リューはしばらく言葉を失い、リナが指さした先を見る。

「ほら、あそこに飾ったら?」

 リナが指さしたのは、リューが花かんむりのために削った壁の部分だった。

「そうする。」

 リューはリースを両手で大事に抱え、丁寧に壁に飾った。

「ありがとう、リナ。」

「どういたしまして!」

 リースを飾った壁をじっと見つめるリューの背中を、リナは微笑みながら見つめていた――。
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