真紅の瞳と小さな灯

夜明けのハリネズミ

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「ききんのばけもの」

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 リューは洞窟の入り口で腕を組み、眉をひそめていた。

「どうしてリナが来ない……。」

 数日前から、リナの姿が見えない。その理由を確かめようと村の近くを飛び回り、人間たちの話を盗み聞きしてみた。

 そこで耳にしたのは「ききん」という化け物の話だった。

「村に食べ物が足りないから来られない……?」

 どうやら、この「ききん」とやらのせいで、リナも村の人間たちも苦しんでいるらしい。

 洞窟に戻ったリューは、何か解決策はないかと考え込んだ。

「ききんとかいう化け物を倒せばいいんだろう……?」

 そう呟いた瞬間、村で聞いた人間たちの話が頭に浮かぶ。

「食べ物をたくさん食べて強くなれば、ききんを倒せるらしい……。」

 リューは顎に手を当てて考え込む。

「つまり、人間どもは弱いから食べ物が足りないのか。」

 自分が倒すまでもなく、村に食べ物を届ければ、この化け物をどうにかできるのではないか。

「ふん、俺が手を貸してやる。さっさと終わらせてリナを戻らせるだけだ!」

 そう決めると、リューは翼を広げて草原へ飛び立った。

 草原に降り立つと、大きな鹿の群れが見えた。

「うむ、これならば食べ応えがあるだろう。」

 鋭い爪で狩りを終えると、リューはその中でも特に立派な獲物――「ブラッドホーン」と呼ばれる、血のように赤い大きな角を持つ鹿――を掴み、村へ向かった。

「これを落としてやれば、人間どももききんと戦えるようになるだろう!」

 リューは満足げに村の上空へ向かい、そのままブラッドホーンを村の広場に落とした。

 すると、広場から聞こえてきたのは……。

「きゃあああああああ!」

 村人たちの悲鳴だった。

 洞窟に戻ったリューは、何かが間違っていたのではないかと少し不安になっていた。

 その日の夕方、リナが洞窟にやってきた。

「リュー!」

 その声を聞いた瞬間、リューは安心した。しかしリナの顔を見ると……膨れっ面だった。

「どうした、リナ。何かあったのか?」

「何か、じゃないわよ! 村にブラッドホーンを落としたの、リューでしょ?」

 リューはぎくりと顔をそらした。

「そ、それは……その、村の人間どもに食べ物をやれば、ききんを倒せると思ったからだ!」

「でも空からブラッドホーンが降ってきたら、みんな驚くに決まってるでしょ!」

「……。」

 リューは少し言い返そうと口を開きかけたが、リナの膨れた顔を見て気圧された。

「そ、それは、だな……上手く爪が引っ掛からなくて……その……落としてしまったんだ!悪気は無い!」

「もう!」

 リナは呆れたようにため息をつき、腕を組んでリューを見上げ角に触れてきた。

「素直になりなさいよ、リュー。」

「す、素直も何も……俺は別に……。」

 リューは顔を赤くして目をそらすが、リナのじっとした視線に耐えきれず、小さく呟いた。

「……ありがとうくらい、言われると思っただけだ。」

 その言葉に、リナは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに柔らかな笑顔を浮かべた。

「そっか。ありがとう、リュー。」

 その一言にリューは少し顔を赤くしながらも、どこか満足げに鼻を鳴らした。

「ふん、最初からそう言えばいいんだ。」

 リナはクスッと笑いながら、膨れていた顔を緩めた。

「でもね、次からはもう少しやり方を考えてよね!」

「分かった……考えておく。」

 そんなやりとりをしながら、二人はまた笑顔を取り戻し、穏やかな時間が流れ始めるのだった――。
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