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「りゅうのうろこ」
しおりを挟むリューは洞窟の隅でじっと土をこねていた。
村の人間から「土を練って焼くと形が残る」と教わり、リナへのお礼として何かを作ろうと奮闘していたのだ。
しかし、どうにも上手くいかない。
「ぐぬぬ……なぜだ!」
手で練った土を焼き上げると、どれも歪んで崩れたり、ヒビだらけになったりしてしまう。
「俺がこれほど不器用だとは……!」
普段なら諦めるところだったが、今回は違う。リナへの感謝を形にするため、何度失敗しても挑戦を続けていた。
だが、心のどこかで挫けそうになるのも事実だった。
そんなある日、リナが洞窟を訪れた。
「リュー!」
リューは慌てて失敗作を隠しながら振り返る。
「な、なんだ急に来るなと言っただろう!」
「だって遊びに来たくなったんだもん。」
リナは無邪気に笑いながら洞窟の奥を覗き込む。隠したつもりの土の塊を見つけて不思議そうな顔をした。
「何これ?」
「そ、それは何でもない! 関係ない!」
リューは顔を赤くしながら、リナの目を逸らそうとする。
「ふーん。」
リナはそれ以上追及せず、軽く肩をすくめて洞窟を歩き回り始めた。
数日後、リナが突然リューに言った。
「ねえ、リュー。何か欲しいな。」
その言葉に、リューはびくりと体を震わせた。
「ほ、欲しいだと? ……まだ完成してないぞ!」
「完成って何が?」
「な、なんでもない! と、とにかく今は無理だ!」
焦りながらも言い逃れをしようとするリューに、リナはじっと目を向けた。
「じゃあさ、あなたの鱗を1枚ちょうだい。」
「……鱗?」
その言葉にリューは息を呑んだ。
リューの頭に浮かんだのは、ドラゴンの「逆心」と呼ばれる特別な鱗の話だった。
喉の下にある美しく輝く鱗で、一度抜けると二度と生えない。
それはメスドラゴンに渡すことで特別な意味を持つ――命を預けるような象徴でもあった。
「それをリナに……?」
彼女はそんな意味を知らない。ただ何気なく言っただけだろう。
だがリューは嬉しかった。
「欲しいと言われたのは初めてだ。」
彼はしばらく考え込んだが、やがて決意を固めた。
「わかった。」
リューはドラゴンの姿に戻ると、リナの目の前で喉の下にある鱗を爪でそっと引っかき、ポロリと抜き取った。
それは輝く銀色の鱗で、光を反射してキラキラと輝いている。
「これだ。二度と生えてこないからな。大切にしろよ。」
リナは受け取った鱗をじっと見つめ、笑いながら言った。
「何言ってるの? いつも湖の近くに脱皮した殻が落ちてるの知ってるんだから!」
「……それもそうだな。」
リューは一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに誤魔化すように鼻を鳴らした。
「とにかく、雑にするなよ!」
「はいはい、大事にするわよ。」
リナは笑顔で鱗を胸に抱えた。その姿を見て、リューは少し照れながらも心の中で満足感を噛みしめていた――。
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