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「こわいどらごん」
しおりを挟むリナは森の中で花を摘みながら、首元に下げたネックレスを触った。
それはリューの大切な鱗で作った、自分だけのお守りだった。
「リュー。」
彼女は小さく呟き、輝く鱗を指でそっとなぞった。
そのとき、背後から低い唸り声が聞こえた。
「……?」
振り返ると、そこには巨大な熊のような獣が立っていた。鋭い牙をむき出しにし、じっとリナを睨みつけている。
「えっ……。」
リナは足を後ろに引き、必死に逃げ道を探した。しかし獣は一歩ずつ近づいてくる。
「誰か……助けて……!」
その声も虚しく、森にはリナと獣以外の気配がない。
リナは恐怖で震えながら、ネックレスを握りしめた。
「リュー……助けて!」
叫ぶと同時に、ネックレスがキラリと光を放った。その瞬間、森全体がざわめき、風が木々を揺らした。
「リナ!」
空から大きな影が降りてきた。真紅の鱗に覆われたドラゴン――リューが姿を現したのだ。
リューはリナと獣の間に立ちふさがり、鋭い瞳で獣を睨みつけた。
「お前……リナに手を出すな!」
その声には怒りが込められていて、獣は一瞬怯んだ。しかし、それでも突進してきた。
「愚かな!」
リューは翼を広げ、鋭い爪で獣の動きを封じた。そのまま威圧感を放ち続けると、獣はようやく森の奥へ逃げていった。
「リナ、大丈夫か?」
リューは人間の姿に戻り、震えるリナの前にしゃがみ込んだ。
「怖かった……怖かったよ、リュー……!」
リナは涙を流しながらリューに抱きついた。
「もう大丈夫だ。俺がいる。」
リューは彼女の肩にそっと手を置き、優しくなだめる。リナは泣きじゃくりながらも、少しずつ呼吸を落ち着かせていった。
「村に戻ろう。こんな遅い時間に森にいるのは危険だ。」
リューはリナを抱き上げ、そのまま村へと向かった。
村に到着すると、数人の村人が慌てて駆け寄ってきた。
「リナ、大丈夫か!」
リューはリナを村人に渡し、静かに立ち去ろうとした。
しかし、村の年配の女性が彼を引き止めた。
「お若いの、夜も遅い。この辺りは危険だよ。怖いドラゴンが出るかもしれないから、今日は泊まっていきなさい。」
「こ、怖いドラゴン?」
リューは目を丸くしつつも、リナが「そうよ、泊まっていきなさい!」と笑顔で言うのを見て、しぶしぶ頷いた。
その夜、リューは人間の姿のまま、村人たちが用意してくれた小さな部屋で寝ることになった。
「人間の姿で寝るなんて……妙な気分だ。」
ドラゴンとして広い洞窟で過ごすのが当たり前だったリューにとって、柔らかな布団や狭い部屋は落ち着かなかった。
「大丈夫だ。何事もなく朝を迎えるだけだ……。」
そう自分に言い聞かせ、なんとか眠りについた。
翌朝。
リューは朝日を浴びて目を覚ました。周囲を見渡すと、特に何も問題は起きていなかった。
「……意外と悪くなかったな。」
リューはそっと微笑み、外に出ると、リナが笑顔で待っていた。
「おはよう、リュー! 昨日はありがとう。」
「……ああ。」
リューは照れくさそうに答え、朝の光を浴びるリナの笑顔を見て、自分の胸がまた少し温かくなるのを感じていた。
彼女のためなら、何度でも助けに行こう――そう決意するリューだった。
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