真紅の瞳と小さな灯

夜明けのハリネズミ

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「あたらしいいのち」

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 リナと二人で暮らし始めた洞窟は、静かで広かった。
 リナが住んでいた村は廃村となり、戻る人もいなくなった。
 リューはいつかリナをその村に帰らせてあげたいと思いながら、今は彼女とここで暮らすしかなかった。

 けれど、最近リナの体調がおかしい。

 彼女はいつも疲れたような顔をしており、腹が妙に大きくなっている。
「リナ、何か食べたか?」と聞いても、いつも「いらない」と答えるばかり。

「お前、本当に大丈夫なのか?」

「うん、大丈夫だよ……。」

 そうは言うものの、体調が悪そうな顔を見ていると、リューの胸はざわざわと落ち着かない。

 ある日、リューは村の廃墟に行き、まだ使えそうなベッドを見つけて洞窟に持ち帰った。

「これで少しは楽になるだろう。お前、いつも石の上で寝てただろう?」

「ありがとう、リュー。でも……私、大丈夫だよ。」

 リナはそう言いながらベッドに横になったが、その顔は青ざめていた。

「……お前、本当に大丈夫なのか?」

 リューの不安は募るばかりだった。

「シェリスを連れてくるしかない……!」

 リューは思い立つと、冬山の友人であるシェリスの元へ向かった。
 事情を説明すると、彼女はすぐに尻尾を振り上げ、リューの頬を打った。

「いてぇ! なんでだ!」

「こんな幼い子に何をしてるのよ!」

「何をって……俺は何もしてない!」

「はあ?」

 シェリスは呆れた顔をしながら、リナに視線を向けた。

「リナちゃん、私は白い竜のシェリスよ。少しお腹を見せてもらっていい?」

 リナが戸惑いながらも頷くと、シェリスは尻尾で彼女の腹をそっとなでた。

「……この子の腹の中には、子供がいるわ。」

「はっ……?」

 リューは目を見開き、言葉を失った。

「こんな齢14くらいの少女に、なんてことを!」

 シェリスが怒りの目で睨みつけると、リューは慌てて首を振った。

「俺は何もしてない! いや、俺が悪かった……!」

 シェリスはため息をつき、白銀の鱗が輝く美しい人間の姿に変わった。

「この子を産むなら、リナの体は持たないかもしれない。」

「そんな……。」

「このバカのせいでね!」

 シェリスはリューの頭をグーで殴りつけた。

「いてぇ! だから俺は……!」

「リュー! 外に出て!」

 リナが突然叫び、リューは渋々洞窟の外に出た。

 洞窟の中から聞こえてきたのは、恐ろしいほど冷たい空気の音だった。
 リューはその冷気に思わず空へ飛び立ち、しばらく寒空を漂っていた。

「なんなんだ……。」

 しばらくして洞窟に戻ると、すぐにシェリスに引っ張られ、また頭を殴られた。

「いい加減にしなさいよ、このバカ弟!」

「なんだよ、俺は何もしてないだろ!」

「いい解決策がある。」

 シェリスが真剣な顔で言うと、リューは希望に満ちた目を向けた。

「……なんでもする! 俺が悪いんだ。だから……!」

「この子供をあんたの子供にするんだよ。」

「はあ?」

「ドラゴンっていうのは、捕食者だ。産まれる前からそうなる。この子供がドラゴンの子供になるなら、3年は産むのを伸ばせるだろうね。」

「……どうすればいい?」

 リューはすぐに聞き返したが、シェリスは額を押さえて呆れたように言った。

「恥ずかしい質問をするんじゃないよ! 子供は天から授かるって言うだろ? 今夜、手を握り合って空に願えばどうするべきかわかるさ。」

 その夜、リューはリナの手を握った。

「リュー、どうしたの?」

「いいから。願えばいいだけだ。」

「願う……?」

 リナが戸惑いながらも手を重ねると、空に一筋の流れ星が落ちた。

「リナ……必ず、守るから。」

 リューはその星に誓うように、静かに目を閉じた。
 洞窟の中で、未来を信じて――。
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