ゴーレム使いの成り上がり

喰寝丸太

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第三部 無双編

第82話 荒野の緑化計画

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 今日もギルド回りかなと考えていたら、スパイの二人が意見して来た。

「ハンターはやらにゃいのか。実力がもっとしりたいにゃ」

 手の内を知られるのも困るが、あんまり脅威に思われるのもよくない。

「婚約者と仲がよろしいのですね。自室に篭っていちゃいちゃしすぎですわ」

 ミシンに味を占めたフィオレラに頼まれ、長い時間ミシンを使わせたからだな。

「そうですね。久しぶりにやりますか」



 家のリビングにパーティメンバーを集めた。ローレッタだけは建築ギルドで仕事だ。

「今日は依頼を取ってきた。スコールホーク討伐だ」

 スコールホークは鷹の魔獣で翼を広げると四メートルはある。
 水と風の魔術を使う。
 ハンターにはもの凄い脅威になる魔獣だ。



「作戦はどうするにゃ」
「トーチカと言っても分からないか。土魔法で作った砦に篭る。近寄ってきたら重力魔法で落とす。後は銃でタコ殴りだ」
「堅実にゃ。スキが無いにゃ」

 良い機会だ。疑問を解消しよう。

「聞きたかったのですが、俺は接近戦は出来ないです。それでも脅威なんですか?」
「当たり前にゃ。魔法使いにそんにゃ事は求めないにゃ。兵種は的確に運用してこそ役に立つにゃ」
「俺に暗殺者を送ったりは?」
「そんにゃ事をしてばれたら誰も同盟してくれないにゃ。悪手にゃ」
「そうですか。安心しました」



「シロクさん、そろそろ行きましょう」
「そうだな出発しよう」



 動く歩道魔法は今日も大活躍だ。
 頬に当たる風が気持ち良い。
 しばらく走らせると目的地の大岩が見えてきた。
 依頼によると大岩の天辺に巣を作っているらしい。



 大岩まで三百メートル程に近づいた時、魔獣が飛んでくるのが見えた。
 皆に警戒を促し、フィオレラにトーチカを出してもらう。
 スコールホークは上空から魔術を撃ってくる。
 ピューイピューイと鳴く声が勝ち誇っているかのよう。
 水魔術の槍が何度もトーチカに突き刺さる。



 たいした事ないな、トーチカは無傷だ。
 業を煮やしたスコールホークは爪と嘴攻撃に切り替えたようだ。
 チャンスだ。
 重力魔法を発動させる。
 トーチカの窓から、皆で銃を撃つ。
 スコールホークはありったけの魔力を風魔術に込めて浮かび上がる。
 こちらも重力を強くする。
 綱引きはこちらに軍配が上がったようだ。
 スコールホークは地面に叩きつけられ、銃弾が体を貫く。
 止めはビオンダさんの撃った銃弾のようだ。
 頭が吹き飛ぶ。
 どうやら紙装甲のようだ。
 よし勝った。



「これから、荒野迷宮に行きたいんだけど」

 アレタさんは銃を掃除する手を止めて聞いてきた。

「何しに行くにゃ」

 セラディーヌさんも関心が湧き上がったようだ。

「私も気になりますわ」



「お参りだよ。神様の」

 がっくり来た様子の二人。
 嘘は言ってない。話してない事実もあるだけだ。

「なんだ祭壇でもあるのかにゃ」
「石碑があるんだ。そこに行く」



 ビオンダさんが何故か嬉しそうに話しかけてきた。

「なんだ貴君も遂に信仰心に目覚めたか」
「神様を敬う気持ちはあります。でも信仰はちょっと。距離があるんで急ぎます」



 荒野迷宮に入り、石碑を目指す。
 珍しくフィオレラが馬ゴーレムに乗らずに動く歩道魔法に乗ってきた。

「お二人は恋人とかいらっしゃいますか」

 馬ゴーレムを並走させながら会話するとは凄いな。

「婚約者がいるにゃ」
「私は結婚しておりますわ」

 まさかの人妻、年齢も相当高そうだ。

「そうですか。ちょっと安心しました」
「シロクは変態だから気をつけた方がいいぞ」

 ちょっ、ビオンダさんなんて言う事を暴露するんだ。

「そうかにゃ。気をつけるにゃ」
「大魔法使いは変態と良い情報ですわ」

 いかん、話に気を取られて方角が少しずれた。
 後ろの会話を聞き流しながら、石碑に辿り着いた。



 石碑の前で目をつぶって念ずる。
 封神のお気楽な声が脳裏に聞こえた。
 魔力の発生異常の疑問を質問する。
 事件は全て繋がっているようだ。
 最初に時空の歪みが起こって俺が飛ばされる。
 そして、その影響で魔力の異常が起こってしまう。
 それから、時空の歪みを対処できなかった神様はゴブリンの領域に時空の歪みを移動。
 俺がちょっかいを掛けて時空の歪みを壊したと聞いた。



 神様がなぜ時空の歪みを対処できなかったかと云うと、タイミングがシビアで手をこまねいていたと。
 未来がある程度予測できる神様は最善を予測して、あそこに歪みを移動したようだ。
 封神は今回と修正プログラム通報の手柄で刑期が二千年縮まったと上機嫌で話してくれた。



 次元門は時空の歪みの破片から出来ていると。
 そして、閉じるには百年待たなくてはならないと聞かされた。
 次元門を与えたのは監視の手間を省く為のようだ。
 神様、人使いが荒いな。
 そうだ、封神に褒美をねだるか。



 俺は何か下さいと念じたら、スキル以外なら良いと答えをもらう。
 言ってみるもんだ。
 駄目元だったが上手くいった。
 そうだ、王都では俺の手柄をどうするか揉めているだろうな。
 こっちから提案を突きつけてみるか。
 オーガの領域を貰おう。
 そして、緑化しよう。



 封神に荒野に雨を降らす事と、魔力を薄く出来ないか聞いてみる。
 出来ると答えが返ってきた。
 雨が降らないのと魔力が濃いのはどっちも封神がやっていると明かされる。



 そうだよな、少しおかしいと思った。
 草原のすぐ隣が荒野って普通は無いだろう。
 理由を聞いたら騒がしくされるのが嫌いみたいだ。
 それなら、褒美で荒野迷宮を貰おう。
 石碑の周りに祠を立てて人を入らせないようにするか。
 緑化のタイミングの良い時に又来ると告げる。



「なんだか、長い間祈りを捧げていたようですけど、何かありまして」
「笑っていて気味がわるいにゃ」

 いかんいかん、表情に出ていたようだ。

「何もないです。帰りましょうか」



 家に戻り、侯爵あてに手紙を出す。
 褒美を荒野迷宮にしてもらう宮廷工作をする為だ。
 それと、侯爵にも荒野が緑化される事を知らせた。



 ジェルリアが尋ねてきた。
 ミシンを作っている工房が泣き付いてきたらしい。
 部品の歪みで上手く動かないそうだ。
 三十センチでは工作機械は持って来れない。
 スキルで解決したい。
 念動で材料を回転させて、もう一つのスキルで削ればいい。
 しかしスキルを二つは無理だ。アビリティならローレッタができるな。



 帰ってきたローレッタに頼む。
 薪を念動で回転させ空気に貫通掛けて削ったぞ。相変わらず器用だ。

「スキル授かった。旋盤スキルだ」

 神様も俺達には甘い気がする。
 まあ、こき使われているような気もするから良いか。
 それと、俺にはこのスキルは習得できそうに無い。

「よし、副業で部品作ってくれ頼む。魔力は雑務ギルドに依頼して、補充をすれば良い。その分も払うから」
「ローレッタ、おめでとう。新スキル授かったのですよね」
「わりの、フィオレラ」

 よし、今日は宴会だな。
 それから、上手くいけば良いなミシン。
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