ゴーレム使いの成り上がり

喰寝丸太

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第三部 無双編

第86話 暗殺未遂

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 最近はハンターとしての仕事より生産の仕事の方が多かった。
 ガスポーションは俺とフィオレラしか作れない。
 命が掛かっていると思うと優先してしまう。



 薬師ギルドの納品の帰り道。
 何か視界に黒い点が見えた。
 やばいクロスボゥの矢だ。
 景色がスローモーションになる。

 動け、動け、動け。
 死ぬと思った瞬間、力が溢れてきた。
 無我夢中で矢を手で払う。
 矢は逸れて民家の壁に刺さった。



 心臓がバクバクいっている。
 足がガクガクした。
 そうだ、刺客はどうした。

 視線の先にはアレタさんが刺客を殴り、取り押さえていた。
 セラディーヌさんは辺りを警戒している。
 もう一発撃たれたら危なかった。



「どうして、助けてくれたのですか」
「見殺しにすると国の関与が疑われるにゃ。今はまずいにゃ」
「そうですわ。せっかく戦争を回避できたのに」
「そうですか。ありがとうこざいました」



 魔力ゴーレムを操作しようとして魔力が無いのに気づく。
 もしかして、スキルが自動発動した。
 都合よすぎる。
 まあ良い刺客を引き渡して、今日は帰ろう。



 侯爵から手紙を貰う。
 刺客は王都の闇ギルドの者だった。
 依頼主は貴族の使いとしか分からない。



 皆を集めどうするか決める。

「ええっと、今回の襲撃に関して何か意見のある人」
「他国の関与はないにゃ。どこもスタンピードの後始末で大変にゃ」
「そうですわね。きっとこの国の開戦派ですわ」

 この国はスタンピードの被害が少なかったから、攻め込みたい人間はいるだろうな。



「多分、依頼主はヤルヤード伯爵だな」
「ビオンダさん、その理由は?」
「恨みを買っている自覚がないのか。貴君は鈍感だな」



「子分のスモーピィ子爵をやっつけたからですか?」
「それだけじゃないぞ。教会の貴族派も粛清しただろう。それから、荒野の緑化が更に追い討ちをかけている」

 おう、確かに貴族派からは恨まれていそうだな。

「分かりました。どうするかな、これは……攻撃は最大の防御だという事で打って出ましょう」
「やるのかにゃ。戦争かにゃ」
「いえ、そこまでは。悪事を暴きたいですね」



 王都の情報がいるな。
 侯爵に頼るか。
 借りを作りたく無いが、仕方ない。



 侯爵はいつもの質素な部屋で手紙を書いていた。
 机の上を片付け、こめかみを数度揉んでから話出した。

「タイセー男爵、今日は何だ」
「刺客の件で助けてもらいたいのですが」
「どうして欲しい。言ってみろ」
「ヤルヤード伯爵の情報が欲しいです」
「それなら、王都で騎士隊長をやっている奴を紹介してやろう」
「ありがたいです」
「なに、こちらにも利がある。貴族派を弱体化させたいからな。それと、怪しい行商人を捕らえたぞ。翌日には毒を飲んで死んでいたが。持ち物から帝国の間者をうかがわせる品が出てきた。気をつける事だ」
「きな臭いですね。気をつけます」



 俺は騎士隊長に会う為に指定された王都の貧民街に向かっている。
 狭い路地を幾つも通り地図に書かれた場所へ急ぐ。
 少し広い場所に出たと思ったら、前から覆面をした怪しい集団がやってくる。
 後ろを見ると後ろからも来ていた。
 囲まれたな。



 フィオレラにトーチカと鉄条網を出してもらう。
 皆して、透明弾を撃ちまくる。
 実弾を使っても問題はないのだが、安眠できなくなるのは嫌だ。
 最近知ったのだが、兵士と騎士を含む貴族は罪状確認を拒否できる。
 人殺しは好きじゃないから、これで良いだろう。



 俺は魔力ゴーレムの転移刀で盾を切り刻む。
 屋根の上の射手も魔力ゴーレムのスタンガン魔法で眠らせた。

 最後の一人は懐から吹き矢を取り出すと俺に使ってきた。
 やばい、屋根の上に気を取られて、油断だ。
 俺は普通の五倍以上の速さで避ける。
 また、スキルの自動発動だ。
 絶対に俺に何か細工されている。
 まあいい、後で封神に追及しよう。
 とりあえず、片付いたな。
 ビオンダさんが慎重に覆面の輩を調べる。

「全員死んでいるな。毒を飲んでいる」
「これ、情報が漏れている。もしくは騎士隊長が裏切っていますね」
「そのように考えるのが、自然だろう」



 とりあえず、騎士隊長に会いにいく事にした。
 騎士隊長らしき人はあばら家で俺達を待っていた。
 鎧を付けてないところから、裏切りの疑念が少し減る。



「騎士隊長の使いだ」
「ここに来る途中に襲われましたよ」
「ああ、騎士の中に裏切り者がいて、隊長は今動けない」



「それで、伯爵の情報は貰えるのですか?」
「それは無理だ。俺は情報を託されるまで信用されてない」
「この置物は見た映像を記録する道具です。これを伯爵の家に仕掛けられませんか」
「それなら、協力して欲しい事がある。俺の担当の捜査が伯爵の金庫を調べるというものでな。ダイヤルの番号で行き詰っている」
「この道具をぜひ使って下さい」



 道具の使い方を説明し段取りを話しあったのち別れた。
 カメラはメモリーカードに記録する形式だから、分解されても困らない。
 パソコンが無ければ役に立たないからな。
 裏切られても悪用はされないだろう。



 置物は数日後とどいた。
 メモリーカードをパソコンで読み込んでビオンダさんに見てもらう。

「確かにこの人物はヤルヤード伯爵だ」
「このあと金庫を開けますよ」

 ダイヤルが揃った瞬間の静止画を拡大して番号を割り出す。
 上手くいったな。



 騎士に番号を伝えた。
 数日後、伯爵は国家反逆罪で逮捕された。
 俺は騎士隊の宿舎に招かれた。



「今回は世話になったな。隊長のトバイアスだ」
「ハンターSランクのシロクです。顛末を聞かせて欲しいのですが」
「どこから話せばいいか。発端はワイバーンの放浪だ。他国がスタンピートに苦しむ中この国は殆んど無傷で切り抜けた」
「ワイバーンの放浪があれば、被害が他国と同じぐらいだったと」
「その通りだ。伯爵は帝国と繋がっていた。当初この国と他国を争わせ国力を削ぐ計画だった」
「ところがスタンピートが台無しにした訳ですね」



「そうだ。そして、次は伯爵に内乱を起こさせ隙を狙おうとした。しかし、荒野の緑化がそれを阻止した」
「あれで、国王派が優位に立ったと」
「それと、子分の子爵の失脚や教会の不正の暴露は地味にダメージになった。次に帝国が目を付けたのが君だ」
「俺が戦争の抑止力になっているんですね」
「その通りだ。排除したかったんだろうな」
「分かりました。ありがとうこざいました」



 なんだか俺が知らない間に大活躍しているみたいになったな。
 帝国は今後どう動くのだろう。



 アドラムの町に着くと侯爵から手紙が来ていた。
 俺の活躍が大変喜ばしいと書いてある。
 帝国は内乱の援助の資金を逮捕で根こそぎ王国に持っていかれた。
 帝国内部は内乱の一歩手前らしい。
 皇帝の手腕が疑われていると手紙にある。
 なら当分、心配いらないな。
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