無限魔力のゴーレム使い ~無力な奴隷から最強への一歩は逆転の発想から~

喰寝丸太

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第3章 貴族活躍編

第53話 孤児院とスキル

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 俺はなんとなく孤児院に顔を出したくなった。
 孤児院の周りは傭兵ギルドの人間が固めていた。

「ご苦労さん。俺はフィルだけど、院長を呼んでもらえるかな」
「ちょっと待て」

 傭兵の一人が孤児院に入る。



 程なくして院長をつれて戻ってきた。

「フィルさん。薬草は順調です。何かありましたか」
「なんとなく顔をみたくなって」
「そうですか。みなも喜びます」



 孤児院の庭はさながら畑で、薬草になる雑草が鉢植えで所狭しと並んでいる。

「雑草を置いておく場所がもうなくてですな。土地を借りようと思っております。そこの一角で何か商売でも始めようと思っています」
「店ができたら寄るよ」
「是非いらして下さい」

 院長は去って行き、俺は孤児の居る大部屋に入った。

「よっ、来たぜ」
「こんにちは」
「ねえ、ねえ、秘術教えてよ」
「私も、私も」
「僕も」

 秘術は絶対に盗もうとする奴が現れるに決まっている。
 覚悟が無い奴に教えるつもりはない。
 教えた孤児は契約魔法に怖気ずに教えてもらいに来ただから教えた。
 それに何かあった時は全力で助けるつもりだ。
 際限なく教えるつもりはない。
 守る対象を増やすにも限度がある。

「駄目だ」
「えー、けち」
「なんと言っても駄目だ」

 孤児達は俺から離れて行った。



 モリーを見つけたので声を掛ける。

「よお、元気だったか」
「元気、元気。オーガぐらい元気。でもユフィアちゃんが大変なの」

 案内されてユフィアが寝ている部屋に入った。
 ユフィアは熱にうなされている。

「ユフィアちゃん病気になんて負けないで」
「何の病気なんだ」
「風邪。もともとそんなに元気じゃないの」
「病弱なところに風邪を引いたのか」

「その子はですな。貴族だったのですが、病弱だと分かって捨てられました」

 院長が静かに部屋に入って来て言った。
 何の気なしに魔力視でその子を見ると、契約魔法の魔力がある。

「この子は契約魔法が掛けられているけど、知らないか」
「いえ、そんな話は聞いてないし、孤児院でも契約はしていないと思います」

「もしかして病弱の理由はそれなんじゃないか」
「希望を持たせるのは、やめて下さい。残酷です」

 院長はユフィアの額にある布を取ると洗面器でゆすぎ絞って額にそっとのせた。

「俺なら契約魔法を解除できる。ただ病弱の理由がそれとは限らないが」
「そうですか。とにかくやって見て下さい」
「まずは風邪を治そう。ポーションがある」

 俺は疫病治療ポーションを取り出して渡した。

「ユフィア、つらいでしょうけど飲んで下さい。薬です」
「ごほっ、ごほっ、お薬?」

 院長はユフィアの身体を起こしポーションを飲ませる。

「つらいのがなくなった」
「俺のスキルを受け入れてくれ」
「はい」

 俺は圧縮した魔力ゴーレムで契約魔法を潰した。

「どうだ、身体の調子は」
「軽いよ。羽みたい」
「小さい頃に誰かに受け入れてくれみたいな事を言われなかったか」
「もう一人のお母様に呼ばれてそう言われた」

 継承者争いという奴か。
 女の子なのにな。
 大きくなってどこかの貴族と結婚してユフィアの母親の権力が増えるのが気にいらなかったのかな。

「治療の料金は」

 無料でというのは簡単だが、評判が広がれば厄介事を招かないとも限らない。

「もちろん対価はもらう。今なら出世払いで良い。この子が元気になって成人したら払って貰う」
「ありがとうございます。ユフィア、元気になって良かったですね」

 院長は涙ながらに言った。
 そして、ユフィアが身体を横たえたので布団を首まで引き上げ整えた。

「ユフィアちゃんはもう大丈夫よね」
「ああ、ポーションを飲ませたから、もう平気なはずだ。明日になればお話も出来るようになるさ」

 ユフィアが安らかな寝息を立て始めたので、俺とモリーは静かに部屋を後にした。



「魔導剣が欲しい。仕事を下さい」

 部屋を出るなりモリーが突然俺に言った。

「どうしてかな」
「孤児院の誰かが病気になったら、助けてあげたいから」

 そうか、そうだとすると魔導剣で冒険者になって一攫千金てな具合に考えているのだろうな。

「仕事ねぇ、ちょっと考えてみる」

 冒険者は危険だし、魔導剣がないと魔力放出は意味ないからな。
 それか、何か他のスキルを覚えさせるか。
 筋力強化あたりが汎用性が高くて良いのだけれど。
 そうか、筋力強化の簡易魔道具を使いながら俺がやっていたイメージをやる。
 つまり魔力で筋肉をサポートするって奴だ。
 そうすれば早く覚えられないかな。

 それと人形だ。
 簡易魔道具を組み込んだ人形を作り動かす、その時魔力の紐を付けて動かすイメージを持てばどうだろう。
 そうすればゴーレム使役のスキルを覚えられないだろうか。

 やってみよう。
 部屋を借りて筋力強化の簡易魔道具を作る。
 そして、孤児全員分の動くぬいぐるみを作った。



「スキルを覚えられる秘術を教えてやる。スキルを覚えられれば出来る仕事が増えるだろう。言っておくが冒険者は駄目だぞ」
「早く教えて」
「筋力強化の簡易魔道具だ。これを使いながら魔力が筋肉を補助するようにイメージするんだ」
「やってみる」
「それから動くぬいぐるみを渡す。これを動かす時は魔力の紐で操作するイメージでやるんだ」
「分かった」
「この事は秘密だからな。成功したら契約魔法で縛る」
「うん」

 孤児にぬいぐるみを配り始める。

「みんな、ぬいぐるみの差し入れだ。一人一つだから喧嘩しないように」
「わーい、犬ちゃんだ」
「ふかふか」
「あなたの名前は今日からコロよ」
「うわ動いた」
「もふもふ」

 みんな喜びながら、ぬいぐるみを受け取っていく。
 そして、眠っているユフィアの枕元にもぬいぐるみを置いてあげた。

 枕元の机に置いてある熱さましの布を見て、一つ思いついた。
 魔導金属だ。
 魔導金属で板を作って冷蔵庫の代わりをするのはどうだ。
 たしか魔力効率はもの凄く良いが柔らかくて武器には出来ないのがあったっけ。
 鉛より柔らかかったから加工もしやすいはず。
 値段はゴーレムを作ると魔木のゴーレムの百倍ぐらいするが、薄い箔を作るぐらいならそんなにお金はかからない。
 たぶん簡易魔道具より安く出来て魔力の効率も良いはずだ。
 木の板に箔を貼り付けて運用しよう。
 そうと決まれば。

「院長さん。土地を借りる話がありましたよね。そこで店をやるっていう」

 院長室で俺は院長に話を持ちかけた。

「はい、その予定です」
「じゃあ、食べ物屋はどうかな」
「店の特色はどうします」
「魔導金属を薄く貼った板を用意して、冷やすというのは」
「なるほど魔力放出が出来る子の空いてる時間を使う訳ですな」
「ええ、冷たい飲み物が楽しめる店。流行ると思わないかな」
「そうですね。真似したくとも魔力放出が出来る人間は大抵が冒険者です」
「安い金で雇われたりしないから、競合は起きないと思うよ」
「検討してみます」

 しまった、こっちを早く思いついていればモリーにスキルの獲得方法を教えなかったのに。
 でも、モリーは冒険者目指して無茶をやりそうだから、良かったのかも。
 筋力強化とゴーレムが使えればこの近辺の魔獣には太刀打ちできるだろう。
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