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13.夢と現の狭間で
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小柄の令嬢の顔は扇子に隠れて見えない。
それでもカインの優しい笑顔がその女性に向けられているのは事実。
やめて、そんな顔をして見ないで。
こっちを…こっちを見てカイン!
喉まで出かかった声はそのまま空気と一緒に飲み込むしかなかった。
「シルヴィア様、私は身分などという壁を乗り越えてこの方と人生を歩んで行こうと思います」
身分の壁。
そんなもの私だってカインとだったら乗り越えられる。
今でさえ裕福な生活はしていないのだから、平民の生活の二人で幸せに過ごしていける。
今まで自分に向けられていた筈の微笑みが知らない女性のものになっているなんて。
「彼女なら私を支え、助けてくれるでしょう」
支えて助ける。
トラウマがあったからと言い訳をして自分を偽って生きている。
そして助けるどころか問題を起こして迷惑をかけている私はカインの助けにはなれないのだろう。
「カイン…お、めでとう」
喉がカラカラに乾いて出てきたのは掠れた声。
胸が抉られ目からは滝のように止められない涙が溢れているのに、言葉に出てきたのは祝福の言葉。
今までのカインなら私の様子に誰よりも早く気付いて気遣ってくれるのに、今の私の有り様には全く気付かない。
二人で穏やかに笑いあっている。
カインが幸せなら私も嬉しい。
そう言ってあげられたらどんなに良いか。
さっさと二人で何処かに行ってほしい。
そして私の失恋の痛みを泣き暮らして忘れてしまいたい。
でもきっと忘れる事なんて出来ない。
自分の体が思うように動かない事にも気が回らなくてただただ涙を溢れさせる。
目を閉じても二人の姿は消えてくれない。
もう本当に勘弁して。
そう懇願する言葉が嗚咽と共に出てくる。
自分では声に出してるつもりは無かったのに。
「反省出来たか?」
二人しか目に入らなかった私の耳に男の声が素通りする。
文字通り素通り。
耳に入っている筈なのにカインの声にしか反応出来ない、頭で理解出来ない。
「連れて行け」
体がベッドの下から引きずり出される。
それでも他人事のように感じてしまうのはまだ仲睦まじい二人が目の前に居るからかもしれない。
移動しても変わらない目の前の出来事に涙さえも枯れてしまう。
「凄い顔だな。お前の所に侍女は居るのか」
「ご主人様は女性をお側に置かない人なので」
「俺が風呂に入れても良いがこの女の身の保証は約束出来ないな。綺麗な顔をしているしな」
下卑た笑いを浮かべる男に少しだけお腹の辺りから気持ち悪さが込み上げてくる。
そして今まで仲睦まじいカインと令嬢しか見えなかった視界に綺麗で冷たそうなキラリと光る物が映った。
私を抱き上げている男の耳元にある鋭利な刃物がゆっくりと肩に置かれる。
「それは聞き捨てならないなミュルヘ」
「っ!!?」
「その言葉聞いちゃったら止める事が出来なくなっちゃうでしょう?」
暢気そうな声音の後、ドガッという音が響いた。
「お前も彼女を静かに降ろせ」
地獄から這い出てきたような怒気を孕んだ声が響いて、私の体はゆっくりと床に下ろされた。
「グハッ!」
野太い声を上げながら近くで大きな物体が転がる気配がした。
そして体を優しく抱き起こす暖かな腕が私を包んだ。
「シルヴィア様、ご無事ですか?」
聞きたかった筈の声は私の胸を抉り、枯れていた筈の目からまた涙が溢れた。
「カイン、私は貴方の幸せを願っています」
やっと伝えられた餞の言葉に視界が急激に暗くなっていった。
「どういう意味ですか…」
そんな声が暗闇で悲しそうに頭に響いたけれど、それに答えられない。
顎に力が入らないから開く事も出来ずただそのまま意識を飛ばしてしまった。
それでもカインの優しい笑顔がその女性に向けられているのは事実。
やめて、そんな顔をして見ないで。
こっちを…こっちを見てカイン!
喉まで出かかった声はそのまま空気と一緒に飲み込むしかなかった。
「シルヴィア様、私は身分などという壁を乗り越えてこの方と人生を歩んで行こうと思います」
身分の壁。
そんなもの私だってカインとだったら乗り越えられる。
今でさえ裕福な生活はしていないのだから、平民の生活の二人で幸せに過ごしていける。
今まで自分に向けられていた筈の微笑みが知らない女性のものになっているなんて。
「彼女なら私を支え、助けてくれるでしょう」
支えて助ける。
トラウマがあったからと言い訳をして自分を偽って生きている。
そして助けるどころか問題を起こして迷惑をかけている私はカインの助けにはなれないのだろう。
「カイン…お、めでとう」
喉がカラカラに乾いて出てきたのは掠れた声。
胸が抉られ目からは滝のように止められない涙が溢れているのに、言葉に出てきたのは祝福の言葉。
今までのカインなら私の様子に誰よりも早く気付いて気遣ってくれるのに、今の私の有り様には全く気付かない。
二人で穏やかに笑いあっている。
カインが幸せなら私も嬉しい。
そう言ってあげられたらどんなに良いか。
さっさと二人で何処かに行ってほしい。
そして私の失恋の痛みを泣き暮らして忘れてしまいたい。
でもきっと忘れる事なんて出来ない。
自分の体が思うように動かない事にも気が回らなくてただただ涙を溢れさせる。
目を閉じても二人の姿は消えてくれない。
もう本当に勘弁して。
そう懇願する言葉が嗚咽と共に出てくる。
自分では声に出してるつもりは無かったのに。
「反省出来たか?」
二人しか目に入らなかった私の耳に男の声が素通りする。
文字通り素通り。
耳に入っている筈なのにカインの声にしか反応出来ない、頭で理解出来ない。
「連れて行け」
体がベッドの下から引きずり出される。
それでも他人事のように感じてしまうのはまだ仲睦まじい二人が目の前に居るからかもしれない。
移動しても変わらない目の前の出来事に涙さえも枯れてしまう。
「凄い顔だな。お前の所に侍女は居るのか」
「ご主人様は女性をお側に置かない人なので」
「俺が風呂に入れても良いがこの女の身の保証は約束出来ないな。綺麗な顔をしているしな」
下卑た笑いを浮かべる男に少しだけお腹の辺りから気持ち悪さが込み上げてくる。
そして今まで仲睦まじいカインと令嬢しか見えなかった視界に綺麗で冷たそうなキラリと光る物が映った。
私を抱き上げている男の耳元にある鋭利な刃物がゆっくりと肩に置かれる。
「それは聞き捨てならないなミュルヘ」
「っ!!?」
「その言葉聞いちゃったら止める事が出来なくなっちゃうでしょう?」
暢気そうな声音の後、ドガッという音が響いた。
「お前も彼女を静かに降ろせ」
地獄から這い出てきたような怒気を孕んだ声が響いて、私の体はゆっくりと床に下ろされた。
「グハッ!」
野太い声を上げながら近くで大きな物体が転がる気配がした。
そして体を優しく抱き起こす暖かな腕が私を包んだ。
「シルヴィア様、ご無事ですか?」
聞きたかった筈の声は私の胸を抉り、枯れていた筈の目からまた涙が溢れた。
「カイン、私は貴方の幸せを願っています」
やっと伝えられた餞の言葉に視界が急激に暗くなっていった。
「どういう意味ですか…」
そんな声が暗闇で悲しそうに頭に響いたけれど、それに答えられない。
顎に力が入らないから開く事も出来ずただそのまま意識を飛ばしてしまった。
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