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二年生の一学期
第百二十二話 両親の夢
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夕食を終えたのちにみんなでテレビを見ていた時、ふと奈緒が立ち上がってトイレへと向かった。スリッパを履いてダイニングにおりてキッチンの横を通りかかった時、蛇口から流れ落ちる水の音に紛れはいたが、微かながら南とおばあちゃんの会話が壁越しに聞こえてきて、ピタリと歩むのをやめて立ち尽くした。
おばあちゃんの陽気な声が、水の流れる音に乗ってやってくる。
「あはははは、今はのんべえだけれどね、昔はそれなりにちゃんとした人でしたよ。イタリアンだかフレンチだかのシェフだっていうから、ちょっと軽くて女ったらしな感じもあったけれど、詩織は気に入っている様子だったし、わたしももう子供じゃないんだから二人の好きにすればいいと思っていたものだから、あなたがたが幸せならば、好きにすればいいですよって言ったの。ただあなたのお母さんはもともと病弱で、あなたを妊娠した時も周りはみんな心配したんだよ。こっちで生みなさいって言ったんけど、東京で生むって言い張ってねぇ。朗報を聞いて上京してみると、あの子、産後の肥立ちが悪くて一時は伏せがちとなってしまって、本当に心配した。けど、南の添い寝をしているうちにどんどんよくなって、もう精気が漲っちゃってね、結婚する前より元気になっちゃったくらいだったの。朝も早くから起きて子守を出来るようになったしね、あんなお寝坊さんだったのに。あなたが生まれてくれたおかげで母性のスイッチが入って、気力が溢れてきたのかもしれないよ」
「どこが悪かったの?」
「ん? 貧血」
南の声は途切れたままだったが、すぐにおばあちゃんの笑い声が聞こえてくる。
「なんか大病したと思った? あはは、ただのひどい貧血。べつにどこが悪かったってわけじゃないけど、まあよくめまいをおこす子ではあったわね。産後は悪化したけど、恭平さんが洋風の精進料理を色々考えて作ってくれてね、日に日に回復していったんだよ」
「なんだ」と一安心した様子の声のあと、なにかに思いを巡らせるよう間があって、南が続ける。
「でもまあ、十代にとっては一大事だよね。それで学校に来れなくなっちゃう人もいるくらいだから」
おばあちゃんの陽気な声が、水の流れる音に乗ってやってくる。
「あはははは、今はのんべえだけれどね、昔はそれなりにちゃんとした人でしたよ。イタリアンだかフレンチだかのシェフだっていうから、ちょっと軽くて女ったらしな感じもあったけれど、詩織は気に入っている様子だったし、わたしももう子供じゃないんだから二人の好きにすればいいと思っていたものだから、あなたがたが幸せならば、好きにすればいいですよって言ったの。ただあなたのお母さんはもともと病弱で、あなたを妊娠した時も周りはみんな心配したんだよ。こっちで生みなさいって言ったんけど、東京で生むって言い張ってねぇ。朗報を聞いて上京してみると、あの子、産後の肥立ちが悪くて一時は伏せがちとなってしまって、本当に心配した。けど、南の添い寝をしているうちにどんどんよくなって、もう精気が漲っちゃってね、結婚する前より元気になっちゃったくらいだったの。朝も早くから起きて子守を出来るようになったしね、あんなお寝坊さんだったのに。あなたが生まれてくれたおかげで母性のスイッチが入って、気力が溢れてきたのかもしれないよ」
「どこが悪かったの?」
「ん? 貧血」
南の声は途切れたままだったが、すぐにおばあちゃんの笑い声が聞こえてくる。
「なんか大病したと思った? あはは、ただのひどい貧血。べつにどこが悪かったってわけじゃないけど、まあよくめまいをおこす子ではあったわね。産後は悪化したけど、恭平さんが洋風の精進料理を色々考えて作ってくれてね、日に日に回復していったんだよ」
「なんだ」と一安心した様子の声のあと、なにかに思いを巡らせるよう間があって、南が続ける。
「でもまあ、十代にとっては一大事だよね。それで学校に来れなくなっちゃう人もいるくらいだから」
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