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二年生の二学期
🐿️
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奈緒の目の前に掲げられた大きな画用紙には、ツンツンしたベリーショートの髪をした面長の輪郭に、ちょうど鼻を描き終わったばかりで目と口がない顔が、ベージュと黒でえがかれていた。
「見て、鏡花、これ。小沢の絵」
「なかなか味のある絵でね。わたしが手伝ってあげる」
やってきた鏡花が描きかけの絵をまじまじと見やって、奈緒から筆を取り上げる。その様子を見て、早苗が褒めた。
「お、さすが鏡花。筆も洗わず黒使うんだ」
「いいのよ、ベージュは。黒が勝つから」
そう言って、細長い焼きのりみたいな眉を二つと、その下にナメクジみたいな目玉を描き加える。
奈緒は、砕け散った瞳で汚された絵を見ながら「え~? え~?」と困惑しながらも、出来栄えを訊いてくる鏡花に、「ありがとう ございます 」とお礼を言う。
それを見せてもらおうとして、離れた席からやってきてはしゃぐ孫凛[Sun lin]が、「うまいうまい」と、彼女を持て囃す。
絶句している奈緒を満足そうに見下ろした鏡花が、席にいた千賀子と李静を呼び寄せた。
仕方が無さそうにおずおずとしたがってやってきた二人が、無残な奈緒の絵を同情的な眼差しをもって視界に納め、何も言わずに見つめる。
「どう?」鏡花が訊く。「わたし絵心ないけど、成瀬には負けてないでしょ」そう言いながら、ぺいっと持っていた筆を奈緒のスカートの上に放り投げた。
返答を待たれた二人は、耐え切れず頷く。そして間を置かず、念を押すような口調の鏡花から「上手いでしょ」と問われて、千賀子が苦しそうに「そうだね」と答えた。彼女の左隣りにいた李静は、口を閉じて横一文字に引き延ばし、申し訳なさそうに奈緒を一瞥する。
「もっと描いてあげたらいいと思う。左手だけじゃ大変そうだし……時間内に終わらないかも。片付けとか間に合わないから」
孫凛が喜々とした声をばらまいて、苦笑いを浮かべる千賀子と李静を率先して楽しませようとでもするかのように、むしり取るように奈緒から筆を取り上げた。
「わたしが描いてあげる。ここにこんなふうにたらこ唇をかいて、うんこみたいな鼻に鼻毛描いてあげる」
奈緒は、助けを求めるように視線を瑠衣に送ったが、視線の先にいる彼女は、気がつかないふりでもしているのか、パートナーの男子とお喋りをしている。別の方向を見ると陽菜子と目が合ったが、彼女は夏休み前に黒く染めたレイヤーに指を入れてかき上げながら、そっぽを向いて知らんぷりをかました。この子がエレベーターホールを見渡すと、みんなは鏡花たちの仕打ちがないかのように、そればかりか奈緒自体が存在しないかのように振る舞っている感じで、各々の作画に取り掛かっている。
「見て、鏡花、これ。小沢の絵」
「なかなか味のある絵でね。わたしが手伝ってあげる」
やってきた鏡花が描きかけの絵をまじまじと見やって、奈緒から筆を取り上げる。その様子を見て、早苗が褒めた。
「お、さすが鏡花。筆も洗わず黒使うんだ」
「いいのよ、ベージュは。黒が勝つから」
そう言って、細長い焼きのりみたいな眉を二つと、その下にナメクジみたいな目玉を描き加える。
奈緒は、砕け散った瞳で汚された絵を見ながら「え~? え~?」と困惑しながらも、出来栄えを訊いてくる鏡花に、「ありがとう ございます 」とお礼を言う。
それを見せてもらおうとして、離れた席からやってきてはしゃぐ孫凛[Sun lin]が、「うまいうまい」と、彼女を持て囃す。
絶句している奈緒を満足そうに見下ろした鏡花が、席にいた千賀子と李静を呼び寄せた。
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「どう?」鏡花が訊く。「わたし絵心ないけど、成瀬には負けてないでしょ」そう言いながら、ぺいっと持っていた筆を奈緒のスカートの上に放り投げた。
返答を待たれた二人は、耐え切れず頷く。そして間を置かず、念を押すような口調の鏡花から「上手いでしょ」と問われて、千賀子が苦しそうに「そうだね」と答えた。彼女の左隣りにいた李静は、口を閉じて横一文字に引き延ばし、申し訳なさそうに奈緒を一瞥する。
「もっと描いてあげたらいいと思う。左手だけじゃ大変そうだし……時間内に終わらないかも。片付けとか間に合わないから」
孫凛が喜々とした声をばらまいて、苦笑いを浮かべる千賀子と李静を率先して楽しませようとでもするかのように、むしり取るように奈緒から筆を取り上げた。
「わたしが描いてあげる。ここにこんなふうにたらこ唇をかいて、うんこみたいな鼻に鼻毛描いてあげる」
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