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二年生の二学期
第二百十四話 離れ行く友達たち
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ある日の五時間目、奈緒は、七階にある書道教室のそばにあるエレベーターホールでパートナーを探していた。二時間続く芸術の時間で、授業内容は、友達の肖像画を描く、というお題目だったからだ。
初めこの子は、瑠衣と陽菜子のところに行ったが、二人ともすでにパートナーが決まっていたので諦め、誰かいないか辺りを見渡す。クラスは三十名編成だったが、南が不登校だったので二十九名しかいない。しかも十四名は、粘土を使った首像制作を希望して六階にある美術室内での制作となっていた。そのため、ここには奇数人数しかおらず、一人あぶれた格好だった。
誰も奈緒に見向きもしないで絵を描く準備をする中、イーゼルの位置を調整していた千賀子が、パートナーの李静[Li jing]に目配せをしてから立ち上がった。
「成瀬さん、もしよかったら一緒にどう?」
「はぁ~いっ」
救いの手を差し伸べられたこの子は、隠しきれない喜びを表現するかのように甘ったるい声を上げて、ぴょっこぴょっこと駆け寄っていく。
「えーっ? ちょっと待って」
突如として殴るような口調の声が響いて、生徒の注目がその主に集まる。奈緒の横をイーゼルをもって通り抜けたのは、鏡花だった。
「成瀬の絵を見てやるなら、わたしたちの絵も見てよ。このクラス美術部いないから、誰にも頼めないんだよね。確か絵上手いでしょ、うまく書く方法教えてよ」
千賀子の左斜め前へと不躾に椅子を置いて彼女が座ると、そのパートナーである早苗も同じようにやってきて、李静の右斜め前に道具を置いて座った。そして、奈緒と会話しようとして口を開いた千賀子の言葉を遮るようにまくしたてる。
奈緒はまた一人ぼっちとなって辺りを見渡したが、誰もこの子に声をかけようとしてくれる者はいない。仕方なく一人で座って絵を描き始めた。
五時間目が終わるチャイムが鳴りやんだ時、担当の男性教諭が「六時間目が終わる十分前に戻ってくるから、それまでにかきあげておくように」と言って、エレベーターで階下へとくだっていく。すると、とたんに緊張した空気が沸き立った。
おもむろに立ち上がった早苗が、ブレザーのポケットに手を入れて奈緒の右後ろへと回り込む。
「ぎゃはははは、成瀬なにその絵、誰の絵? 教えて」
「え? 南ちゃん の 絵」奈緒は驚いて、恐る恐る答える。
「なかなかいい。さすが中学元美術部」
「そんなことない です。利き手だめだから、左で、こうこうって。だ め。線は歪んでるし、耳も、こっちとこっちで、ずれてる。あの頃みたくは、描けない」
初めこの子は、瑠衣と陽菜子のところに行ったが、二人ともすでにパートナーが決まっていたので諦め、誰かいないか辺りを見渡す。クラスは三十名編成だったが、南が不登校だったので二十九名しかいない。しかも十四名は、粘土を使った首像制作を希望して六階にある美術室内での制作となっていた。そのため、ここには奇数人数しかおらず、一人あぶれた格好だった。
誰も奈緒に見向きもしないで絵を描く準備をする中、イーゼルの位置を調整していた千賀子が、パートナーの李静[Li jing]に目配せをしてから立ち上がった。
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救いの手を差し伸べられたこの子は、隠しきれない喜びを表現するかのように甘ったるい声を上げて、ぴょっこぴょっこと駆け寄っていく。
「えーっ? ちょっと待って」
突如として殴るような口調の声が響いて、生徒の注目がその主に集まる。奈緒の横をイーゼルをもって通り抜けたのは、鏡花だった。
「成瀬の絵を見てやるなら、わたしたちの絵も見てよ。このクラス美術部いないから、誰にも頼めないんだよね。確か絵上手いでしょ、うまく書く方法教えてよ」
千賀子の左斜め前へと不躾に椅子を置いて彼女が座ると、そのパートナーである早苗も同じようにやってきて、李静の右斜め前に道具を置いて座った。そして、奈緒と会話しようとして口を開いた千賀子の言葉を遮るようにまくしたてる。
奈緒はまた一人ぼっちとなって辺りを見渡したが、誰もこの子に声をかけようとしてくれる者はいない。仕方なく一人で座って絵を描き始めた。
五時間目が終わるチャイムが鳴りやんだ時、担当の男性教諭が「六時間目が終わる十分前に戻ってくるから、それまでにかきあげておくように」と言って、エレベーターで階下へとくだっていく。すると、とたんに緊張した空気が沸き立った。
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「ぎゃはははは、成瀬なにその絵、誰の絵? 教えて」
「え? 南ちゃん の 絵」奈緒は驚いて、恐る恐る答える。
「なかなかいい。さすが中学元美術部」
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