Kaddish

緒方宗谷

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ドイツ人の渇望したもの

4ー3

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 古来より、日本の武将には高度な軍略を持って兵を進めた名将がいた。戦国の世であれば、武田信玄、山本寛助、上杉謙信、黒田官兵衛などかそうだ。
 孫子なども熱心に学んできた名将達がいる一方で、何故も日本はこんなにも無謀な作戦を実行してしまうのか。
 日露戦争の時の陸軍もロシア最強の要塞に対して正面突撃を繰り返して、多くの将兵を失った。まるで白村江の戦いを見ているようだ。情に流されやすい日本人の性質は戦争をするのには向かないのではないか。
 百済の人々にしろ、植民地の人々にしろ、祖国の独立は悲願であり、やってきた日本にそれへの協力を望むのは至極当然の事で彼らに非は無い。むしろ非があるのは、ちゃんとした作戦を立案できないのに、安易に進軍してしまった日本の作戦能力の問題だろう。
 蒙古襲来は、完全に負け戦であったように思う。私は、日本が神国だから神風が吹いて元軍を滅ぼした、と習ったが、要は2回とも台風がやってきて、元帝国の艦隊が沈んだだけだ。
 当時の侍は、基本的に1対1で戦う事を旨としていた。それに対して、元軍は複数人で連携して戦うのだから、鎌倉幕府の軍勢は、すぐに取り囲まれて打ち取られてしまっただろう。
 それに加えて、てつはうという手りゅう弾様な物も元軍は装備していた。威力がいかほどのものか分からないが、火薬を詰めた球が爆発するのだから、威力が弱いはずがない。当然、中には尖った鉄片なども詰められているだろうから、鎧兜を貫通したかもしれない。とても目くらましとか、足止めをする程度の玩具ではなかっただろう。
 もし台風が来なかったら、九州はおろか四国、最悪は中国近畿も奪われていたかもしれない。そうなれば、今の日本は東、東北からなっており、西日本は別の国だったかもしれないのだ。
 秀吉の出兵に関しては、本当に大義名分のない戦争だった。
 日の本を統一した事により、家臣に分割する国土が無くなった豊臣政権は、求心力を維持するために外国の領土に手を伸ばした。
 当時、秀吉は既に老齢で、それが如何に無謀な事か理解できなかったのだろうか。それとも、戦働きでしか活躍できない武将達が平和な時代に順応出来なったからだろうか。もしかしたら、官僚的な石田光成が机上でたてた野望だったのかもしれない。
 日本が世界を垣間見たのは、これだけだ。世界で最も古く、神話の時代から続く王朝とはいえ、世界の表舞台に出た事が無い日本が五族共栄を実現できるようには到底思えない。
 ドイツの地にいて日本を見ると、暴走した陸軍が国民を騙すために言っているようにも思える。そう思うと、結局日本人も同じで、高く深い滝壺の方へと流されているのだ。
 世界に蔓延した地獄を終わらせる事が出来るのは、少なくとも極東の島国ではない。単一民族の国ではなく。合衆国の様な多民族国家で、広大で肥沃な国土を有し、民度も高くて数も多い国であるはずだ。異民族を滅ぼし、そればかりか、同じ民族でありながら、高齢者や障害者も虐殺してしまうようなナチス第三帝国では決してない。
 私が平静でいられるのは、私がそう考える事が出来るのは、日本に立ち込める瘴気を吸っていないからだ。
 たった1人の差別されない異人種として、助けようとする事すら出来ない自分と、虫けらのように殺される人々を見て、嘆く事しか出来なかった。
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